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1999年(平成11年)

平成11年広審第45号
    件名
貨物船三幸丸漁船一丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年12月16日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

横須賀勇一、杉崎忠志、織戸孝治
    理事官
前久保勝己

    受審人
A 職名:三幸丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
B 職名:一丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
三幸丸・・・船首部擦察過傷
一丸・・・右舷中央部大破、転覆、のち廃船

    原因
一丸・・・見張り不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
三幸丸・・・横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、一丸が見張り不十分で、前路を左方に横切る三幸丸の進路を避けなかったことによって発生したが、三幸丸が衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Bの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年6月12日19時00分
伊予灘
2 船舶の要目
船種船名 貨物船三幸丸 漁船一丸
総トン数 199.00トン 3.43トン
全長 58.0メートル 10.0メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 625キロワット
漁船法馬力数 25
3 事実の経過
三幸丸は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人ほか2人が乗り組み、コークス約500トンを載せ、船首2.38メートル船尾3.37メートルの喫水をもって、平成10年6月12日11時ごろ岡山県水島港を発し、山口県徳山下松港に向かった。
A受審人は、18時30分沖家室島長瀬灯標(以下「長瀬灯標」という。)から055度(真方位、以下同じ。)6.0海里の地点に達したとき、一等航海士と当直を交代して単独で船橋当直に当たり、沖家室島南方に向け針路を232度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、折からの潮流に抗して10.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で進行した。

18時57分A受審人は、長瀬灯標から065度1.6海里に達したとき、左舷船首28度1,100メートルのところに前路を右方に横切る態勢の一丸を初めて視認し、その動静を監視していたところ同船と衝突のおそれのある態勢で互いに接近する状況であることを知った。
18時58分少し過ぎA受審人は、長瀬灯標から066度1.4海里に達したとき、一丸が、そのままの態勢で560メートルに接近したのを認めて、短音5回の警告信号を行い、その後も同船が避航動作をとらず間近に接近したが、小型の船なのでいずれそのうち避航すると思い、直ちに機関を使用して行きあしを止めるなと衝突を避けるための協力動作をとることなく続航中、依然、一丸に避航の動作が認められず、同時59分半再度汽笛を鳴らし、19時00分わずか前あわてて全速力後進とするも効なく、三幸丸は、同じ針路、速力のまま19時00分長瀬灯標から069度2,000メートルの地点において、その船首が一丸の右舷中央部に前方から87度の角度で衝突した。

当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の中央期にあたり、付近海域には北東に流れる0.4ノットの潮流があり、日没は19時20分で視界は良好であった。
また、一丸は、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人が単独で乗り組み、操業の目的で、船首0.3メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、同日04時ごろ山口県森野漁港片添地区を発し、05時ごろ大水無瀬島周辺の沖合に至って操業したのち、18時36分長瀬灯標から126度2.7海里の漁場を発進し、牛ヶ首に向け針路を325度に定め、機関を全速力前進にかけ手動操舵として折からの北東流に4度右に圧流され、329度の進路となって5.8ノットの速力で帰途に就いた。
18時50分B受審人は、この付近は伊予灘北方の船舶交通の多い主要航路が存在する海域であることを知っていたものの、一瞥して前路に支障となる他船が見当たらなかったことから、少しの間なら、操業の後片づけをしても大丈夫と思い、操舵室の後方の甲板上で右舷方を向き舵を中央として操業に使用した釣り糸をタライに収納し始めた。

18時57分B受審人は、長瀬灯標から082度1.2海里の地点に達したとき、右舷船首59度1,100メートルのところに、前路を左方に横切る態勢の三幸丸を視認することができ、その後衝突のおそれのある態勢で接近する状況となったが、操業の後片づけに専念し、見張りを十分に行うことなく、このことに気付かず、同船を避けることなく進行した。
18時58分少し過ぎB受審人は、三幸丸と同一方位のまま560メートルに接近したが、同船が発する警告信号にも気付かず、その進路を避けないまま続航中、19時00分少し前ふと前を見たとき、目前に迫った同船に気が付いたがどうすることもできず、一丸は、原針路、原速力のまま前示のとおり衝突した。
衝突の結果、三幸丸は船首部に擦過傷を生じ、一丸は右舷中央部が大破し転覆し、のち廃船とされた。
B受審人は、転覆した一丸の船底に這い上がり付近の漁船に救助された。


(原因)
本件衝突は、山口県屋代島南方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれのある態勢で接近中、一丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切る三幸丸の進路を避けなかったことによって発生したが、三幸丸が、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
B受審人は、屋代島南方沖合において操業を終え帰路を北西進する場合、前路を左方に横切る三幸丸を見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、一瞥して前路に支障となる他船が見当たらなかったことから、少しの間なら、操業の後片づけをしても大丈夫と思い、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、三幸丸に気付かず、同船の進路を避けないで進行して衝突を招き、三幸丸の船首部に擦過傷を、一丸の右舷中央部に破口を伴う損傷を生じ、転覆させるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
A受審人は、屋代島南方沖合において、南西進中、前路を右方に横切り衝突のおそれのある状態で接近する一丸を認め、警告信号を行ってもなお避航の動作が認められず間近に接近した場合、直ちに機関を使用して行きあしを止めるなど衝突を避けるための協力動作をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、相手が小型の船なのでいずれそのうち避航するものと思い、衝突を避けるための協力動作をとらなかった職務上の過失により、一丸との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。

以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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