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1999年(平成11年)

平成10年門審第70号
    件名
漁船松福丸漁船第三三栄丸衝突事件〔簡易〕

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年2月5日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

畑中美秀
    理事官
副理事官 蓮池力

    受審人
A 職名:松福丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:第三三栄丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
松福丸…船首球状部に小凹損
三栄丸…左舷中央部外板に破口、船長が腰部捻挫

    原因
松福丸…見張り不十分、各種船間の航法(避航動作)不遵守(主因)
三栄丸…見張り不十分、警告信号不履行(一因)

    主文
本件衝突は、松福丸が、見張り不十分で、漁労に従事していた第三三栄丸の進路を避けなかったことによって発生したが、第三三栄丸が、見張り不十分で、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年6月11日23時40分
日向灘
2 船舶の要目
船種船名 漁船松福丸 漁船第三三栄丸
総トン数 9.99トン 4.96トン
登録長 11.65メートル 9.70メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
漁船法馬力数 120 50
3 事実の経過
松福丸は、専ら日向灘沖合で船団の網船として中型旋(まき)網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか8人が乗り組み、船首0.8メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成9年6月11日21時30分僚船3隻とともに操業のため宮崎県島野浦漁港を発し、美々津錨地沖合の漁場に向かった。
A受審人は、出港後、乗組員全員に休息を与え、自分1人で操舵操船に従事し、23時30分美々津錨地沖合の予定の漁場に至り、レーダーを船位確認に便利な12海里レンジに設定のうえ、舵輪左舷横に備えられたソナーと魚群探知機を監視しながら、すでに到着していた僚船に倣(なら)って、50から60メートル等深線内の魚群探索を、往航時と同様に1人で始めることとした。
A受審人は、23時35分細島灯台から178度(真方位、以下同じ。)5.4海里の地点で、針路を200度に定めて手動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、8.0ノットの対地速力で漁群探索を始めたとき、右舷船首15度1,420メートルに緑・白・紅3灯のトロール従事船の法定灯火を表示して東進している第三三栄丸(以下、「三栄丸」という。)を視認することができる状況となったが、魚群探素に熱中し、たまに目を走らせるレーダー画面もレンジの距離範囲が大きすぎて同船の映像を捉(とら)えられず、次第に三栄丸に接近していたもののこれに気づかず、同船の進路を避けずに続航中、23時40分細島灯台から180度6海里の地点で、松福丸は、原針路・原速力のまま、その船首が三栄丸の左舷中央部に前方から70度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、海上は平穏で、視界は良好であった。
また、三栄丸は、専ら宮崎県延岡及び日向両市の沖合で小型底引き網漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、船首0.4メートル船尾1.3メートルの喫水をもって、鱧(はも)漁の目的で、同日18時00分門川漁港を発し、細島灯台南方沖合の漁場に向かった。
B受審人は、19時00分細島灯台の南方2海里沖合の漁場に到達したのち、マストの頂部に緑全周灯、その下に白全周灯のほか紅緑各舷灯及び船尾灯のトロール従事船の法定灯火を表示し、南に向かって第1回目の操業を済まし、23時00分第2回目の操業のため東に向かって投網を開始し、23時05分細島灯台から194度6.2海里の地点に達したとき、投網を終えたので、針路を090度に定め、機関を半速力に絞って、2.6ノットの曳網速力で、高さ1メートルの台に腰掛けて自動操舵により進行した。
23時35分B受審人は、左舷船首55度1,420メートルに白・緑2灯を表示して南下している松福丸を視認することができる状況となったが、漁網の状態と魚群探索に気をとられ、見張りが不十分で松福丸に気づかず、その後も同船は避航の気配を示さないまま次第に接近するも、警告信号を吹鳴することなく続航中、原針路・原速力のまま前示のとおり衝突した。
衝突の結果、松福丸は船首球状部に小凹損を生じ、三栄丸は左舷中央部外板に破口が生じたが、のち松福丸の僚船に横抱えにされて門川漁港に引きつけられて修理され、B受審人が衝突時の衝撃で腰部捻挫を負った。

(原因)
本件衝突は、夜間、日向灘において、魚群探索中の松福丸が、見張り不十分で、トロール従事船の法定の灯火を表示して曳網作業に従事していた三栄丸の進路を避けなかったことによって発生したが、三栄丸が、見張り不十分で、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、漁場において1人で漁群探索に従事する場合、前方で漁労に従事している他船を見落とすことのないよう、前方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は、ソナー及び魚群探知機による魚群探索に熱中し、前方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、法定の灯火を表示して曵網作業に従事していた三栄丸に気づかないまま進行して衝突を招き、松福丸は船首球状部に小凹損を、三栄丸は左舷中央部外板に破口をそれぞれ生じさせ、B受審人に腰部捻挫を負わせるに至った。
B審人は、夜間、曳網作業に従事する場合、接近する他船を見落とすことのないよう周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は、曳網中の漁網の状態や魚群探索に気をとられ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、自船に接近する松福丸に気づかず、警告信号を行わないまま進行して衝突を招き、前示の損傷及び負傷を生じさせるに至った。

参考図






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