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1999年(平成11年)

平成10年横審第91号
    件名
漁船大乗丸漁船漁勝丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年3月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

長浜義昭、半間俊士、川原田豊
    理事官
長谷川峯清

    受審人
A 職名:大乗丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:漁勝丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
大乗丸…船首部を圧壊
漁勝丸…左舷後部に破口を生じ、機関に濡れ損

    原因
大乗丸…見張り不十分、各種船間の航法(避航動作)不遵守(主因)
漁勝丸…警告信号不履行(一因)

    主文
本件衝突は、大乗丸が、見張り不十分で、漁撈に従事している漁勝丸の進路を避けなかったことによって発生したが、漁勝丸が、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年9月23日16時00分
渥美半島南方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船大乗丸 漁船漁勝丸
総トン数 11トン 9,8トン
全長 18.80メートル
登録長 15.73メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
漁船法馬力数 120 35
3 事実の経過
大乗丸は、小型底曳網(そこびきあみ)漁業に従事するFRP製の漁船で、操舵室内と後部甲板左舷側とに操舵装置及び主機操縦装置をそれぞれ備え、A受審人が単独で乗り組み、操業の目的で、船首0.4メートル船尾1.8メートルの喫水をもって、平成8年9月23日13時00分愛知県一色漁港を発し、渥美半島南方沖合の漁場に向かった。
A受審人は、15時00分赤羽港東防波堤灯台(以下「東防波堤灯台」という。)から086度(真方位、以下同じ。)4.1海里の地点に達したとき、1回目の曳(えい)網を開始し、針路を074度として手動操舵により、機関を回転数毎分1,500にかけ、5.0ノットの対地速力で曳網を続けた。
15時47分A受審人は、機関を回転数毎分1,400に減じ、その後機関を回転数毎分1,000ないし同600に減じたり、中立にするなど種々使用し、船首を074度に向けたまま1.0ノットの対地速力として後部甲板で揚網作業を行い、同時52分同作業を終え、続いて袋網を船尾檣(しょう)に吊り上げた状態で揺すったり、末端のファスナーを開いたままの袋網を再び海中に投じ短時間曳網したりして同網に掛かった海草を取り除く作業を行った。
A受審人は、15時57分東防波堤灯台から080度8.1海里の地点で、袋網を船尾檣に再び吊り揚げた状態で1回目の揚網を終え、約3海里東方の漁場へ移動することとし、針路を080度に定め、機関を回転数毎分1,500に上げ、12.0ノットの対地速力で進行したところ、右舷側に以前から認めていた曳網中の東進する2隻の漁船を確認したほかは、付近に他の漁船はいないものと思い、前路の見張りを十分に行わなかったことから、正船首わずか左0.7海里に法定の形象物を掲げて低速力で西進する、トロールにより漁撈(ろう)に従事中の漁勝丸を視認することができる状況であったが、これに気付かなかった。
A受審人は、その後漁勝丸と衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かないまま、増速するとすぐに後部甲板で漁獲物の選別を始め、同船の進路を避けずに続航中、16時00分東防波堤灯台から080度8.7海里の地点において、大乗丸は、原針路、原速力のまま、その船首部が、漁勝丸の左舷後部に、前方から40度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力5の北西風が吹き、潮候は下げ潮の初期で、視界は良好であった。
また、漁勝丸は、小型底曳網漁業に従事するFRP製の漁船で、B受審人ほか1人が乗り組み、操業の目的で、船首0.5メートル船尾1.9メートルの喫水をもって、同月22日15時00分愛知県形原漁港を発し、渥美半島南方沖合の漁場に向かった。
B受審人は、17時30分ごろ漁場に至って操業を繰り返し、翌23日15時25分東防波堤から079度10.1海里の地点において、8回目の曳網を開始し、針路を256度に定め、2.3ノットの対地速力とし、トロールにより漁撈に従事していることを示す黒色鼓(つつみ)型形象物を掲げ、手動操舵で行した。
B受審人は、15時52分右舷船首2度1.0海里に漁網を船尾檣に吊り揚げた状態でゆっくりと東進している大乗丸を初めて認め、やがて投網を開始するものと思い、その動静を監視しながら続航した。
B受審人は、15時57分東防波堤灯台から080度8.9海里の地点において、右舷船首4度0.7海里に接近した大乗丸が、投網しないまま増速し、衝突のおそれのある態勢で接近するのを認め、黄色回転灯を点灯したが、漁撈に従事中の自船を避けてくれるものと思い、警告信号を行うことなく進行した。
B受審人は、同じ針路、速力で続航し、16時00分少し前大乗丸の操舵室に誰もいないことに気付き、右舵10度として機関を回転数毎分1,500に上げ、同船を自船の後方にかわそうとしたが、及ばず、300度に向首し3.2ノットの対地速力で、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、大乗丸は、船首部を圧壊し、漁勝丸は左舷後部に破口を生じ、機関に濡れ損を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
本件衝突は、渥美半島南方沖合において、大乗丸が、揚網を終たえ漁場移動のため東航する際、見張り不十分で、トロールにより漁撈に従事する漁勝丸の進路を避けなかったことによって発生したが、漁勝丸が、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
A受審人は、渥美半島南方沖合において、揚網を漁場移動のため東航する場合、トロールにより漁撈に従事する漁勝丸を見落とさないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、右舷側に以前から認めていた曳網しながら東進する漁船2隻を確認したほかは、付近には他の漁船はいないものと思い、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、漁勝丸に気付かず、その進路を避けないまま進行して衝突を招き、自船の船首部を圧壊し、漁勝丸の左舷後部に破口等を生ずるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、渥美半島南方沖合において、揚網を終えた大乗丸が投網しないまま増速し、トロールにより漁撈に従事する自船の進路を避けずに、衝突のおそれのある態勢で接近するの認めた場合、警告信号を行うべき注意義務があった。しかし、同人は、黄色の回転灯を転じたので、そのうち避けるものと思い、警告信号を行わなかった職務上の過失により、同船との衝突を招き、両船が前示の損傷を生じるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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