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1999年(平成11年)

平成10年長審第74号
    件名
漁船眞能丸漁船第三長福丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年3月19日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

坂爪靖、安部雅生、保田稔
    理事官
酒井直樹

    受審人
A 職名:眞能丸船長 海技免状:三級海技士(航海)(旧就業範囲)
B 職名:第三長福丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(履歴限定)
    指定海難関係人

    損害
眞能丸…右舷側中央部から船尾部にかけてのいか釣り機破損、右舷船尾部外板凹損等
長福丸…右舷船首部を圧壊

    原因
長福丸…動静監視不十分、船員の常務(避航動作)不遵守

    主文
本件衝突は、第三長福丸が、動静監視不十分で、漂泊中の眞能丸を避けなかったことによって発生したものである。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年3月14日07時40分
沖縄北西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船眞能丸 漁船第三長福丸
総トン数 138トン 59.66トン
全長 35.45メートル
登録長 23.81メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 551キロワット 441キロワット
3 事実の経過
眞能丸は、船体中央部に操舵室を設けた一本釣り漁業等に従事する鋼製漁船で、A受審人ほか3人が乗り組み、ふぐすくい網漁を行う目的で、船首1.80メートル船尾3.40メートルの喫水をもって、平成9年2月25日08時00分博多港を発し、同月27日18時ごろ沖縄島北西方130海里ばかりの漁場に至って操業を開始した。
A受審人は、多数の同業船とともに連日の夜間操業を繰り返し、翌3月14日06時ごろ操業を終え、同業各船と3海里以上隔てるように移動したのち、濃霧が頻発していたので集魚灯の一部を点灯したまま、同時30分船首からパラシュート型シーアンカーを投入して漂泊した。
ところで、眞能丸が漂泊した海域は、一般船舶の通航がほとんどなく、当時、ふぐすくい網漁の好漁場となっており、日没から日出にかけての操業を終えた多数の同業船が散在し、いずれもパラシュート型シーアンカーを使用して漂泊していた。
漂泊後、A受審人は、船内の掃除等を行ったのち朝食を済ませ、夕刻からの操業に備えて乗組員を休養させ、自らも07時20分ごろから自室のベッドで休息していた。
眞能丸は、折からの南風で180度(真方位、以下同じ。)に向首して漂泊中、07時40分北緯27度31分東経125度37分の地点において、その右舷中央部に第三長福丸(以下「長福丸」という。)の船首が前方から40度の角度で衝突した。
当時、天候は曇で風力2の南風が吹き、海上は穏やかで、日出は06時40分であった。
また、長福丸は、船体中央部に操舵室を設けた一本釣り漁業等に従事するFRP製漁船で、B受審人ほか5人が乗り組み、ふぐすくい網漁を行う目的で、船首1.20メートル船尾3.00メートルの喫水をもって、同月4日12時00分長崎県三重式見港を発し、同月6日16時ごろ沖縄島北西方130海里ばかりの漁場に至り、夜間操業を繰り返し、ふぐ約8トンを獲たところで、集魚灯用の発電機が故障したので操業を打ち切って帰航することとし、同月14日07時00分北緯27度27分東経125度34分の地点を発進した。発進したとき、B受審人は、針路を040度に定め、機関を半速力前進にかけて7.0ノットの速力とし、自動操舵で進行し、そのころ6海里レンジとしたレーダーで船首方4.7海里に眞能丸を認め、まだ距離があったので操船を漁労長に行わせ、前部甲板に赴いて漁具の後片付け等を行ったのち、操舵室に戻り、見張りに当たって続航した。
07時31分半わずか前B受審人は、眞能丸を船首方1海里に視認し、同船が漂泊中であることを知ったが、いちべつしただけでそのままの針路で同船を替わせるものと思い、同船と衝突のおそれがあるかどうか判断できるよう、その動静監視を十分に行うことなく、漁労長とともに操舵室後方の船尾甲板に赴き、操舵室を無人としたまま、他の乗組員に行わせていた漁具の後片付け等を手伝った。
長福丸は、操舵室を無人とし、B受審人が眞能丸と衝突のおそれがある態勢で接近していたことに気付かないで、同船を避けることができないまま進行中、原針路、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、眞能丸は、右舷側中央部から船尾部にかけてのいか釣り機破損、右舷船尾部外板凹損等を生じ、長福丸は、右舷船首部を圧壊したが、のちいずれも修理された。

(原因)
本件衝突は、沖縄島北西方沖合の漁場において、操業を打ち切って帰航中の長福丸が、動静監視不十分で、夜間操業を終えて漂泊中の眞能丸を避けなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
B受審人は、沖縄島北西方沖合漁場において、操業を打ち切って長崎県三重式見港に向けて帰航中、船首方に眞能丸を視認し、同船が漂泊中であることを知った場合、同船と衝突のおそれがあるかどうか判断できるよう、その動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、いちべつしただけでそのままの針路で同船を替わせるものと思い、船尾甲板に赴いて他の乗組員に行わせていた漁具の後片付け等を手伝い、動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、同船と衝突のおそれがある態勢で接近していたことに気付かず、同船を避けることができないまま進行して衝突を招き、眞能丸の右舷側中央部から船尾部にかけてのいか釣り機破損、右舷船尾部外板凹損等を生じさせ、長福丸の右舷船首部を圧壊させるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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