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1999年(平成11年)

平成11年広審第42号
    件名
漁船第十八事代丸プレジャーボートはるこ衝突事件(簡易)

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年10月20日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

釜谷獎一
    理事官
尾崎安則

    受審人
A 職名:第十八事代丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:はるこ船長
    指定海難関係人

    損害
事代丸・・・船首部にわずかな擦過傷
はるこ・・・右舷船尾外板破口、主機冠水、同乗者1人負傷

    原因
事代丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
はるこ・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、第十八事代丸が、見張り不十分で、前路に錨泊中のはるこを避けなかったことによって発生したが、はるこが、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年8月8日01時00分
島根県隠岐島島後水道東口
2 船舶の要目

船種船名 漁船第十八事代丸 プレジャーボートはるこ
総トン数 14.60トン
登録長 13.91メートル 7.49メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 83キロワット
漁船法馬力数 120

3 事実の経過
第十八事代丸(以下「事代丸」という。)は、船体のほぼ中央に操舵室を有するFRP製の漁船で、A受審人が1人で乗り組み、中型まき網漁業に従事する目的で、船首0.2メートル、船尾0.4メートルの喫水をもって、平成10年8月7日16時30分網船等6隻の船団を組んで島根県隠岐郡島後の西郷港を発し、島後と同県島前との間にある島後水道付近の漁場に向かった。
18時30分A受審人は、島前の東方約5海里の漁場に到着したところで各船とも魚群探査作業にとりかかる旨の指示を網船から受け、日没後は成規の灯火を表示して、適宜、周辺海域を移動しながら同作業に従事した。
翌8日00時45分A受審人は、四敷島灯台から174.5度(真方位、以下同じ。)4.5海里の地点に達したとき、周辺海域に魚群が見当たらなかったので、北上しながら魚群探査作業を続けることとし、針路を337度に定めて操舵を手動とし、機関を全速力前進よりわずかに減じた12.4ノットにかけて進行した。

00時57分半A受審人は、四敷島灯台から194度2.2海里の地点に達したとき、右舷船首方に見る同灯台の西方海域一帯にかけて多数のいか釣り漁船が点在し、これらの点ずる明るい集魚灯を前路に認め、この中に紛れて、正船首1,000メートルのところに錨泊して一本釣りを行うはるこの表示する白色全周灯1個と甲板上を照らす数個の作業灯を視認し得る状況となり、その後、方位の変化なく、衝突のおそれのある態勢となって接近したが、1.5海里レンジに設定したレーダー画面を時折見てはいたものの、魚群探知器の画像に気を取られ、前路の見張りを十分に行うことなく、はるこの灯火に気付かず続航した。
00時59分少し前A受審人は、はるこが正船首500メートルとなったが、依然、見張り不十分で、このことに気付かず、同船を避けることなく進行中、01時00分少し前船首至近にはるこの白い船体を初めて視認し、機関を中立としたが及ばず、01時00分事代丸は四敷島灯台から205度1.8海里の地点において、その船首がはるこの右舷船尾に原針路のまま、約7ノットの残存速力をもって直角に衝突した。

当時、天候は晴で風力1の北東風が吹き、付近には徴弱な南西流があった。
また、はるこは、有効な音響設備を有しない、船体のほぼ中央に操舵室を有するFRP製のプレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、友人2人を乗せ、魚釣りの目的で、船首0.30メートル、船尾0.31メートルの喫水をもって、同月7日18時15分島根県八束郡美保関町にある法田港を発し、隠岐諸島周辺にある釣り場に向かった。
B受審人は、20時ごろ釣り場に着いて一本釣りを行ったものの、不漁で、その後周辺海域を移動して釣り場を探していたが、翌8日00時ごろ衝突地点に至り、20キログラムの錨を長さ60メートル直径12ミリメートルのクレモナロープに結び、他端を船首部のビットに固定して水深約40メートルのところに投じ、操舵室の上部に白色全周灯と、操舵室前部に甲板上を照らす数個の作業灯を表示して、一本釣りを開始した。

こうしてB受審人は、友人1人を左舷船首部に、他の1人を操舵室の後方右舷側の甲板上に、自らは、操舵室の後方左舷側に腰掛けた姿勢となって釣りを行っていたところ、00時57分半船首が067度を向いていたとき、右舷正横1,000メートルのところに自船に向け接近する事代丸の白、紅、緑3灯を視認し得る状況となり、その後、方位の変化なく、衝突のおそれのある態勢となって接近したが、自船は錨泊していることから、他船が接近すれば自船を避けるものと思い、見張りを十分に行うことなく、事代丸の灯火に気付かず、釣りに専念した。
00時59分少し前B受審人は、事代丸が右舷正横500メートルとなったが依然、見張り不十分で、このことに気付かず、機関を使用するなどして、衝突を避けるための措置をとらずに錨泊中、01時00分少し前、ふと右舷方を見たとき至近に事代丸の灯火を認めたが、どう対処することもできず、はるこは前示のとおり衝突した。

衝突の結果、事代丸は、船首部にわずかな擦過傷を生じたが、はるこは、右舷船尾外板に破口を生じて主機が冠水し、同乗者1人が負傷した。

(原因)
本件衝突は、夜間、島根県隠岐諸島の島後水道付近の海域において、前路遠方に点在する多数のいか釣り漁船の灯火を認める状況下、魚群探査作業を行いながら北上する際、事代丸が、前路の見張り不十分で、錨泊して一本釣りを行うはるこを避けなかったことによって発生したが、はるこが、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、島根県隠岐諸島の島後水道付近の海域において、前路遠方に点在する多数のいか釣り漁船の灯火を認める状況下、魚群探査作業を行いながら北上する場合、前路に錨泊するはるこの灯火を見落とさないよう、見張りを十分に行って進行するべき注意義務があった。しかるに同人は、魚群探知器の画像に気を取られ、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、錨泊中のはるこに衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、同船を避けずに衝突を招き、事代丸の船首部にわずかな擦過傷を、はるこの右舷船尾外板に破口を生じさせ、同乗者の1人を負傷させるに至った。
B受審人は、夜間、島根県隠岐諸島の島後水道付近の海域において錨泊して一本釣りを行う場合、自船に向け北上する事代丸の灯火を見落とすことのないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに同人は、自船は錨泊していることから、他船が接近すれば自船を避けるものと思い、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、衝突を避けるための措置をとることなく錨泊を続けて事代丸との衝突を招き、両船に前示の損傷と自船の同乗者を負傷させるに至った。


参考図






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