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1999年(平成11年)

平成9年神審第29号
    件名
漁船清福丸漁船源丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年1月26日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

清重隆彦、佐和明、工藤民雄
    理事官
平野浩三

    受審人
A 職名:清福丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士(5トン限定)
B 職名:源丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
清福丸…右舷船首部に破口
源丸…船首部を圧壊、船長が右眼瞼瘢痕拘縮など

    原因
清福丸…見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
源丸…船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、清福丸が、見張り不十分で、停留中の源丸を避けなかったことによって発生したが源丸が衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年9月27日05時20分
和歌山県串本港外
2 船舶の要目
船種船名 漁船清福丸 漁船源丸
総トン数 4.8トン 2.7トン
全長 14.35メートル
登録長 9.60メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 316キロワット 95キロワット
3 事実の経過

A受審人は、漁場を発進すると同時に針路を235度に定め、15.0ノットの対地速力で手動操舵により進行し、05時15分戸島埼灯台から066度1.2海里の地点で針路を250度に転じ、引き続き操舵室内舵輪左後方のいすに腰を掛けて見張りにあたった。
ところで、A受審人は、同姿勢で15.0ノットの速力で航走すると船体構造上正船首から右舷側7度、左舷側4度の範囲がそれぞれ死角となることから、平素船首を時折左右に大きく振るなどして死角を補う見張りを行っていた。
A受審人は、同じ針路及び速力で続航中、05時18分正船首930メートルのところに停留中の源丸の白、紅2灯及び黄色回転灯を視認することができる状況で、その後衝突のおそれのある態勢で接近したが、わずかに船首を右に振っただけで、前路に他船はいないものと思い、船首を左右に大きく振るなどして、船首の死角を補う見張りを十分に行うことなく、このことに気付かないまま、同船を避けずに進行した。
清福丸は、同じ針路及び速力で続航中、05時20分戸島埼灯台から007度180メートルの地点において、その右舷船首部が、源丸の船首に前方から20度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力2の北北東風が吹き、潮候はほぼ高潮時であった。
また、源丸は、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、底はえ縄魚の目的で、船首0.3メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、同月27日04時45分和歌山県串本漁港を発し、戸島埼北方の漁場に向かった。
B受審人は、04時55分漁場に着いて投縄を始め、05時15分ごろ前示衝突地点付近で、船首を090度に向け3本目のはえ縄を投入しようとしたとき、左舷船首20度1.1海里のところに、自船に向けて接近する、清福丸の白、紅、緑3灯を初めて認め、投縄すればそのはえ縄が海底に沈む前に同船のプロペラと絡まるおそれがあったので、同船の通過後投縄を再開することとして機関を中立運転としたまま停留を開始した。
B受審人は、船尾で投縄の準備作業をしながら清福丸の動静を見守っていたところ、05時18分同船が針路を変えずに930メートルとなり、同時19分半方位の変化なく230メートルに接近したが、同船の両舷灯のうち紅灯が強く見えていたことから、自船の左舷側至近を航過するものと思い、機関を使用するなどして衝突を避けるための措置をとることなく同作業を続けた。
源丸は、090度に向首して停留中、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、清福丸は、右舷船首部に破口を生じ、源丸は船首部を圧壊したが、のちいずれも修理され、B受審人が右眼瞼瘢痕拘縮(みぎがんけんはんこんこうしゅく)などを負った。

(原因)
本件衝突は、夜間、和歌山県大島北方海域において、清福丸が、見張り不十分で、停留中の源丸を避けなかったことによって発生したが、源丸が、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、和歌山県大島北方海域において、串本港に向け進行する場合、操舵室内舵輪左後方のいすに腰を掛けて15.0ノットの速力で航走すると船体構造上正船首から右舷側7度、左舷側4度の範囲にそれぞれ死角を生じていたのであるから、前路で停留中の源丸を見落とすことのないよう、船首死角を補う十分な見張りを行うべき注意義務があった。ところが、同人は、わずかに船首を右に振っただけで前路に他船はいないものと思い、船首死角を補う十分な見張りを行わなかった職務上の過失により、源丸の存在を認めないままこれを避けずに進行して同船との衝突を招き、清福丸の右舷船首部に破口を生じさせ、源丸の船首部を圧壊し、B受審人に右眼瞼瘢痕拘縮などを負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、夜間、大島北方海域において、機関を中立運転としたまま停留中、清福丸が左舷前方から自船に向首して避航の気配を示さないまま間近に接近するのを認めた場合、機関を使用するなどして衝突を避けるための措置をとるべき注意義務があった。ところが、同人は、両舷灯のうち紅灯が強く見えていたことから、自船の左舷側至近を航過するものと思い、衝突を避けるための措置をとらなかった職務上の過失により、そのまま停留を続けて同船との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせ、自らが負傷するに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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