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1999年(平成11年)

平成11年門審第55号
    件名
漁船生福丸油送船ブルータイガー衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年11月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

宮田義憲、清水正男、西山烝一
    理事官
喜多保

    受審人
A 職名:生福丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
生福丸・・・船首部を圧壊
ブ号・・・舷側後部外板に擦過傷

    原因
ブ号・・・横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
生福丸・・・見張り不十分、警告信号不履行、横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、ブルータイガーが、前路を左方に横切る生福丸の進路を避けなかったことによって発生したが、生福丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年8月21日18時20分
長崎県対馬南方沖合
2 船舶の要目

船種船名 漁船生福丸 油送船ブルータイガー
総トン数 13.94トン 3,984トン
全長 109.50メートル
登録長 14.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 2,405キロワット
漁船法馬力数 110

3 事実の経過
生福丸は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が単独で乗り組み、操業の目的で、船首0.50メートル船尾1.50メートルの喫水をもって、平成10年8月21日16時30分長崎県厳原港を発し、同県対馬南西方12海里ばかりの漁場に向かった。
A受審人は、対馬下島東岸をこれに沿って南下し、17時43分神埼灯台から151度(真方位、以下同じ。)1,100メートルの地点において、針路を220度に定めて自動操舵とし、機関を9.0ノット(対地速力、以下同じ。)の全速力前進にかけて進行した。
A受審人は、18時ごろ神崎灯台から209度2.9海里ばかりの地点に達したとき、いか釣り用仕掛けの修理を思い立ち、操舵室後部右舷側の出入口引き戸の内側で船尾方を向いて中腰になり、仕掛けの修理を始めた。
A受審人は、18時10分少し前神埼灯台から212度4.3海里の地点に達したとき、左舷船首83度1.5海里のところに前路を右方に横切るブルー一タイガー(以下「ブ号」という。)を認めることができ、その後その方位がほとんど変わらず、衝突のおそれがある態勢で接近したが、仕掛けの修理に気を奪われ、見張りを十分に行うことなく、これに気付かないまま、警告信号を行わずに進行し、更に間近に接近しても機関を停止するなど衝突を避けるための協力動作をとらないで続航中、18時20分神埼灯台から214度5.8海里の地点において、生福丸は、原針路、原速力のまま、その左舷船首がブ号の右舷側後部に後方から48度の角度で衝突した。

当時、天候は曇で風力2の北東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
また、ブ号は、船尾船橋型油送船で、韓国人船長B及び一等航海士Cほか韓国人3人及びフィリピン人14人が乗り組み、空倉のまま、海水バラスト2,500トンを載せ、船首3.20メートル船尾4.80メートルの喫水をもって、同月21日10時00分関門港小倉区を発し、大韓民国麗水港に向かった。
C一等航海士は、16時00分若宮灯台から003度9.1海里ばかりの地点で前直の二等航海士から当直を引き継ぎ、操舵手に補佐させて当直に就き、針路を268度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、11.8ノットの速力で進行した。
C一等航海士は、対馬に接近するに従って沖合の漁場に向かう漁船が増加してきたことから、17時30分操舵手に手動操舵に切り替えるよう指示して見張りを行いながら続航した。
C一等航海士は、18時10分少し前神崎灯台から195度4.9海里の地点に達したとき、レーダーで右舷船首49度1.5海里のところに生福丸の映像を探知し、その映像をプロットしたものの、これを一瞥して自船の船尾後方を最接近距離930メートルばかりで通過するとの動静を読みとったところから、船尾後方を無難に通過するものと認め、その船影を確かめず、その後前路を左方に横切る生福丸との方位がほとんど変わらず、衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かないまま、その進路を避けずに同針路、同速力で進行した。

C一等航海士は、18時15分レーダーで再度同船の映像を確かめたところその方位がほとんど変わらないまま、1,350メートルに近づいているのを認めて、生福丸を初めて視認し、同船が小型漁船で船首を大きく左右に振りながらその方位がほとんど変わらないまま、更に接近するのを認め、衝突の危険を感じたが、依然として生福丸の進路を避けないで小型船である同船が大型船である自船を避けてくれることを期待して、同船に対してモーターサイレンで短音を数回吹鳴したうえ、昼間信号灯を用いてせん光を照射しながら続航し、ブ号は、原針路、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
B船長は、衝突の衝撃を感じて直ちに昇橋し、事後の措置にあたった。
衝突の結果、生福丸は船首部を圧壊し、のち修理され、ブ号は右舷側後部外板に擦過傷を生じた。


(原因)
本件衝突は、対馬南方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、ブ号が、前路を左方に横切る生福丸の進路を避けなかったことによって発生したが、生福丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。


(受審人の所為)
A受審人は、対馬南方沖合の漁場に向けて南下する場合、接近する他船を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、いか釣り用仕掛けの修理に気を奪われ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路を右方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近するブ号に気付かないまま、警告信号を行わず、更に間近に接近しても機関を停止するなど衝突を避けるための協力動作をとらないで進行してブ号との衝突を招き、生福丸の船首部を圧壊し、ブ号の右舷側後部外板に擦過傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。

参考図






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