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1999年(平成11年)

平成11年仙審第51号
    件名
貨物船第三健翔丸岸壁衝突事件(簡易)

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年11月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

高橋昭雄
    理事官
副理事官 宮川尚一

    受審人
A 職名:第三健翔丸船長 海技免状:四級海技士(航海)(旧就業範囲)
    指定海難関係人

    損害
船首外板に破口を伴う凹損

    原因
接岸速力に対する配慮不十分

    主文
本件岸壁衝突は、接岸速力に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年6月6日10時57分
宮城県石巻港
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第三健翔丸
総トン数 499トン
全長 76.14メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,176キロワット
3 事実の経過
第三健翔丸は、船体船尾部に操舵室を有する鋼製貨物船で、A受審人ほか5人が乗り組み、飼料1,500トンを載せ、船首3.80メートル船尾4.90メートルの喫水をもって、平成11年6月5日14時30分茨城県鹿島港を発し、翌6日05時20分石巻港港外に至り、同港サイロ専用バース待ちのため石巻港雲雀野防波堤灯台(以下航路標識のうち「石巻港」の冠称を省略する。)から178度(真方位、以下同じ。)1.2海里の地点で左舷錨を投じて待機した。
その後、A受審人は、代理店から石巻港大手ふ頭3号岸壁(以下「大手ふ頭3号岸壁」という。)で揚荷用ブルドーザー1台を積み込んで清水サイロ専用桟橋に着桟の連絡を受けた。

大手ふ頭3号岸壁は、雲雀野防波堤北端部港口から北1,200メートルのところに位置する全長600メートルの大手ふ頭の中央部にあたり、同ふ頭と西側全長500メートルの中島ふ頭及び東側全長380メートルの日和ふ頭とにより全体として港口に向いたコの字型のふ頭を形成していた。また、清水サイロ専用桟橋は、日和ふ頭の東側サイロ桟橋のうち同ふ頭南西端から550メートルのところに位置していた。
ところで、A受審人は、今回初めて大手ふ頭3号岸壁に接岸するに際して、港口中央部付近から同岸壁面に対してほぼ直角の針路で接近し、左舷錨を投じて舵及び機関を併用しながら右舷付けする操船方法をとることにした。
こうして、10時10分A受審人は、入航配置を令して抜錨にかかり、同時25分揚錨とともに機関を半速力前進にかけて6.5ノットの対地速力(以下速力は対地速力である。)で雲雀野防波堤に沿って入航を開始した。同時43分第3、4号両灯浮標間の港口に至り、針路を356度に定めて機関を微速力前進とし、折から風力4の南東風を右舷船尾方から受けて約3ノットの速力で手動操舵により進行した。

10時53分半A受審人は、雲雀野防波堤灯台から013度2,200メートルにあたる、岸壁まで280メートルのところで、針路を345度に転じ、機関を極微速力前進に減じたものの、折から船尾方から強い風を受ける状況であったが、余裕をもって機関及び錨を併用して減速するなど接岸速力に対して十分に配慮することなく、同時54分半左舷錨の投下を令して機関を停止し、そのうちに錨が効いて行きあしが抑えられるものと思い、約2.5ノットの過大な行きあしのまま続航中、錨鎖の延出量が多く行きあしが過大であることに気付き、いったん極短時間機関を半速力後進にかけたものの、依然として過大な行きあし状態のまま左回頭しながら進行中、同時57分少し前岸壁まで約50メートルに迫ったとき、船首配置中の一等航海士から機関後進の連呼を受け、バウスラスターを左一杯続いて主機関を全速力後進にかけたが及ばず、10時57分雲雀野防波堤灯台から010度2,450メートルにあたる大手ふ頭3号岸壁に、295度を向首したとき、右舷船首が同岸壁面に48度の角度でわずかな前進行きあしで衝突した。
当時、天候は曇で風力4の南東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
衝突の結果、船首外板に破口を伴う凹損を生じたが、のち修理された。


(原因)
本件岸壁衝突は、石巻港において、支援艇なしの独航で着岸する際、接岸速力に対する配慮が不十分で、過大な行きあしのまま岸壁に接近したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、石巻港において、独航で岸壁に接岸する場合、折から船尾方より強い風を受ける状況であったから、過大な行きあしのまま岸壁に接近することのないよう、余裕をもって機関及び錨を併用して減速するなどの接岸速力に対して十分に配慮すべき注意義務があった。しかし、同人は、投錨した錨が効いて行きあしが抑えられるものと思い、余裕をもって減速するなどの接岸速力に対して十分に配慮しなかった職務上の過失により、過大な行きあしのまま岸壁に接近して、岸壁との衝突を招き、船首外板に破口を伴う凹損を生じさせるに至った。






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