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1999年(平成11年)

平成10年神審第118号
    件名
貨物船第22大盛丸貨物船明宝丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年10月20日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

西田克史、佐和明、工藤民雄
    理事官
平野浩三

    受審人
A 職名:第22大盛丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
B 職名:明宝丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
大盛丸・・・右舷船首外板に凹損
明宝丸・・・左舷船首ブルワークに凹損

    原因
大盛丸・・・動静監視不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
明宝丸・・・見張り不十分、警告信号不履行、横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、第22大盛丸が、動静監視不十分で、前路を左方に横切る明宝丸の進路を避けなかったことによって発生したが、明宝丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年3月6日00時10分
大阪湾中央部
2 船舶の要目

船種船名 貨物船第22大盛丸 貨物船明宝丸
総トン数 699トン 177.20トン
全長 73.83メートル
登録長 29.13メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 1,471キロワット 169キロワット

3 事実の経過
第22大盛丸(以下「大盛丸」という。)は、専ら愛媛県大三島から同県松山港及び阪神方面へ海砂輸送に従事する船尾船橋型の砂利採取運搬船で、A受審人ほか5人が乗り組み、空倉のまま、船首2.2メートル船尾3.2メートルの喫水をもって、平成8年3月5日23時20分大阪府阪南港を発して大三島に向かった。
A受審人は、航行中の動力船の灯火を表示し、発航操船に引き続いて単独の船橋当直に就き、23時32分半阪南港阪南2区南防波堤灯台から212度(真方位、以下同じ。)200メートルの地点で、針路を292度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、12.0ノットの対地速力で明石海峡に向けて進行した。
23時53分半A受審人は、神戸灯台から152度10.3海里の地点に達したとき、レーダーにより右舷前方3.0海里に明宝丸の映像を探知するとともに、肉眼で同船の白、紅2灯を初めて視認し、一べつしただけで自船の前路を無難に替わると思い、そのころ、左舷前方4海里と5海里のところに2隻の北上船の映像を認め、いずれも自船の方に向かってくる状況であったので、その後これら北上船の接近模様を見守りながら続航した。

23時59分A受審人は、神戸灯台から156度9.5海里の地点に差しかかり、明宝丸が右舷船首42度2.0海里となり、その後同船が前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近したが、左舷側から近づく2隻の北上船に気をとられ、引き続き明宝丸に対する動静監視を十分に行っていなかったので、このことに気付かず、早期に右転するなどして同船の進路を避けないまま進行した。
そしてA受審人は、翌6日00時07分2隻の北上船が自船の船尾近くを航過したのを確認したものの、依然明宝丸の接近に気付かないで続航するうち、同時10分わずか前レーダーを見たところ、その画面中心付近に同船の映像を認めるとともに、右舷前方に迫った同船を視認して驚き、直ちに手動操舵に切り替えて左舵一杯とし、機関を停止としたが効なく、00時10分神戸灯台から167度8.1海里の地点において、大盛丸は、原針路、原速力のまま、その右舷船首部に、明宝丸の左舷船首部が後方から63度の角度で衝突した。

当時、天候は晴で風力3の北風が吹き、潮候は下げ潮の末期にあたり、視界は良好であった。
また、明宝丸は、主に瀬戸内海及び大阪湾において苛性ソーダを輸送する船尾船橋型の液体化学薬品ばら積船で、B受審人ほか1人が乗り組み、空倉のまま、船首0.8メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、同月5日22時18分大阪港を発して徳島県今切港に向かった。
B受審人は、航行中の動力船の灯火を表示し、発航操船に引き続いて単独の船橋当直に就き、23時00分大阪灯台から226度1.7海里の地点で、針路を229度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、8.4ノットの対地速力で友ケ島水道に向けて進行した。
23時55分B受審人は、神戸灯台から152度7.3海里の、大阪湾中央部に設置されたのり養殖施設の東側沖合に差しかかったときに左方を見渡し、関西国際空港や陸岸の明かりを認めただけであったので他船はいないものと思い、その後右舷前方の標識灯を設備した同施設を見ながら続航した。

23時59分B受審人は、神戸灯台から157度7.5海里の地点に達したとき、左舷船首75度2.0海里のところに大盛丸の白、白、緑3灯を視認することができる状況で、その後同船が前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近したが、右舷前方ののり養殖施設への接近模様に気をとられ、左方の見張りを十分に行わなかったので、このことに気付かなかった。
翌6日00時04分半B受審人は、神戸灯台から162度7.8海里の地点に達したとき、大盛丸が衝突のおそれがある態勢のまま1.0海里に接近したものの、依然このことに気付かず、同船に対して警告信号を行うことも、更に間近に接近しても機関を停止するなど衝突を避けるための協力動作もとらなかった。
そしてB受審人は、大盛丸の存在と同船の接近に全く気付かないまま続航するうち、00時10分わずか前ふと左舷側を見たところ、窓越しに大盛丸の黒い船体を初めて視認して驚き、直ちに機関を停止としたが効なく、原針路、原速力のまま前示のとおり衝突した。

衝突の結果、大盛丸は、右舷船首外板に凹損を生じ、明宝丸は、左舷船首ブルワークに凹損を生じたが、のち修理された。

(原因)
本件衝突は、夜間、大阪湾中央部において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、西行中の大盛丸が、動静監視不十分で、前路を左方に横切る明宝丸の進路を避けなかったことによって発生したが、明宝丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、大阪湾中央部を明石海峡に向けて西行中、前路を左方に横切る明宝丸の灯火を視認した場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、引き続き同船に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、一べつしただけで自船の前路を無難に替わると思い、左舷側から近づく2隻の北上船に気をとられ、引き続き明宝丸に対する動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、同船と衝突のおそれがある態勢で接近することに気付かず、明宝丸の進路を避けないまま進行して同船との衝突を招き、大盛丸の右舷船首外板及び明宝丸の左舷船首ブルワークにそれぞれ凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

B受審人は、夜間、大阪湾中央部に設置されたのり養殖施設の東側沖合を友ヶ島水道に向けて南下する場合、大盛丸を見落とすことのないよう、左方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、他船はいないものと思い、右舷前方の同施設への接近模様に気をとられ、左方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、大盛丸の存在とその接近に気付かないで、警告信号を行わず、更に間近に接近したとき衝突を避けるための協力動作をとらないまま進行して同船との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。

参考図






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