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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成11年長審第12号
    件名
漁船第六十八丸福丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年9月17日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

坂爪靖、原清澄、保田稔
    理事官
小須田敏

    受審人
A 職名:第六十八丸福丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
左舷船底外板に破口及び亀裂を生じて沈没、のち廃船

    原因
針路選定不適切

    主文
本件乗揚は、針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
受審人Aの五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年12月27日02時00分
佐賀県神集(かしわ)島兜(かぶと)鼻
2 船舶の要目
船種船名 漁船第六十八丸福丸
総トン数 230トン
登録長 42.70メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 750キロワット
3 事実の経過
第六十八丸福丸(以下「丸福丸」という。)は、網船1隻、灯船2隻及び運搬船2隻で構成される大中型まき網漁船団の鋼製運搬船で、A受審人ほか8人が乗り組み、操業の目的で、僚船とともに平成9年12月23日14時00分佐賀県唐津港を発し、翌24日14時00分ごろ大韓民国済州島西南西方沖合の漁場に至り、操業を行ってさば約75トンを網船から積み込み、同船からの指示により、水揚げ地の唐津魚市場に急行することとし、所用のために同船に移乗していた一等航海士を同船に残したまま、船首2.70メートル船尾3.60メートルの喫水をもって、同月26日07時00分漁場を発進した。
発進後、A受審人は、船橋当直を同人、甲板長及び甲板員の3人による単独3時間交替制とし、長崎県五島列島に接近してからは他の2人の当直時間にも在橋し、操船の指揮に当たった。
翌27日01時15分ごろA受審人は、波戸岬沖合で、唐津魚市場に電話をかけ、入港予定時刻を告げて岸壁使用の可否を問い合わせたところ、岸壁が空いていないので、入港時刻を調整するため機関を全速力前進から少し下げて10.8ノットの速力とし、水路事情がよく分かっている佐賀県神集島南西端の兜鼻とその対岸の同県唐津市湊町女瀬鼻との間の最小可航幅が約400メートルの狭い水道(以下「神集島西側の水道」という。)に向かうつもりで進行した。
01時46分少し前A受審人は、神集島港宮崎灯台(以下「宮崎灯台」という。)から308度(真方位、以下同じ。)2.1海里の地点に至り、甲板長と交代して船橋当直に当たっていたところ、右舷前方の土器埼東方沖合から神集島西側の水道の北口付近や同水道の中央部付近に操業中の多数の漁船を認めたが同水道は平素から航行していて慣れているので、なんとか通航できるものと思い、同島東側の広い海域を航行して目的地に向かう適切な針路を選定することなく、針路を同島北西端に向く120度に定め、肉眼とレーダーによる見張りに当たりながら、漁船群によって可航幅が著しく狭められた同水道に向けて手動操舵で続航した。
01時50分半わずか過ぎA受審人は、宮崎灯台から314度1.2海里の地点に達したとき、漁船群の北側を航過するりもりで針路を同灯台を正船首少し右方に見る130度に転じて進行し、神集島西側の水道の北口付近の漁船群を右舷側に替わしたのち、同時55分半わずか過ぎ同灯台から325度560メートルの地点に達したとき、針路を兜鼻に著しく接近する170度に転じ、同水道中央部付近の漁船群を右舷前方に見ながら続航した。
A受審人は、右舷前方の漁船群のうち、2隻の小型底曳網漁船が自船の前路に接近するのを認め、針路を神集島西側の水道の中央寄りにとることができないまま、その後、同漁船の動静を見守っていて、兜鼻の浅礁に向首接近する態勢となったことに気付かないで進行した。
こうして丸福丸は、兜鼻の浅礁に向首したまま続航し、2隻の小型底曳網漁船が右舷船尾至近に替わったので、A受審人が入港準備のため乗組員を起こそうと起床ベルを鳴らして間もない02時00分宮崎灯台から184度970メートルの地点において、原針路、原速力のまま兜鼻の浅礁に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力1の東風が吹き、潮候はほぼ低潮時で、視界は良好であった。
乗揚の結果、左舷船底外板に破口及び亀(き)裂を生じて沈没したが、のち引き揚げられて廃船とされた。また、A受審人ほか乗組員全員は、付近の漁船に救助された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、佐賀県神集島北西方沖合を同県唐津港に向けて航行する際、針路の選定が不適切で、操業中の漁船群により可航幅が著しく制限された同島西側の水道に向けて航行を続け、兜鼻の浅礁に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、単独の船橋当直に就き、佐賀県神集島北西方沖合を同県唐津港に向けて航行中、右舷前方の土器埼東方沖合から同島西側の水道の北口付近や同水道の中央部付近に操業中の多数の漁船を認めた場合、同水道は漁船群によって可航幅が著しく狭められていたのであるから、同島東側の広い海域を航行して目的地に向かう適切な針路を選定すべき注意義務があった。しかるに、同人は、同水道は平素から航行していて慣れているので、なんとか通航できるものと思い、同島東側の広い海域を航行して目的地に向かう適切な針路を選定しなかった職務上の過失により、同水道に向けて航行を続け、兜鼻の浅礁に向首進行して乗揚を招き、左舷船底外板に破口及び亀裂を生じて沈没し、のち廃船とさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

よって主文のとおり裁決する。






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