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1999年(平成11年)

平成9年広審第100号
    件名
貨物船第八和丸漁船第3長久丸引船列衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年1月28日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

上野延之、杉崎忠志、織戸孝治
    理事官
向山裕則

    受審人
A 職名:第八和丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
B 職名:第3長久丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
和丸…損傷なし
長久丸…転覆して主機関に濡れ損並びに操舵室上部を損傷

    原因
和丸…見張り不十分、追い越しの航法(避航動作)不遵守(主因)
長久丸引船列…動静監視不十分、警告信号不履行(一因)

    主文
本件衝突は、第3長久丸引船列を追い越す第八和丸が、見張り不十分で、第3長久丸引船列の進路を避けなかったことによって発生したが、第3長久丸引船列が、動静監視不十分で、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。
受審人Aの三級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日事刻及び場所
平成8年12月17日14時00分
広島港
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第八和丸
総トン数 496トン
全長 68.05メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
船種船名 漁船第3長久丸 かき養殖筏
総トン数 7.14トン
登録長 11.26メートル
全長 25.0メートル
幅 10.0メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 70
3 事実の経過
第八和丸(以下「和丸」という。)は、専ら広島県高根島周辺と広島港との間の航海に従事する船尾船橋型鋼製の砂利採取運搬船で、A受審人ほか5人が乗り組み、海砂約1,190トンを積載し、船首尾とも4.61メートルの等喫水をもって、平成8年12月17日10時30分高根島東方沖の砂利採取海域を発し、広島港第3区の出島埋立地区に向かった。
A受審人は、出港操船から引き続いて船橋当直に就き、その後一等航海士と交替して食事のために降橋した以外は船橋当直に当たり、13時50分半屋形石灯標から131度(真方位、以下同じ。)1,250メートルの地点で、針路を323度に定め、機関を12.0ノットの全速力前進にかけ、自動操舵により進行した。
そのころA受審人は、左舷船首3度1.7海里に第3長久丸(以下「長久丸」という。)を初めて認め、13時54分半屋形石灯標から010度350メートルの地点に達したとき、長久丸が左舷船首3度1海里のところに接近し、著しく低速力で航行しており、その船尾から曳航索を延出してかき養殖筏(以下「かき筏」という。)を曳航し、同筏上の中央に赤旗を掲げて引船列となしているのを視認することができ、自船が同引船列に後方から衝突のおそれがある態勢で接近していることを認め得る状況であったが、底引き網漁に従事する漁船と思い、双眼鏡を有効に活用するなど長久丸及びその付近の状況に対する見張りを十分に行うことなく、同船の後方の曳航索及びかき筏に気付かず、同引船列の進路を避けないまま続航した。
14時00分少し前A受審人は、左舷船首3度130メートルに長久丸が接近したので、手動操舵に切り換えて同船の船尾を替わそうと少し左転したところ、同船とかき筏の間に向首進行することとなり、その後右舷船首至近の海面上に曳航索を認め、同索を推進器に巻き込まないよう、機関を中立にしたところ、14時00分屋形石灯標から329度1.3海里において、和丸は、303度を向いたとき、約11.0ノットの速力で、その船首が、長久丸引船列の曳航索に後方から約45度の角度で衝突した。
当時、天候は小雨で風力2の東北東風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
また、長久丸は、かき筏の曳航業務に従事しているFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、直径40ミリメートル長さ約90メートルの合成繊維製曳航索を2本繋いで船尾から延出し、中央に長さ1.2メートルの竹竿を立て、その上部に長さ1.2メートル幅1.0メートルの赤旗を取り付けたかき筏を連結し、長久丸の船尾からかき筏の後端までの距離が約191メートルの引船列としたうえ、かき筏を移動する目的で、船首0.2メートル船1.0メートルの喫水をもって、同日13時30分広島県峠島南東方沖を発し、同県似島北方沖のかき筏設置海域に向かった。
13時45分B受審人は、屋形石灯標から322度1,700メートルの地点で、針路を348度に定め、機関を全速力前進にかけ、1.5ノットの曳航速力で操舵に当たりながら進行した。
13時53分半B受審人は、屋形石灯標から325度1海里の地点に達したとき、右舷船尾28度1.1海里に和丸を初認し、同時54分半屋形石灯標から327度1.1海里の地点で、右舷船尾28度1海里に和丸が接近し、その後後方から衝突のおそれがある態勢で接近することを認め得る状況となったが、そのうち同船が避けるものと思い、動静監視を十分に行うことなく、これに気付かず、警告信号を行わないまま続航し、同時59分少し過ぎ右舷船尾28度300メートルのところに和丸を視認し、その後同船が左転をして自船とかき筏の間に向首進行するのを認め、機関を中立にして船尾の曳航索を放そうとしたが及ばず、長久丸引船列は、原針路、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、和丸は、損傷がなかったが、長久丸は、転覆して主機関に濡れ損並びに操舵室上部を損傷し、のち修理された。

(原因)
本件衝突は、広島湾において、長久丸引船列を追い越す和丸が、見張り不十分で、長久丸引船列の進路を避けなかったことによって発生したが、長久丸引船列が、動静監視不十分で、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
A受審人が、広島湾を北上中、前方著しく低速力で航行している他船を認めた場合、他の物件を曳航しているかどうか確認できるよう、双眼鏡を有効に活用するなど同船及びその付近の状況に対する見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、底引き網漁に従事する漁船と思い、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、左転をして長久丸とかき筏の間に向首進行して長久丸引船列の曳航索との衝突を招き、長久丸を転覆させて主機関に濡れ損及び操舵室上部に損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の三級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
B受審人が、広島湾を北上中、後方から接近する和丸を認めた場合、衝突のおそれの有無を確認できるよう、同船に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。
しかるに、同人は、そのうち同船が避けるものと思い、動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、警告信号を行わないまま同船との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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