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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成10年広審第76号
    件名
貨物船長春丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年4月14日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

釜谷獎一、織戸孝治、横須賀勇一
    理事官
前久保勝己

    受審人
A 職名:長春丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
B 職名:長春丸一等航海士 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
    指定海難関係人

    損害
推進器翼に曲損及び欠損、船首船底部に擦過傷

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年3月28日15時44分
備讃瀬戸西部
2 船舶の要目
船種船名 貨物船長春丸
総トン数 699トン
全長 70.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,176キロワット
3 事実の経過
長春丸は、主に兵庫県東播磨港と福岡県苅田港間の高炉セメント用のスラグの運送に従事する鋼製の船尾船橋型貨物船で、A、B両受審人のほか4人が乗り組み、特殊高炉セメント1,116トンを載せ、船首3.24メートル船尾4.23メートルの喫水をもって、平成10年3月28日10時10分東播磨港を発し、苅田港に向かった。
A受審人は、船橋当直体制を単独による3時間4直制に定め、00時から09時及び12時から15時までの各時間帯を次席一等航海士、03時から06時及び15時から18時までの各時間帯をB受審人、09時から12時及び21時から00時までの各時間帯を二等航海士の船橋当直時間にそれぞれ定め、自らは、18時から21時及び06時から09時までの時間帯のほか出入港時における港内操船及び狭い水道での操船に当たることにしていた。
A受審人は、発航後、港内操船に従事し、港外に出たところで二等航海士と船橋当直を交代したが引継ぎに当たり、針路、速力等の一般的な引継ぎ事項を告げたが、昼間の航海であったので、船橋当直者が居眠りりに陥ることまでを予想しなかった。
その後、長春丸は、播磨灘を南西進して備讃瀬戸東航路に入り、これに沿って西行し、14時30分男木島灯台の西方1.4海里の地点に達したとき、昇橋したB受審人は、次席一等航海士から船橋当直を引き継いだ。
ところでB受審人は、前日の27日東播磨港に着岸後、同僚と共に上陸してパチンコを行い、21時ごろ帰船して22時ごろに就寝したもののなぜか寝付けず、翌28日は06時に起床したのち07時ごろから乗組員全員と共に荷役作業に従事し、出港後、間もなくして昼食をとり、11時30分ごろから約1時間自室で休息をとり、その後前示のとおり昇橋した。
B受審人は、船橋当直を交代後、間もなく前路に多数の漁船が曳網して点在するのを確認して操舵を手動とし、これらを回避しながら操舵操船に当たり、14時55分小槌島灯台から043度(真方位、以下同じ。)1.5海里の地点に達し、備讃瀬戸東航路中央第2号灯浮標を左舷側約200メートルに並航したとき、前路に漁船が見当たらなくなったことから操舵を自動に切り替え、針路を250度に定めて機関を13.2ノットの全速力前進にかけ、折からの東流に抗し、10.6ノットの、対地速力で進行した。
B受審人は、このころ漁船群を替わし終えたことから、急に気が緩み、船橋左舷前方のいすに腰かけ、暖房のきいた操舵室で喫煙しながら操船に当たるうち眠気を催したが、まさか居眠りに陥ることはないと思い、立ち上がって操舵室の外に出て冷気に当たるなど居眠り運航の防止措置をとることなく続航中、いつしか居眠りに陥った。
15時29分B受審人は、牛島灯標から074度2.7海里の地点に達し、備讃瀬戸北航路への転針地点に差し掛かったが、居眠りをしてこのことに気付かず、牛島に向首して、これを避けないまま進行中、15時44分突然衝撃を受け、牛島灯標から157度300メートルの同島東岸に原針路、原速力のまま、乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力1の西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
A受審人は、衝撃により昇橋して事後の措置に当たった。
乗揚の結果、長春丸は推進器翼に曲損及び欠損を船首船底部に擦過傷を生じたが、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、備讃瀬戸東航路を西行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、香川県牛島の北東岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
B受審人は、備讃瀬戸東航路を西行中、眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、冷気に当たるなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに同人は、まさか居眠りに陥ることはないと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠り運航となり、牛島の北東岸に向首進行して乗揚を招き、推進器翼に曲損及び欠損を船首船底部に擦過傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項3号を適用して同人を戒告する。
A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

よって主文のとおり裁決する。






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