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1999年(平成11年)

平成11年横審第42号
    件名
貨物船第二東明丸桟橋衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年11月24日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

猪俣貞稔、勝又三郎、長浜義昭
    理事官
葉山忠雄

    受審人
A 職名:第二東明丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
第二東明丸・・・船首部及び右舷側後部外板にそれぞれ凹損
K15号桟橋・・・亀裂ほか外灯ポール、消防設備などに損傷

    原因
操船・操機(投錨位置)不適切

    主文
本件桟橋衝突は、強風を船尾に受けて回し付けする際の投錨位置が適切でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年11月26日07時05分
四日市港
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第二東明丸
総トン数 699トン
全長 74.024メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
第二東明丸は、液体化学薬品などの輸送に従事するケミカルタンカーで、A受審人ほか5人が乗り組み、空倉のまま、平成9年11月25日13時00分大阪港堺泉北区を発し、翌26日06時00分四日市港東防波堤北灯台(以下「北灯台」という。)の東南東1,700メートルのところに至り、いったん投錨してバース待ちし、積荷のためのバラスト調整をした後、船首0.60メートル船尾3.50メートルの喫水をもって、同時35分抜錨し、四日市港霞ヶ浦南ふ頭東側にあるK15号桟橋に向かった。
ところでK15号桟橋は、その南端が北灯台から004度(真方位、以下同じ。)1,360メートルに位置し、同端から霞ヶ浦南ふ頭南東側護岸に325度方向に50メートルの長さで構築され、同桟橋の北端と同護岸との間約70メートルは鉄骨製橋で通じており、また同桟橋南端からその延長上50メートルにわたって3個のドルフィンが設置されていた。同桟橋の東方沖合450メートルには霞ヶ浦防波堤が工事中であり、その南側に四日市港第2航路が設定されていた。

A受審人は、三重県北部に強風波浪注意報が発表されている状況のもと、船橋で一人で操舵操船に当たり、船首部に一等航海士及び二等航海士を、船尾部に機関長、一等機関士及び司厨長をそれぞれ就けて着桟配置とし、四日市港第2航路第1号灯浮標を左舷側に130メートルばかり離して、同第2航路を斜めに横断し、06時54分霞ヶ浦防波堤南端の南西方300メートルにあたる、K15号桟橋南端(以下「桟橋端」という。)から147度500メートルの地点に達したとき、折からの南東風を船首に受けてK15号桟橋に出船右舷着けとするため、大きく右転進行した後、左転し、同時58分桟橋端から100度250メートルの地点で、同桟橋線に対して45度の進入角度となる280度の針路として、機関を微速力前進にかけ、3ノットの速力で続航した。
A受審人は、空倉で船尾トリムがやや大きい状態のもと、強い南東風を左舷船尾に受け、左舷錨を利用して流されながら回し付けする状況であったが、通常の方法で問題ないものと思い、風上よりに高い位置になるよう、K15号桟橋から十分に距離を隔てたところに投錨することなく、07時00分ほぼ自船の船丈にあたる、桟橋端の手前75メートルの地点まで接近したとき、左舷錨投下を令したが、錨鎖の延出量が十分でなかったことから、風を左舷正横に受けて錨が効かないまま急速に桟橋に向けて圧流され、機関を微速力前進にかけ、舵を使って船首を風に立てようとしたが、及ばず、07時05分船首がほぼ210度を向き、機関を微速力前進にかけていたとき、第二東明丸は、その船首部が、K15号桟橋北端部に、同桟橋の線に対し、後方から65度の角度で衝突した。

当時、天候は雨で風力5の南東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、三重県北部には強風波浪注意報が発表されていた。
A受審人は、機関を微速力前進にかけたまま、右舷側を桟橋にすらせて進行し、同桟橋から離れたところでその前面に投錨し、事後の措置に当たった。
衝突の結果、第二東明丸は、船首部及び右舷側後部外板にそれぞれ凹損を生じ、のち修理され、K15号桟橋に亀裂ほか外灯ポール、消防設備などに損傷を与えた。


(原因)
本件桟橋衝突は、四日市港において、船尾トリムがやや大きい状態のもと、強風を船尾に受け、錨を利用して流されながらK15号桟橋に回し付けする際、投錨位置が不適切で、錨が効かずに船首が風下に落とされたまま同桟橋に圧流されたことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、四日市港において、船尾トリムがやや大きい状態のもと、強風を船尾に受け、錨を利用して流されながらK15号桟橋に回し付けする場合、錨を効かすことができるよう、錨鎖の延出量を考慮して桟橋から十分隔てた距離のところに投錨すべき注意義務があった。しかしながら、同人は、通常の操船方法で問題ないものと思い、桟橋から十分隔てた距離のところに投錨しなかった職務上の過失により、錨鎖が十分に延出されず、船首が風下に落とされたままK15号桟橋に向けて圧流され、同桟橋との衝突を招き、船首部及び右舷側後部外板にそれぞれ凹損を生じさせ、また、K15号桟橋に亀裂ほか外灯ポール、消防設備などに損傷を与えるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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