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1999年(平成11年)

平成10年門審第111号
    件名
瀬渡船清福丸漁船栄丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年10月28日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

供田仁男、清水正男、西山烝一
    理事官
千手末年

    受審人
A 職名:清福丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:栄丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
清福丸・・・左舷船首部外板に破口及び擦過傷
栄丸・・・左舷船首部及び右舷側中央部の両外板に切損、廃船、栄丸船長が通院を要する前胸部挫創

    原因
清福丸・・・見張り不十分、船員の常務(前路進出)不遵守

    主文
本件衝突は、清福丸が、見張り不十分で、無難に航過する態勢にあった栄丸の前路に進出したことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年3月31日14時56分
山口県相島漁港
2 船舶の要目

船種船名 瀬渡船清福丸 漁船栄丸
総トン数 6.1トン 0.79トン
全長 13.75メートル 7.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 279キロワット
漁船法馬力数 15

3 事実の経過
清福丸は、船体の後部に操舵室を設け、採介藻漁業及び一本釣り漁業のほか釣り客の瀬渡しに従事するFRP製小型遊漁兼用船で、A受審人が1人で乗り組み、瀬渡しした釣り客を迎えに行く目的で、船首0.15メートル船尾1.00メートルの喫水をもって、平成10年3月31日14時54分相島漁港の船だまりを発し、同漁港西方の釣り場に向かった。
A受審人は、入船付けしていた岸壁付近で回頭を終え、14時54分半相島港D防波堤灯台(以下「D防波堤灯台」という。)から011度(真方位、以下同じ。)217メートルの地点において、針路を229度に定め、機関を微速力前進にかけ、2.5ノットの対地速力(以下、速力は対地速力である。)で進行した。
定針したときA受審人は、左舷船首14度260メートルに船だまり出入口南西方の漁港内を北上する栄丸を視認でき、その後互いに進路を横切るも同船の方位が右方に変わり、自船の前路を67メートル隔てて無難に航過する態勢であったものの、これに気付かないまま、同出入口北側の突堤に近づくように手動で操舵にあたった。

14時56分少し前A受審人は、D防波堤灯台から348度150メートルの船だまり出入口に達し、増速することとしたが、前方を一瞥(べつ)して船がないので大丈夫と思い、見張りを十分に行うことなく、左舷船首6度92メートルに接近していた栄丸に依然として気付かず、機関を13.0ノットのほぼ全速力前進にかけて同船の前路に進出し、14時56分D防波堤灯台から315度130メートルの地点において、清福丸は、原針路のまま、13.0ノットの速力で、その船首が栄丸の左舷船首部に前方から30度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力1の東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
また、栄丸は、船体の中央部に機関を配し、舵柄を備えた無蓋のFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、刺網を仕掛ける目的で、船首0.20メートル船尾0.74メートルの喫水をもって、同日14時40分相島漁港の船だまりを発し、同漁港内の漁場に向かった。

14時45分B受審人は、船だまり出入口の南西方150メートルの漁場に着き、南東方に移動しながら長さ75メートルの刺網を繰り出して投網を終え、同時54分少し前D防波堤灯台から250度120メートルの地点を発進して帰途に就き、直ちに針路を008度に定め、機関を微速力前進にかけ、2.0ノットの速力で進行した。
14時56分少し前B受審人は、右舷船首35度92メートルに清福丸を初めて視認し、同船が急速に接近してくるので衝突の危険を感じ、同時56分わずか前右舵をとって回頭中、栄丸は、船首が079度を向いたとき、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、清福丸は左舷船首部外板に破口及び擦過傷を生じたが、のち修理され、栄丸は左舷船首部及び右舷側中央部の両外板に切損を生じて廃船処理され、B受審人が2回の通院を要する前胸部挫創を負った。


(原因)
本件衝突は、相島漁港において、両船が互いに進路を横切るも無難に航過する態勢で接近中、清福丸が、見張り不十分で、増速して栄丸の前路に進出したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、相島漁港を出航中、船だまり出入口に達して増速する場合、前方に存在する他船を見落とすことのないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、前方を一瞥して船がいないので大丈夫と思い、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、互いに進路を横切るも無難に航過する態勢の栄丸に気付かず、増速してその前路に進出し、同船との衝突を招き、清福丸の左舷船首部外板に破口及び擦過傷を、栄丸の左舷船首部及び右舷側中央部の両外板に切損をそれぞれ生じさせ、B受審人に前胸部挫創を負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人の所為は、本件発生の原因とならない。


よって主文のとおり裁決する。

参考図






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