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1999年(平成11年)

平成11年広審第87号
    件名
漁船白狼丸漁船第3勝丸衝突事件(簡易)

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年11月29日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

黒岩貢
    理事官
副理事官 尾崎安則

    受審人
A 職名:白狼丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
B 職名:第3勝丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
白狼丸・・船首部右舷側かんぬき破損
勝丸・・・右舷船首部破口

    原因
白狼丸・・灯火不表示
勝丸・・・法定灯火表示不適切

    主文
本件衝突は、白狼丸が、無灯火のまま航行したことと、第3勝丸が、法定灯火の表示が不適切のまま航行したこととによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年1月26日21時10分
愛媛県八幡浜港沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船白狼丸 漁船第3勝丸
総トン数 0.6トン 0.4トン
登録長 4.73メートル 6.60メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
漁船法馬力数 25 60
3 事実の経過
白狼丸は、ほこ突き漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.20メートル船尾0.60メートルの喫水をもって、平成10年1月26日21時05分八幡浜港長早防波堤灯台(以下「長早防波堤灯台」という。)から184度(真方位、以下同じ。)1,100メートルの八幡浜市鯛引の船だまりを発し、同地の西方4.5海里ばかりの鼻付近の漁場に向かった。
ところで、漁場までの海域は、陸岸からの明かりもなく、また、当日月齢27日の月もすでに没して暗夜となっていたが、A受審人は、付近に航行する船舶はいないものと思い、出港時から法定灯火を表示せず、無灯火のまま航行を続け、21時08分長早防波堤灯台から199度960メートルの地点に達したとき、針路を漁場付近の山影に向く274度に定め、機関を全速力前進にかけ5.0ノットの対地速力で進行した。

定針したころA受審人は、右舷船首12度1海里のところに第3勝丸(以下「勝丸」という。)が存在し、その後衝突のおそれのある態勢で接近する状況となったが、暗夜であったうえ、同船が船首の浮上とともに前方から視認できなくなる両色灯しか点灯していなかったため、これを視認できず、原針路、原速力のまま続航中、21時10分白狼丸は、長早防波堤灯台から215度1,100メートルの地点において、突然衝撃を受け、その右舷船首部が、勝丸の右舷船首部に前方から14度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力4の北西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
また、勝丸は、刺し網漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人ほか1人が乗り組み、操業のため、船首0.05メートル船尾0.10メートルの喫水をもって、同日18時30分前示船だまりを発し、その西方2海里ばかりの佐島付近から女子鼻東方の漁場に至って操業し、時化模様となったため21時ごろ同地を発進して帰途に就いた。

ところで、勝丸は、高速力で航行すると、船首が約40センチメートル浮上し、操舵室からの見通しについては問題なかったものの、操舵室前面中央部に設置された同船の両色灯は、船首端上縁より低い位置となり、船首方から来航する船舶はこれを視認できなかった。
B受審人は、付近を航行する船舶はいないものと思い、発進時からマスト灯を消灯して両色灯のみを点灯し、約30ノットの高速力として船首方からは全く灯火の見えない状態となり、法定灯火を適切に表示することなく航行を続け、黒島、鳥島の南方を通過して21時07分長早防波堤灯台から267度1.6海里の地点に達したとき、針路を鯛引の船だまり西方の岬沖合に向く108度に定め、機関回転数を全速力前進から少し減じた25.6ノットの対地速力で進行した。
21時08分B受審人は、長早防波堤灯台から259度1.2海里の地点に達したとき、左舷船首2度1海里に白狼丸が存在し、その後衝突のおそれのある態勢で接近する状況となったが、暗夜であったうえ、同船が無灯火であったためこれを視認できず、原針路、原速力で続航中、勝丸は、突然衝撃を受け、前示のとおり衝突した。

衝突の結果、白狼丸は、船首部右舷側かんぬきを破損し、勝丸は、右舷船首部に破口を生じたが、のち両船とも修理された。

(原因)
本件衝突は、夜間、八幡浜港沖合において、白狼丸が、無灯火のまま航行したことと、勝丸が、法定灯火の表示が不適切のまま航行したこととによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、八幡浜港港外の定係地から漁場に向け航行する場合、法定灯火を表示すべき注意義務があった。しかるに、同人は、付近を航行する船舶はいないものと思い、法定灯火を表示せず、無灯火のまま航行した職務上の過失により衝突を招き、自船船首部のかんぬきを破損し、勝丸の右舷船首部に破口を生じさせるに至った。
B受審人は、夜間、漁場から八幡浜港港外の定係地に向け航行する場合、法定灯火を適切に表示すべき注意義務があった。しかるに、同人は、付近を航行する船舶はいないものと思い、マスト灯を消灯し、高速力で航行すると船首部の浮上とともに船首方から視認できなくなる両色灯のみを点灯し、法定灯火を適切に表示しないまま航行した職務上の過失により衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。


参考図






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