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1999年(平成11年)

平成10年門審第103号
    件名
漁船照丸プレジャーボート光代丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年7月29日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

供田仁男、阿部能正、西山烝一
    理事官
喜多保

    受審人
A 職名:照丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:光代丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
照丸…船首外板の塗料に剥離
光代丸…右舷側中央部舷縁を破損、操縦スタンドが到壊、のち転覆して廃船処理、同乗者一人が約2箇月の入院とその後の通院加療を要する肋骨骨折、脳挫創及び肺挫傷

    原因
照丸…見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
光代丸…見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、照丸が見張り不十分で、錨泊中の光代丸を避けなかったことによって発生したが光代丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年2月7日16時15分
宮崎県油津港北東方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船照丸 プレジャーボート光代丸
総トン数 1.0トン
全長 7.70メートル 7.10メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 30キロワット 36キロワット
3 事実の経過
照丸は、船体の中央部に操舵室を有し、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、ぶり漁の目的で、船首0.38メートル船尾0.76メートルの喫水をもって、平成10年2月7日06時00分宮崎県目井南漁港を発し、同漁港北東方8海里の地点に至って操業を行い、30キログラムの漁獲を得たのち、16時00分同地点を発進して帰途に就いた。
16時11分半A受審人は、裸碆灯台から(真方位、以下同じ。)3.8海里の地点において、針路を229度に定め、機関を全速力前進にかけて13.5ノットの対地速力で油津港北東方沖合を南下し始め、同時13分少し前針路を214度に転じ、操舵室内で舵輪の後方に立ち、手動で操舵にあたった。
転針したときA受審人は、正船首900メートルに右舷側を見せた光代丸を視認でき、同船が錨泊中であることを表示する形象物を掲げていなかったものの、船首を風上に向けて全く移動していないことなどから錨泊していることが分かり、その後衝突のおそれがある態勢で同船に接近するのを認め得る状況となった。
しかし、A受審人は、南下を開始する前に通過した釣り場であまり釣り船を見かけなかったことから今日は船かいないのだろうと思い、見張りを十分に行っていなかったので、光代丸に気付かず、同船を避けることなく、折から窓越しに差し込む西日にしばしば顔を背けて進行中、16時15分裸碆灯台から045度3.0海里の地点において、軌は、原針路、原速力のまま、その船首力が光代丸の右舷側中央部に後方から75度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力1の西風が吹き、視界は良好であった。
また、光代丸は、船体の中央部に操縦スタンドを有する船外機付きFRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、友人2人を同乗させ、魚釣りの目的で、船首0.38メートル船尾0.40メートルの喫水をもって、同日09時00分油津港を発し、同港北東方沖合の釣り場に向かった。
B受審人は、09時20分すでに釣り船が集まっている釣り場に着き、10時00分水深42メートルの前示衝突地点で船首から錨を投じ、錨索を120メートル延出して錨泊し、機関を直ちに始動することができる状態で、錨泊中であることを表示する形象物を掲げないまま魚釣りを開始した。
B受審人は、右舷船尾部の甲板上に腰を下ろして船尾方を向き、船首部甲板上及び左舷船尾部甲板止の同乗者ともども船外に釣り竿を出し、やがて夕方近くになるにつれ、帰港する船が頻繁に付近を通りかかるなかで漁釣りを続けた。
16時13分少し前B受審人は、折からの西風により船首が289度を向いていたとき、右舷船尾75度900メートルに正面を見せた照丸を視認でき、その後同船が衝突のおそれがある態勢で接近するのを認め得る状況となった。
しかし、B受審人は、魚釣りに熱中し、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、照丸に気付かず、同船が避航せずに更に接近しても機関を始動して移動するなど衝突を避けるための措置をとることなく錨泊を続け、16時15分わずか前機関音を聞いて右舷側50メートルに迫った同船を初めて認め、船尾部の同乗者と共に立ち上がって両手を振り大声で叫ぶうち、光代丸は、289度に向首して前示のとおり衝突した。
衝突の結果、照丸は船首外板の塗料に剥離を生じ、光代丸は右舷側中央部舷縁を破損したほか、操縦スタンドが倒壊し、照丸に曳航されるうちに転覆して廃船処理され、同乗者Cが約2箇月の入院とその後の通院加療を要する肋骨骨折、脳挫創及び肺挫傷を負った。

(原因)
本件衝突は、油津港北東方沖合において、南下中の照丸が、見張り不十分で、前路で錨泊している光代丸を避けなかったことによって発生したが、光代丸が見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
A受審人は、漁場からの帰途、油津港北東方沖合を南下する場合、前路に存在する他船を見落とすことのないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、南下を開始する前に通過した釣り場であまり釣り船を見かけなかったことから今日は船がいないのだろうと思い、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路で錨泊している光代丸に気付かず、これを避けることなく進行して衝突を招き、照丸の船首外板に塗料の剥離を生じさせ、光代丸の右舷側中央部舷縁を破損させたほか、操縦スタンドを倒壊させ、同船の同乗者の1人に肋骨骨折、脳挫創及び肺挫傷を負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、油津港北東方沖合の釣り場で錨泊する場合、帰港する船が頻繁に付近を通りかかっていたから、自船に向けて来航する他船を見落とすことのないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、魚釣りに熱中し、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、接近する照丸に気付かず、衝突を避けるための措置をとることなく錨泊を続けて衝突を招き、前示のとおり両船に損傷を生じさせ、自船の同乗者を負傷させるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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