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1999年(平成11年)

平成10年長審第65号
    件名
漁船第三正丸防波堤衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年3月24日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

原清澄、安部雅生、坂爪靖
    理事官
山田豊三郎

    受審人
A 職名:第三正丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船首部を大破、船長が右鎖骨骨折の負傷

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件防波堤衝突は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年5月2日06時50分
鹿児島県阿久根港
2 船舶の要目
船種船名 漁船第三正丸
総トン数 5.7トン
登録長 11.68メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 90
3 事実の経過
第三正丸(以下「正丸」という。)は、さし網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、きびなごを獲る目的で、船首0.50メートル船尾0.80メートルの喫水をもって、平成9年5月2日02時00分鹿児島県平良漁港を発し、同時15分同県薩摩郡上甑島中河原浦の漁場に至って操業を行い、漁獲物300キログラムを獲て操業を終え、同漁獲物水揚げのために05時35分同漁場を発して同県阿久根港に向かった。
ところで、A受審人は、平素、操船を行う際には椅子の上に立ち、操舵室の天窓から顔を出していたが、本件発生前には連日5日間夜間操業に従事したうえ、前日にはきびなごの漁獲量力少なく、いつもは休息をとっている夕刻時間帯に2時間ばかり素潜り漁を行ったため、疲労感があり、発進当初から操舵室の窓を全て閉め、椅子に腰掛けたまま操船にあたっていた。
05時50分A受審人は、縄瀬鼻灯台から335度(真方位、以下同じ。)500メートルの地点に達したとき、針路を066度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて20ノットの対地速力で進行し、06時35分ごろ阿久根港西防波堤灯台から246度5海里ばかりの地点に達したとき、急に疲労感が募ったうえ、海上は平穏で、前方には他船がいなかったことから気が緩み、眠気を催すようになったが、入港まであとわずかな時間であり、まさかそれまでは居眠りに陥ることはあるまいと思い、天窓から顔を出して外気に当たるなどの居眠り運航の防止措置をとることなく続航した。
06時41分A受審人は、自船が阿久根港西防波堤に3海里ばかりまで接近したのをレーダーで確認したものの、その後、間もなく居眠りに陥り、転針予定地点に達しても転針できないで、原針路、原速力のまま進行中、06時50分阿久根港西防波堤灯台から210度50メートルの阿久根港西防波堤西側の消波ブロックに衝突した。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮侯は下げ潮の中央期にあたり、視界は良好であった。
衝突の結果、船首部を大破したが、のち修理され、A受審人は、右鎖骨骨折の負傷をした。

(原因)
本件防波堤衝突は、鹿児島県薩摩郡上甑島の中河原浦から同県阿久根港に向けて航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同港内の防波堤に向首したまま、進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、鹿児島県薩摩郡上甑島の中河原浦から同県阿久根港に向けて航行中、疲労感と気の緩みから眠気を催す状況となった場合、居眠り運航とならないよう、操舵室の天窓から顔を出して操船するなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、入港するまであとわずかな時間であり、まさかそれまでは居眠りに陥ることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、椅子に腰掛けたまま居眠りに陥り、転針地点に達しても転針できずに進行して阿久根港西防波堤の消波ブロックとの衝突を招き、船首部を圧壊するなどの損傷を生じさせ、自らは右鎖骨骨折を負うに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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