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1999年(平成11年)

平成10年横審第108号
    件名
遊漁船第五ふじ丸漁船須賀丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年5月18日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

西村敏和、半間俊士、勝又三郎
    理事官
関隆彰

    受審人
A 職名:第五ふじ丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:須賀丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
ふじ丸…右舷前部に破口を伴う損傷
須賀丸…船首部に破口を伴う損傷

    原因
ふじ丸…動静監視不十分、船員の常務(進路上で停留)不遵守
須賀丸…動静監視不十分、船員の常務(避航動作)不遵守

    主文
本件衝突は、第五ふじ丸が、動静監視不十分で、須賀丸の進路上で停留したばかりか、衝突を避けるための措置をとらなかったことと、須賀丸が、動静監視不十分で、進路上で停留した第五ふじ丸を避けなかったこととによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年1月23日05時50分
静岡県焼津漁港沖合
2 船舶の要目
船種船名 遊漁船第五ふじ丸 漁船須賀丸
総トン数 15.0トン 3.69トン
全長 16.90メートル
登録長 11.93メートル 9.45メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 514キロワット
漁船法馬力数 70
3 事実の経過
第五ふじ丸(以下「ふじ丸」という。)は、FRP製遊漁船で、A受審人が甲板員と乗り組み、釣り客を迎えに行く目的で、船首0.1メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、平成10年1月23日03時30分ごろ静岡県戸田漁港を発し、同県焼津漁港に向かい、05時10分ごろ同漁港小川地区の魚市場南東側の岸壁に横付けし、釣り客を待っていたが、釣り客から乗船予約を取り消す旨の連絡が入り、同時40分ごろ同岸壁を発進し、戸田漁港に向け帰途に就いた。
A受審人は、法定の灯火を表示し、甲板員をレーダー見張りに当たらせ、自ら手動操舵に就いて適宜の針路とし、機関を毎分750回転の微速力前進にかけ、6.0ノットの対地速力で、小川南防波堤沿いに北上し、05時44分半わずか過ぎ、焼律港小川外港南防波堤灯台(以下「外港南防波堤灯台」という。)から000度(真方位、灯台以下同じ。)15メートルの地点を航過して、同防波堤北端を替わしたところで、針路を戸田漁港に向かう070度に定めて進行した。
定針後、A受審人は、前方に漂泊中の数隻の漁船などを認め、これらの間を注意しながら縫航していたとき、レーダー見張りをしていた甲板員から、速力の速い船が右舷側から接近中であるとの報告を受け、05時47分わずか過ぎ、外港南防波堤灯台から069度520メートルの地点において、レーダーにより右舷船首88度0.7海里のところに須賀丸の映像を探知し、間もなく漂泊中の数隻の漁船などを替わし終え、右舷側の窓越しに須賀丸を目視確認したところ、同時48分半、同灯台から069.3度780メートル地点において、右舷正横後6度680メートルのところに同船の紅灯1個を視認し、その後間もなく同船の両舷灯を視認し得る状況となったが、レーダーや目視により動静監視を十分に行わなかったので、自船が同船の前路を無難に通過できる態勢であったことに気付かず、先を急いでいなかったこともあって、停留して同船の通過を待つことにした。
05時49分少し過ぎA受審人は、外港南防波堤灯台から069.4度880メートルの地点に達したとき、機関を後進にかけて行きあしを止め、船首を084度に向けて機関をかけたまま停留したが、このとき右舷正横350メートルのところに須賀丸の両舷灯を視認し得る状況であったものの、自船が停留すれば同船が船首方を無難に通過していくものと思い、依然として同船の動静監視を十分に行わなかったので、自船が停留したところが同船の進路上であったことも、同船が自船に向首し、衝突のおそれのある態勢で接近していることにも気付かず、喫煙するなどしてその通過を待った。
こうして、A受審人は、衝突を避けるための措置をとらないまま停留中、05時50分少し前、甲板員の「ぶつかるぞ。」と叫ぶ声で右舷側を見たところ、右舷正横100メートルのところに須賀丸の両舷灯を視認して衝突の危険を感じ、直ちにホーンを吹鳴し、甲板員が拡声器により大声で注意を喚起したが、効なく、05時50分前示停留地点において、ふじ丸の右舷前部に、須賀丸の船首が直角に衝突した。
当時、天侯は晴で風力2の西風が吹き、視界は良好で、潮侯は下げ潮の末期であった。
また、須賀丸は、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.3メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、同日00時30分ごろ焼律漁港焼津地区の魚市場岸壁を発し、同漁港の南方約2海里にあたる、和田鼻南方の漁場に至ってたちうお漁を行い、たちうお20キログラムを漁獲して操業を終え、05時40分ごろ外港南防波堤灯台から167度2.0海里の地点を発進し、水揚げのため同魚市場岸壁に向かった。
B受審人は、法定の灯火を表示し、立って手動操舵に就いて適宜の針路とし、機関を毎分2,000回転の全速力前進にかけ、15.0ノットの対地速力で、和田鼻に沿って北上し、05時44分半、外港南防波堤灯台から154度2,480メートルの地点において、同鼻の東端を替わしたところで、針路を焼津南防波堤東端の少し東方に向く354度に定め、焼津港沖南防波堤灯台の灯光を正船首わずか左に見て進行した。
ところで、焼津港沖南防波堤灯台は、焼津南防波堤の北東端にあって、灯質が連成不動単閃緑光の毎4秒に1閃光で、常時緑色不動光を視認することができ、光達距離が閃光13海里及び不動光8海里、灯高が17メートルとなっていた。
05時48分B受審人は、外港南防波堤灯台から123.5度1110メートルの地点において、左舷船首12度900メートルのところにふじ丸の緑灯1個を初認したが、前路を右方に横切る態勢で接近するふじ丸の方で自船を替わしてくれるものと思い、その後は同船のことは気にも止めず、そのころ右舷船首方向から右舷を対して通過する態勢の漁船が接近していたので、その動静を注視しながら続航した。
05時49分B受審人は、外港南防波堤灯台から100度890メートルの地点において、右舷側の反航船が通過し終えたとき、左舷船首2度460メートルのところに、前路を右方に横切る態勢のふじ丸のマスト灯及び右舷灯を視認し得る状況であったが、同船に対する動静監視を十分に行わなかったので、焼津港沖南防波堤灯台の灯光は視認したものの、同灯光とほぼ同方位にあった同船の灯火に気付かなかった。
05時49分少し過ぎB受審人は、外港南防波堤灯台から092度860メートルの地点に達して、正船首350メートルのところに停留したふじ丸のマスト灯及び右舷灯を、焼津港沖南防波堤灯台の灯光のわずか右方に視認し得る状況となったが、同船が進路上で停留したとは思いも及ばず、同灯光に目を向けていたので、停留した同船に向首し、衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かないまま進行した。
こうして、B受審人は、停留したふじ丸を避けずに続航中、原針路、原速力のまま前示のとおり衝突した。
衝突の結果、ふじ丸は、右舷前部に破口を伴う損傷を、須質丸は、船首部に破口を伴う損傷をそれぞれ生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
本件衝突は、夜間、焼津漁港沖合において、ふじ丸が、動静監視不十分で、須賀丸の進路上で停留したばかりか、衝突を避けるための措置をとらなかったことと、須賀丸が、動静監視不十分で、進路上で停留したふじ丸を避けなかったこととによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、焼津漁港から戸田漁港に向けて東行中、右舷船首方に左舷灯を見せて北上中の須賀丸を認め、同船と接近することを避けるため、停留して同船の通過を待つ場合、衝突のおそれについて十分に判断することができるよう、レーダーを活用するなり、目視によるなりして、動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、自船が停留すれば、須賀丸は無難に通過していくものと思い、動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、自船の停留したところが須賀丸の進路上であったことも、同船が自船に向首し、衝突のおそれのある態勢で接近していることにも気付かず、そのまま停留を続けて衝突を招き、ふじ丸の右舷前部に破口を伴う損傷を、須賀丸の船首部に破口を伴う損傷をそれぞれ生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、夜間、焼津漁港南方の漁場から同漁港に向けて北上中、左舷船首方に右舷灯を見せて東行中のふじ丸を認めた場合、衝突のおそれについて十分に判断することができるよう、動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、前路を右方に横切る態勢で接近するふじ丸の方で自船を替わしてくれるものと思い、右舷船首方向から反航中の漁船の動静に気をとられ、ふじ丸に対する動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、進路上で停留したふじ丸に気付かず、同船を避けないまま進行して衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判庁第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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