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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成10年仙審第43号
    件名
漁船第五進栄丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年1月21日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

高橋昭雄、安藤周二、今泉豊光
    理事官
黒田均

    受審人
A 職名:第五進栄丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船底外板に破口を生じて機関室に浸水

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年10月24日05時30分
青森県小泊港
2 船舶の要目
船種船名 漁船第五進栄丸
総トン数 19.85トン
登録長 14.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 160
3 事実の経過
第五進栄丸は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が妻と2人で乗り組み、操業の目的で、平成9年10月23日14時00分小泊港を発し、同港西方約23海里沖合の漁場に向かった。
A受審人は、1週間の休業後の出漁でGPSプロッタに残された操業時の航跡をたどって18時ごろ前示漁場に至り、さらにレーダーを確認しようとしたところ、レーダーの感度調整等の不良でレーダーによる船位を測定することができなかったので、GPSと山立てとによって求めた船位を魚群探知機による水深で確認し、ほぼ予定の操業地点で操業を開始した。
こうして、翌24日未明A受審人は、いか500キログラムを獲て操業を打ち切り、船首0.95メートル船尾2.30メートルの喫水をもって、04時00分小泊岬北灯台から303度(真方位、以下同じ。)12.2海里の地点で、小泊港港口に達するようにそれまでの経験から海流の影響で東方に圧流されることを考慮して針路を小泊岬に向かう123度に定め、機関を全速前進にかけ、約4度左方に圧流されながら9.2ノットの対地速力(以下速力は対地速力である。)で自動操舵により帰途に就いた。発航後、A受審人は、妻を休息させ、自ら単独で船橋当直にあたりながら帰港までの約1時間半の間に次の操業に備えて今回の操業の際に切断したいか釣り糸3本を作製することにしたが、その作業には1本のいか釣り糸の長さ約30メートルのテグスに30本のいか針を取り付けるのに約30分を要するものであった。
A受審人は、作業の開始に先立ち、船橋内後部壁に取り付けられた立型レーダーにより作業を行いながら適宜陸岸の接近模様を監視するつもりで6海里レンジに設定したが操業開始時に感度調整等の不良で映像を映し出すことができない状態であったことを失念したまま、船橋内床上に座り込み室内灯を点灯して釣り糸の作製を始めた。
05時05分A受審人は、2本目の釣り糸を仕上げたとき、漁場を発航してから1時間余りを経過して入港まで30分足らずとなり、小泊岬から2海里及び小泊港港口沖合の黒島ノ瀬と称する険礁から2.5海里の地点に達し、折から海流による圧流の影響を受けながら入港間近であったが、レーダー映像が映らない状態であったことに気付かず、まだ陸岸から6海里圏内に達していないものと思い、入航針路を修正するなどの入港操船にあたる時機を失することのないよう、夜標を利用するなどして船位の確認を行うことなく、引き続き3本目の釣り糸を作製しながら続航中、取付け針が残り5本となったとき、05時30分小泊港北防波堤灯台から032度107メートルの地点において、延長工事中の小泊港北防波堤端に設置された消波ブロックに原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力1の南東風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
乗揚の結果、船底外板に破口を生じて機関室に浸水し、その後沈没したが引き揚げられた。

(原因)
本件乗揚は、未明、津軽海峡西方沖合漁場から帰航する際、船位の確認が不十分で、小泊岬付近に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、未明、航程が約1時間半の津軽海峡西方沖合漁場での一晩の操業を終えて単独で当直を行い小泊港に向けて帰航する際、レーダーによる見張りを行いながら釣り糸の作製中、予定の釣り糸3本のうち2本を仕上げて入港まで30分足らずとなった場合、折から海流による圧流の影響を受け、港口沖合には険礁が存在して入港間近であったから、入航針路を修正するなどの入港操船にあたる時機を失することのないよう、夜標を利用するなどして船位の確認を行うべき注意義務があった。しかし、同人は、操業開始時レーダーの感度調整等の不良で映像を映し出せない状態であったことを失念したまま、6海里レンジに設定したレーダーに陸岸の映像を認めなかったことから、まだ陸岸から6海里圏内に達していないものと思い、夜標を利用するなどして船位の確認を行わなかった職務上の過失により、レーダーに映像が映らない状態であったことに気付かないまま釣り糸の作製を続けながら進行して乗揚を招き、船底外板に破口を生じて機関室に浸水させ、その後沈没に至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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