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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成11年函審第24号
    件名
漁船第18隆盛丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年7月30日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

酒井直樹、大石義朗、大山繁樹
    理事官
熊谷孝徳

    受審人
A 職名:第18隆盛丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船底外板後部右舷側に大破口、のち廃船処分

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年10月22日19時45分
北海道積丹半島出岬西岸付近
2 船舶の要目
船種船名 漁船第18隆盛丸
総トン数 19トン
登録長 18.41メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 150
3 事実の経過
第18隆盛丸(以下「隆盛丸」という。)は、たら刺し網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか5人が乗り組み、船首0.60メートル船尾2.50メートルの喫水をもって、平成10年10月21日01時00分北海道石狩湾古平漁港を発し、積丹半島神威岬の北西方9海里ばかりの漁場に向かった。
発航後A受審人は、積丹半島の東岸沿いに北上したのち神威岬の北西方に向かい03時30分前示漁場に至り、04時00分刺し網の投網作業を開始し、全長約1,300メートルの刺し網4連の投揚網作業を繰り返したのち夕刻操業を中止して漂泊待機し、翌22日04時00分から再び操業を開始し、まだら約1.2トンを獲て18時40分操業を打切り神威岬灯台から306度(真方位、以下同じ。)7.2海里の地点を発進し、帰途に就いた。
漁場発進後A受審人は、単独船橋当直に就いて積丹半島出岬の北方沖合に向け東行中、前方に多数のいか釣り漁船の灯火を認め、同漁船群を左舷側に通過することとし、18時50分神威岬灯台から317度5.8海里の地点に達したとき、針路を出岬の少し南方に向く100度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.8ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
ところでA受審人は、このころまだらの漁期で、前示1晩2日間の操業航海を続けており、漁場では夜間の漂泊待機中に数時間休息するだけで操業の指揮をとり、漁場往復航海中は単独で船橋当直に当たっていたこともあって、疲労が蓄積し、睡眠不足の状態となっていたものの、自船の操舵スタンドには、選択スイッチにより10分間隔または20分間隔でブザーが鳴るように設定できるタイマーが設けられていたので、陸岸に接近中に眠気を催したときには、いずれかのスイッチを入れて陸岸の手前で目を覚ましていた。
定針後A受審人は、操舵室に立って前方の見張りに当たっていたところ19時00分司厨員が操舵室に運んできた夕食をとり始め同時15分食事を済ませたが、前示漁船群が左舷後方に替わらないので、前示針路のまま出岬に接近したのち出岬の北方に向け左転することとし、操舵室の床に横になって食後の休息をとりながらレーダーとGPSビデオプロッターの監視に当たっていたところ、蓄積した疲労と睡眠不足に夕食後の満腹感が加わって眠気を催してきた。しかしながら、同人は、前示タイマーのブザーを出岬西岸の沖合で鳴るように設定しておけば居眠りしても出岬の手前で目が覚めるものと思い、船員室で休息している他の乗組員を起こして2人当直とするなどの居眠り運航防止措置をとることなく、同時25分積丹出岬灯台から282度3.7海里の地点に達したとき、出岬のレーダー距離を測定せずに推測でタイマーの20分間隔のスイッチを入れたため、出岬の西岸に到達したころにブザーが鳴るように設定され、その後、再び操舵室の床に横になってレーダーを監視しているうち、いつしか深い眠りに陥った。
その後隆盛丸は、出岬西岸に向首接近したが、タイマーのブザーが鳴らないので、予定していた転針が行われないまま居眠り運航が続けられ19時45分積丹出岬灯台から321度210メートルの地点において、出岬西岸の険礁に、原針路、全速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力3の北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、視界は良好であった。
乗揚の結果、隆盛丸は、船底外板後部右舷側に大破口を生じ、魚倉及び機関室に浸水して右舷側に大傾斜し、機器全股に濡れ損を生じ、起重機船により引き降ろされたが、のち廃船処分された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、北海道積丹半島神威岬北西方漁場から同半島出岬の西岸に向けて日本海を東行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、出岬西岸付近の険礁に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、単独船橋当直に当たって北海道積丹半島神威岬北西方漁場から同半島出岬の西岸に向けて日本海を東行中、連続出漁の蓄積疲労と睡眠不足に夕食の満腹感が加わって眠気を催した場合、居眠り運航にならないよう、休息している他の乗組員を起こして2人当直とするなどの居眠り運航防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、操舵スタンドに設けられているタイマーのブザーを出岬西岸の沖合で鳴るように設定しているから居眠りしても出岬の手前で目が覚めるものと思い、操舵室の床に横になったまま当直を続け、他の乗組員を起こして2人当直とするなどの居眠り運航防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、予定していた転針が行われず、出岬西岸付近の険礁に向首したまま進行して乗揚を招き、隆盛丸の船底外板に大破口を生じさせて魚倉及び機関室に浸水大傾斜させ、機器全般に濡れ損を生じさせて廃船処分させるに至った。
以上のA受審人の所為は対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

よって主文のとおり裁決する。






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