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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成10年仙審第42号
    件名
漁船第三十丸定丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年3月16日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

高橋昭雄、安藤周二、今泉豊光
    理事官
上中拓治

    受審人
A 職名:第三十丸定丸一等航海士兼漁労長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船底外板前部に凹損

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年4月22日21時30分
青森県八戸港
2 船舶の要目
船種船名 漁船第三十丸定丸
総トン数 125トン
全長 36.61メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 713キロワット
3 事実の経過
第三十丸定丸は、沖合底びき網漁業に従事する鋼製漁船で、A受審人ほか13人が乗り組み、操業の目的で、船首1.6メートル船尾45メートルの喫水をもって、平成10年4月20日23時00分八戸港を発し、尻尾埼北方沖合の漁場に向かった。
ところで、A受審人は、当時、八戸港を基地として同港から航程が5時間程度の漁場における日帰り操業に従事し、02時ごろ出港して朝方漁場に至り操業を始め、その日の15時ごろ帰途に就き20時ごろ帰港して直ちに水揚げを行ってた。しかし、停泊時間の短い日帰り操業であったことから、乗組員には非番時に適宜休息をとらせていた。また、船長及び漁労長による単独2直制の船橋当直を採り、更に漁労長が操業中の単独当直を、船長が操業及び帰航中の作業をも行い、両人は停泊中及び往復航の当直非番時に休息をとるようにしていた。
A受審人は、翌21日早朝尻屋埼北方沖合の漁場に至って操業を開始し、同日夕方操業を終了したものの、漁獲量が少なかったので、引き続き翌日も操業を続けることにした。そこで、20時30分いったん最寄りの青森県大畑港に寄せ、翌22日02時30分同港を発し、再び同じ漁場に至り夜明けを待って操業を再開した。しかし、同日夕方までの操業にもかかわらず十分な漁獲量を得られないまま操業を打ち切り、17時00分尻屋埼灯台から010度(真方位、以下同じ。)5海里の地点を発して帰途に就いた。
ところで、A受審人は、この度、基地を出航してから途中で大畑港に寄せたものの、3日間にわたる尻屋崎北右沖合の漁場での操業中、航海及び操業時の船橋当直をほぼ連続して長時間行う結果となり、帰航開始の時点では休息不足の状態であったが、帰航開始とともに船長を一時休息させて船橋当直交替要員を確保するなりあるいは船橋当直補助者を配するなりして適切な当直体制を採るなどの居眠り運航の防止措置をとることなく、船長を操業時に引き続いで帰途も漁獲物及び甲板の作業に配し、その後同作業を済ませて休息させたのち、平素の日帰り操業時と同様に港口に近付いたところで船長を起こす予定で単独で船橋当直を続けた。
こうして、17時30分A受審人は、尻屋埼灯台から090度2海里の地点に達したところで、針路を180度に定め、機関を全速力前進にかけ、海流に乗じて東方に約1度圧流されながら12.9ノットの対地速方で自動操舵により進行した。
A受審人は、適宜レーダー及びプロッターを併用して船位と針路を確かめながらいすに腰掛けて当直にあたり、20時53分ごろ八戸港防波堤入口まで8海里の地点に至り、会社に入港連絡をとり、ほほ港口に向いていることを確かめて港口まで3海里に達したところで船長を起こすつもりで、引き続きいすに腰掛けて当直しているうちに居眠りに陥り、ほぼ港口に向首したまま続航中、21時30分八戸港八太郎北防波堤灯台から056度220メートルの地点において、八戸港八太郎北防波堤の東端付近に設置された消波ブロックに原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力1の西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、船底外板前部に凹損を生じたが、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、八戸港を基地にして尻屋埼北方沖合の漁場での操業を終えて帰航する際、居眠り運航の防止措置が不十分で、適切な当直体制が採られず、船橋当直者が長時間の当直による休息不足の状態のまま単独当直を続けているうちに居眠りに陥り、八戸港八太郎北防波堤に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、3日間にわたる尻屋埼北方沖合の漁場での操業を終えて八戸港に帰航する場合、航海及び操業時と連続かつ長時間の船橋当直による休息不足の状態であったから、居眠り運航に陥らないよう、操業後船長を休息させて、船橋当直要員を確保するなりあるいは船橋当直補助者を配するなりして適切な当直体制を採るなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかし、同人は、3日間にわたる操業で休息不足の状態であったにもかかわらず、平素の日帰り操業と同様に航海及び操業時更に帰航時に及ぶ長時間連続した船橋当直を単独で行おうとして船長を操業後も引き続き作業に配し、操業後船長を休息させて船橋当直要員を確保するなりあるいは船橋当直補助者を配するなりして適切な当直体制を採るなどの居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、休息不足の状態のまま長時間単独で当直を続けているうちに居眠りに陥り、八戸港八太郎北防波堤に向着したまま進行して同防波堤の東端付近に設置された消波ブロックヘの乗揚を招き、船底外板前部に凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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