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1999年(平成11年)

平成11年函審第58号
    件名
油送船第三十二大洋丸防波堤衝突事件(簡易)

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年11月30日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

大石義朗
    理事官
副理事官 堀川康基

    受審人
A 職名:第三十二大洋丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
大洋丸・・・・・右舷船首外板に亀裂を伴う凹損
防波堤西端・・・北角の一部に欠損

    原因
水路調査不十分

    主文
本件防波堤衝突は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年1月27日23時30分
北海道苫小牧港
2 船舶の要目
船種船名 油送船第三十二大洋丸
総トン数 749トン
全長 76.67メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,471キロワット
3 事実の経過
第三十二大洋丸(以下「大洋丸」という。)は、船尾船橋型の鋼製油送船で、A受審人ほか6人が乗り組み、重油2,000キロリットルを積載し、船首4.5メートル船尾5.1メートルの喫水をもって、平成11年1月25日16時00分千葉港を発し、北海道苫小牧港第1区の出光桟僑に向かった。
翌々27日21時ごろA受審人は、苫小物港第4区西端付近の苫小牧港出光興産シーバースの南南東方15海里ばかりの地点で昇橋し、甲板手1人とともに船橋当直に当たり、同シーバース北西端から南西方1,100メートルばかりの仮泊錨地に向け北上中、発達中の低気圧にともなう寒冷前線の接近で次第に南東の風波が強まってきた。

22時20分A受審人は、前示仮泊錨地の手前約1海里の地点に達したとき、甲板長と甲板手1人を船首配置に付け、甲板手を操舵に当たらせて操船指揮に当たり、同時35分前示仮泊錨地に達したとき、船首配置の甲板長が船橋に戻ってきて風波のため投錨作業が危険である旨報告し、そのまま在橋して船橋前部左舷側で見張りに当たった。
A受審人は、苫小牧港出光興産シーバースの北側なら投錨できるかもしれないと考え、そのまま北上を続けて22時45分同シーバースの北西端から北北西方850メートルばかりの地点に至り、再び投錨を試みたものの、ここでも風波のため投錨することができず、南東風の強いときは苫小牧港東部の苫小牧港東港地区東防波堤の北西方錨地がしのぎやすいと聞いたことを思い出し、同港4区東部の苫小牧港東港地区東防波堤の北西方錨地に向かうこととし、同シーバースの北側に沿って東行した。

ところで、A受審人は、これまで同港東部の入航経験がなく、その水路状況については不案内であったが、レーダーを監視していれば水路状況が分かるものと思い、手持ちの海図第1033号Bに当たってその水路状況を十分に調査しなかったため、苫小牧港東港地区東防波堤灯台から310度(真方位、以下同じ。)1,900メートルの地点が西端で、ここから106度の方向に1,200メートル延び、これより150度の方向に屈曲して200メートル延びた地点が東端となる苫小牧港東港区中防波堤が存在し、その東端には黄色灯1個が設置されていることを知らなかった。
A受審人は、22時49分苫小牧港出光興産シーバースの南東端を右舷側に通過し、苫小牧港東外防波堤灯台から106度1.4海里の地点に達したとき、針路を103度に定め、機関を9.2ノットの全速力前進にかけて進行したところ、苫小牧港東港区中防波堤の西端に向首するようになり、折からの降雪で感度が落ちたレーダー画面上のほぼ正船首5.1海里と5.3海里のところに2個の映像を認めたものの、これを2隻の錨泊船の映像と誤認し、同防波堤西端が船首4.6海里となっていることに気付かないまま進行した。

A受審人は、23時02分機関を7.7ノットの半速力前進に減じて続航し、同時07分苫小牧港東港区中防波堤の西端が船首2.0海里に接近したとき、前示2個の映像のうち東側の映像の600メートルばかり手前に投錨することに決め、機関を6.8ノットの微速力前進に減じ、同時15分機関を4.4ノットの極微速力に減じ、レーダーレンジを2台とも1.5海里レンジに切り替え、依然、同防波堤の西端に向首していることに気付かないまま進行中、同時30分少し前、甲板長から船首少し右方に黄色灯が見えるとの知らせを聞いて同灯を視認したとき、船首至近に迫った同防波堤西端の黒影を認めたが、どうすることもできず、23時30分苫小牧港東港地区東防波堤灯台から310度1,900メートルの地点において、大洋丸の右舷船首部が、原針路、原速力のまま、同防波堤西端の北側角部に衝突した。
当時、天候は雪で風力8の南東風が吹き、視界は約1海里で、潮候は上げ潮の末期であった。
衝突の結果、大洋丸は右舷船首外板に亀裂を伴う凹損を生じ、苫小牧港東港区中防波堤西端の北角の一部に欠損を生じた。


(原因)
本件防波堤衝突は、夜間、北海道苫小牧港において、荒天のため仮泊錨地を同港西部沖合から同港東部沖合に変更して東行中、同港東部の水路調査が不十分で、苫小牧港東港区中防波堤の西端に向首進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、北海道苫小牧港において、荒天のため仮泊錨地を同港西部沖合から同港東部沖合に変更して東行する場合、これまで同港東部に入航したことがなかったのであるから、手持ちの海図第1033号Bによりその水路状況を十分に調査すべき注意義務があった。しかし、同人は、レーダーを監視していれば水路状況が分かると思い、手持ちの海図第1033号Bによりその水路状況を十分に調査しなかった職務上の過失により、苫小牧港東港区中防波堤の存在に気付かず、その西端に向首進行して同防波堤との衝突を招き、大洋丸の右舷船首部に亀裂を伴う凹損を生じさせ、同防波堤西端の北角の一部に欠損を生じさせるに至った。






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