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1999年(平成11年)

平成11年那審第16号
    件名
旅客船サザンクロス3号乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年8月23日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

金城隆支、清重隆彦、花原敏朗
    理事官
平良玄栄

    受審人
A 職名:サザンクロス3号船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
両舷プロペラ及び同軸を損傷

    原因
針路選定不適切

    主文
本件乗揚は、針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年12月24日14時37分
八重山列島西表島南東方沖合
2 船舶の要目
船種船名 旅客船サザンクロス3号
総トン数 19トン
全長 22.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,029キロワット
3 事実の経過
サザンクロス3号は、R株式会社が船舶所有者から借り入れた2基2軸を備えた軽合金製旅客船で、石垣島を中心とした八重山列島の各港間の定期運航の用に供されていたところ、平成10年12月24日観光客のための不定期便として運航されることとなり、A受審人が1人で乗り組み、旅客6人を乗せ、船首0.9メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、同日14時30分西表島仲間港を発し、小浜港に向かった。
ところで、仲間港南東方沖から小浜港間の航路は、要所に立標が設置されている通称大原航路を東行し、竹富島クントマリ埼を経て小浜港に至る航路と、大原航路第23号立標(以下「第23号立標」という。)付近で左転して北上した後、同立標の北東方4,500メートルばかりの地点で右転して東行し、竹富島クントマリ埼北西方を経て小浜港に至る航路とがある。後者の航路は、近回りであるが航路標識はなく、遠方の船首目標及び目視により浅礁を確認しながら航行する必要があった。
A受審人は、第23号立標付近で前示後者の航路に向ける際、小浜島中央より少し東側と石垣島の屋良部岳とを結ぶ重視線を船首目標として左転することにしていた。
こうしてA受審人は、仲間港を発航して間もなく機関を全速力前進にかけ、30.0ノットの対地速力で第23号立標に向けて手動操舵により進行しているうち、霞がかかっていて小浜島は視認できたものの、屋良部岳は視認できない状況であったが、近回りしようと思い、大原航路を選定することなく、前示後者の航路標識のない航路に向けることにした。
14時36分少し前A受審人は、第23号立標から329度(真方位、以下同じ。)200メートルの地点で、小浜島だけを見て針路を048度に定めたところ浅礁に向首していたが、このことに気付かないまま同じ針路、速力で続航中、同時37分少し前船首方に浅礁を認め、機関を中立として右舵一杯をとったが及ばず、14時37分第23号立標から041度1,300メートルの地点において、サザンクロス3号の船首が070度を向き速力10.0ノットとなったとき、浅礁に乗り揚げ擦過した。
当時、天候は曇で風力5の北北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、両舷プロペラ及び同軸を損傷したが、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、遠方の船首目標が視認できない状況のもと、八重山列島西表島仲間港から小浜港に向け航行する際、針路の選定が不適切で、浅礁に向け進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、遠方の船首目標が視認できない状況のもと、八重山列島西表島仲間港から小浜港に向けて航行する場合、要所に立標が設置されている大原航路を選定すべき注意義務があった。しかるに、同人は、近回りしようと思い、要所に立標が設置されている大原航路を選定しなかった職務上の過失により、航路標識のない航路を航行して浅礁への乗揚を招き、両舷プロペラ及び同軸に損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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