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1999年(平成11年)

平成11年那審第21号
    件名
押船二十一日之出丸被押はしけニ十一日之出丸プレジャーボートルミ衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年10月28日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

金城隆支、清重隆彦、花原敏朗
    理事官
道前洋志

    受審人
A 職名:二十一日之出丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
B 職名:ルミ船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
日之出丸被押はしけ・・・損傷なし
ルミ・・・・・・・・・・船首部及び左舷外板に亀裂、船長が、溺水による急性腎不全のため入院加療

    原因
日之出丸被押はしけ・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
ルミ・・・・・・・・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、二十一日之出丸被押はしけ二十一日之出丸が、見張り不十分で、前路で漂泊中のルミを避けなかったことによって発生したが、ルミが、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年12月27日12時50分
沖縄県糸満漁港南西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 押船二十一日之出丸 はしけ二十一日之出丸
総トン数 154トン 2,716トン
全長 29.50メートル 89.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 2,794キロワット
船種船名 プレジャーボートルミ
長さ 6.58メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 102キロワット
3 事実の経過
二十一日之出丸(以下「日之出丸」という。)は、鋼製押船で、A受審人ほか8人が乗り組み、船首3.0メートル船尾4.8メートルの喫水をもって、船首5.7メートル船尾6.0メートルの喫水で海砂2,600立方メートルを載せたはしけ二十一日之出丸(以下「はしけ」という。)の船尾凹部に船首を押し付け、船首部両舷及び船首の油圧駆動のピンで両船を結合して全長約106メートルで一体となり、平成10年12月27日08時40分沖縄県伊是名島西岸沖の採取地を発し、金武中城港に向かった。

A受審人は、10時45分単独の船橋当直につき、12時17分琉球大瀬灯標から268度(真方位、以下同じ。)1,800メートルの地点で、針路を175度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、12.0ノットの対地速力で進行した。
ところで、日之出丸の幅は、はしけの幅より6メートル狭く、また、はしけの船体中央部の甲板上にはジブクレーン1基が設置されていたことから、日之出丸の操舵室の操舵位置から前方の見通しが妨げられる状況であった。
12時44分半A受審人は、トコマサリ礁灯標から282度1.8海里の地点に達したとき、正船首やや右方に漂泊している漁船を認めたことから、転針予定地点の手前であったが早めに左転して避けることとし、針路を121度に転じたところ、正船首1.1海里のところで漂泊中のルミに向首する態勢となった。
12時47分A受審人は、ルミが正船首1,100メートルとなり、同船が漂泊していることを認め得る状況で、その後衝突のおそれのある態勢で接近したが、左舷側の陸岸との航過距離が近いことに気を取られ、船首を左右に振るなどして船首方向の死角を補う見張りを十分に行わなかったので、このことに気付かず、同船を避けることなく進行した。

日之出丸被押はしけは、漂泊中のルミを避けないで原針路、原速力のまま続航中、12時50分トコマサリ礁灯標から260度1,500メートルの地点において、はしけの船首が、ルミの左舷船首部に前方から59度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力4の北風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
衝突直後A受審人は、右舷船首至近にルミを認め、同船の船首部が損傷していたことから衝突したことを知り、事後の措置に当たった。
また、ルミは、FRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、遊漁の目的で、船首0.1メートル船尾0.7メートルの喫水をもって、10時00分沖縄県糸満漁港を発し、10時半ごろ同漁港南西方トコマサリ礁付近に至り、パラシュート形シーアンカーを投入し、漂泊して釣りを開始した。
12時44分半B受審人は、前示衝突地点において、船首を000度に向け、右舷船尾で右方を向いて釣りを行っていたところ、左舷船首59度1.1海里のところに日之出丸被押はしけが航行していたが、釣りに気を取られていたので、同船に気付かなかった。

12時47分B受審人は、日之出丸被押はしけが左舷船首59度1,100メートルとなり、その後、衝突のおそれのある態勢で接近したが、依然釣りに気を取られていたので、このことに気付かず、衝突を避けるための措置をとることなく漂泊を続けた。
12時50分わずか前B受審人は、何かの音を聞いたので左舷側を見たところ、至近に日之出丸被押はしけを初めて認めたが、どうすることもできず海中に飛び込んだ直後、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、日之出丸被押はしけは、損傷がなく、ルミは、船首部及び左舷外板に亀裂を生じた。また、B受審人は、日之出丸被押はしけに救助されたが、溺水による急性腎不全のため入院加療した。


(原因)
本件衝突は、糸満漁港南西方沖合において、日之出丸被押はしけが、金武中城港へ向けて航行中、見張り不十分で、前路でシーアンカーを投入して漂泊中のルミを避けなかったことによって発生したが、ルミが、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
A受審人は、糸満漁港南西方沖合において、船首方向に死角のある日之出丸の操舵室で操船に当たる場合、前路で漂泊している他船を見落とすことのないよう、船首を左右に振るなどして死角を補う見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、左舷側の陸岸との航過距離が近いことに気を取られ、死角を補う見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路で漂泊中のルミを見落とし、同船を避けることなく進行して衝突を招き、ルミの船首部及び左舷外板に亀裂を生じさせ、B受審人に溺水による急性腎不全を負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、糸満漁港南西方沖合において、漂泊して釣りをする場合、航行する他船を見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、釣りに気をとられ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、接近する日之出丸被押はしけを見落とし、衝突を避けるための措置をとることができずに同船との衝突を招き、自船に前示の損傷を生じさせ、自らが負傷するに至った。

以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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