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海難審判庁裁決録(平成11年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1999年(平成11年)

平成8年第二審第44号
    件名
遊漁船パナリエキスプレス3乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成11年5月24日

    審判庁区分
高等海難審判庁
原審那覇

鈴木孝、吉澤和彦、松井武、葉山忠雄、平田照彦
    理事官
金城隆支

    受審人
A 職名:パナリエキスプレス3船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
両舷プロペラ、同軸及び舵板損傷

    原因
水路調査不十分

    二審請求者
理事官宮田義憲

    主文
本件乗揚は、浅礁の確認措置が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成7年9月23日14時40分
沖縄県新城島沖合
2 船舶の要目
船種船名 遊漁船パナリエキスプレス3
総トン数 17トン
登録長 11.91メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,309キロワット
3 事実の経過
パナリエキスプレス3は、船首から約5,5メートル後方に操舵室を有し、2基2軸を備えたFRP製遊漁船で、沖縄県石垣島から同県新城島へ旅客、日用品などの輸送に従事していたところ、A受審人が1人で乗り組み、旅客3人を乗せ、船首0.90メートル船尾1.40メートルの喫水をもって、平成7年9月23日14時00分石垣港を発し、新城島下地北岸中央の突堤に向かった。
ところで、新城島は西表島の南東方3海里ばかりのところにあり、付近一帯がさんご礁海域となり、石垣島と西表島間の航路標識として仲間港南防波堤灯台から091度(真方位、以下同じ。)5.9海里に大原航路第15号立標(以下、立標の名称については「大原航路」を省略する。)、同灯台から098度4.6海里に第17号立標、同灯台から104度3.7海里に第19号立標及び同灯台から115度2.6海里に第21号立標がそれぞれ設置されていたが、新城島寸近には航路標識がなく、航路のところどころに浅礁を示すための漁業用大型浮き玉が私設されていた。
石垣島から新城島下地北岸に向かう航路は、発航後沖縄県竹富島南方の水路を通過して西進し、第15号立標近くの地点に至り、同地点で左転して新城島上地の北端に向かい、第19号立標の南方1,000メートル付近を通過したところから同島上地の北岸に沿って目的地へ至るものであった。
この航路では、同島上地北端を航過してからは浅礁が拡散していて、可航幅が約10メートルの水路に入ることになり、付近海域に航路標識がないので、海面の波浪模様、色合いなどにより肉眼か、あるいは私設の浮玉によるかして浅礁を確かめながら航行する必要があった。
A受審人は、前示航路を通航した経験が多く、航路模様には精通していたものの、当日は、同海域には台風14号の通過に伴って発表された波浪注意報が継続され、風波によって前示浮き玉が流失し、ところによっては海底の砂が撹拌(かくはん)されて濁った状態であったことから、新城島上地北岸付近では、浅礁の慎重な確認措置が必要な状況となっていた。
A受審人は、発航とともに操舵室右舷側の操縦席に腰掛け、機関を約20ノットの全速力前進にかけて進行し、14時30分少し過ぎ第15号立標の南方至近に至り、航路の分岐点に達したとき、浅礁に近づいた際には減速して航行することとし、新城島上地の北岸に向く針路として続航した。
こうして、A受審人は、14時37分少し前第17号立標から200度1,400メートルの地点で、針路を267度に定め、同時39分第19号立標から187度1,000メートルの地点に達したとき、新城島上地の北岸に沿う針路となるよう、少しずつ左舵をとって進行した。
14時39分少し過ぎA受審人は、第19号立標から196度1,150メートルの地点で、新城島上地の北側水路の北東端に達したとき、浮き玉の流失と海水の濁りで、同水路の入り口をはっきり認めることができなかった。
このときA受審人は、速力を大幅に減じて周囲の地形、海面の色合い及び波浪模様を慎重に観察するなどして水路の両側に存在する浅礁を確認することなく、少し減速すれば浅礁を確認できるものと思い、針路を227度に転じるとともに機関を14.0ノットの半速力前進として続航し、14時40分浅礁の探知が一瞬遅れ、第19号立標から200度1,400メートルの地点において、原針路、原速力のまま、これに乗り揚げ擦過した。
当時、天候は曇で風力4の北西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期で、視界は良好であった。
乗揚の結果、両舷プロペラ、同軸及び舵板を損傷したがのち修理された。

(原因に対する考察)
石垣島から新城島下地北岸に向かうには、本件時、実際に航行した航路とは別に、第15号立標から西進して第17号及び第19号両立標の近くを経て第21号立標に至り、そこから南方に向けて目的地に至る航路があり、本件時とった航路は適切でないとの主張があるので、これについて検討する。
第21号立標から南方に向かって目的地に至る間は、海図第1206号部分拡大図で精査すると、水深が1メートル以下となる場所が随所に存在し、特に新城島下地に近づくと水深の減少が大きく、同航路によって安全に目的地に達することは非常に困難な地勢であり、同島上地北岸との等距岸距離を保ちながらその沖合を航行しようとした航路の選定を不適切とするのは相当でない。
本件は、いつも通航している航路であったものの、海水が濁っていたために発生したもので、これを回避するには、水路の両側に存在する浅礁を確かめることが不可欠であった。しかし、当時のパナリエキスプレス3の計器装備模様、地形浮き玉の流失などの状況では、安全運航を確保するための確実な方法が乏しく、したがって、機関停止を含めた大幅な減速を行って周囲の地形、海面の色合い及び波浪模様を慎重に観察するなどして浅礁を確認する措置が必要であった。

(原因)
本件乗揚は、台風の通過に伴って私設の航路標識の浮き玉が流失している状況のもと、沖縄県西表島東方のさんご礁海域の大原航路を同県新城島下地に向けて航行中、同島上地北岸沖合に近づき、進入予定の水路に海水の濁りを認めた際、同水路の両側に存在する浅礁の確認措置が不十分で、浅礁に向け進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、台風の通過に伴って私設の航路標識の浮き玉が流失している状況のもと、沖縄県西表島東方のさんご礁海域の大原航路を同県新城島下地に向けて航行中、同島上地北岸沖合に近づいて進入予定の水路に海水の濁りを認めた場合、速力を大幅に減じて周囲の地形、海面の色合い及び波浪摸様を観察するなどして同水路の両側に存在する浅礁の確認措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、少し減速すれば浅礁を確認できると思い、かかる浅礁確認措置をとらなかった職務上の過失により、14.0ノットの高速力で進行して浅礁への乗揚を招き、パナリエキスプレス3の両舷プロペラ、同軸及び舵板に損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

(参考)原審裁決主文平成8年11月6日那審言渡(原文縦書き)
本件乗揚は、浅礁識別のための原則が十分でなかったことに因って発生したものである。
受審人Aを戒告する。






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