1999年（平成１１年）

号	平成10年広審第86号
件名	プレジャーボートみすみIII遊漁船ドリーム号衝突事件
事件区分	衝突事件
言渡年月日	平成11年3月19日
審判庁区分	地方海難審判庁
	広島地方海難審判庁
	（横須賀勇一、釜谷獎一、織戸孝治）
理事官	田邉行夫
受審人	A　職名：みすみIII船長　海技免状：四級小型船舶操縦士 B　職名：ドリ−ム号船長　海技免状：四級小型船舶操縦士
指定海難関係人
損害	みすみ…右舷船首部外板に擦過傷 ド号…船首部外板に亀裂、釣り客1人が打撲傷
原因	清竜丸…見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因) ド号…見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

主文	本件衝突は、みすみIIIが、見張り不十分で、前路に漂泊中のドリーム号を避けなかったことによって発生したが、ドリーム号が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。 受審人Aを戒告する。 受審人Bを戒告する。
理由
	1　事件発生の年月日時刻及び場所 平成9年11月16日11時30分 瀬戸内海小豆島地蔵埼沖合 2　船舶の要目 船種船名 プレジャーボートみすみIII 遊漁船ドリーム号 全長 9.25メートル 8.28メートル 機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関 出力 132キロワット 47キロワット 3　事実の経過 みすみIII(以下｢みすみ｣という。)は、専らレジャーで釣りを行う、船体中央部のキャビン内に操舵席を有するFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、友人2人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.25メートル船尾0.60メートルの喫水をもって、平成9年11月16日08時ごろ岡山県岡山港を発し、香川県小豆島坂手湾の釣り場に向かった。 09時00分A受審人は、坂手湾の塩谷鼻沖に至り2時間ばかり釣りを行っていたが、不漁であったので、釣り場を変更することとし、その移動中に全員が昼食を済ますことにして、11時27分地蔵埼灯台から077度(真方位、以下同じ。)1,700メートルの地点で、針路を同灯台沖合に向け244度に定めて手動操舵とし、機関を半速力前進の12.5ノットの対地速力で進行したが、周辺海域には十数隻の遊漁船が散在し、移動するに当たっては、見張りを十分に行う必要がある海域であった。 定針したときA受審人は、ほぼ正船首1,150メートルにドリーム号(以下｢ド号｣という。)を視認し得る状況となり、その後同船と衝突のおそれのある態勢で接近したが、いちべつして前路に支障となる他船はいないものと思い、見張りを十分に行うことなく、キャビン内で相舵操船するかたわら、友人達と昼食の後かたづけを始め、ド号に気付かないまま続航した。 11時29分A受審人は、ド号がほぼ正船首390メートルに接近したが、食事の後かたづけに気を奪われ、依然、見張り不十分で、このことに気付かず、漂泊中のド号を避けないで進行中、みすみは、11時30分地蔵埼灯台から102度600メートルの地点において、原針路、原速力のまま、その右舷船首がド号の船首部に前方から25度の角度で衝突した。 当時、天候は晴で風力の東風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。 また、ド号は、船尾部に操舵室を備えた、有効な音響による信号設備を有しないFRP製遊漁船で、B受審人が1人で乗り組み、同日05時30分土圧町鹿島の柳を発し、近くのホテルに寄せて釣り客4人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.23メートル船尾1.10メートルの喫水をもって、小豆島地蔵埼沖合の釣り場に向かった。 B受審人は、07時ごろ釣り場に至り、船尾帆を展張し、潮上りを繰り返しながら遊漁を行っていたところ、予定していた帰港時刻が近づいていたので、11時27分地蔵埼灯台から102度600メートルの地点に至り、遊漁を終了し釣り糸を巻くため、機関を中立運転とし、船首を089度に向けて漂泊を開始した。 このときB受審人は、左舷船首25度1,150メートルに、自船に向首して接近するみすみを視認し得る状況にあり、その後衝突のおそれのある態勢で接近したが、釣り糸の巻き取りに気を奪われて見張りを十分に行うことなく、同船に気付かなかった。 11時29分B受審人は、みすみが同方位390メートルに接近したが、依然、見張り不十分で、このことに気付かず、機関を使用して移動するなど衝突を避けるための措置をとらないまま、同方向に向首して漂泊中、前示のとおり衝突した。 衝突の結果、みすみは右舷船首部外板に擦過傷を、ド号は、船首部外板に亀裂をそれぞれ生じ、釣り客の出水英生が打撲傷を負った。 (原因) 本件衝突は、遊漁船が多数いる小豆島地蔵埼東左沖合において、釣り場を移動するため南下中のみすみが、見張り不十分で、前路に漂泊するド号を避けなかったことによって発生したが、ド号が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。 (受審人の所為) A受審人は、遊漁船が多数いる地蔵埼東方沖合において、釣り場を移動するため南下する場合、前路に漂泊するド号を見落とすことのないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、いちべつして前路に支障となる他船はいないものと思い、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、ド号に気付かず、同船を避げることなく進行して衝突を招き、みすみの右舷船首部外板に擦過傷及びド号の船首部外板に亀裂を生じさせ、ド号の釣り客1人に打撲傷を負わせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。 B受審人は、地蔵埼東か沖合において、漂泊して釣り糸の巻き取りを行う場合、船首方から自船に向首接近するみすみを見落とすことのないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、釣り糸の巻き取りに気奪われて、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、みすみに気付かず、衝突を避けるための措置をとらないで衝突を招き、両船に前示の損傷及び自船の釣り客に打撲傷を負わせるに至った。 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。 よって主文のとおり裁決する。 参考図