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1999年(平成11年)

平成10年仙審第48号
    件名
旅客船ニューはまなす漁船眞能丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年3月16日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

高橋昭雄、供田仁男、今泉豊光
    理事官
上中拓治、黒田均

    受審人
A 職名:ニューはまなす船長 海技免状:一級海技士(航海)
C 職名:眞能丸船長 海技免状:三級海技士(航海)(旧就業範囲)
    指定海難関係人

    損害
ニューはまなす…左舷側外板中央部に亀裂を伴う凹損
眞能丸…船首部を圧壊

    原因
眞能丸…居眠り運航防止措置不十分、船員の常務(避航動作)不遵守

    主文
本件衝突は、眞能丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、錨泊中のニューはまなすを避けなかったことによって発生したものである。
受審人Cを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年6月16日01時20分
新潟県新潟港
2 船舶の要目
船種船名 旅客船ニューはまなす 漁船眞能丸
総トン数 17,304トン 138トン
登録長 177.45メートル 29.62メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 21,844キロワット 551キロワット
3 事実の経過
ニューはまなすは、新潟港と北海道小樽港間に定期就航する船首船橋型旅客船で、A受審人及びB指定海難関係人ほか25人が乗り組み、空倉のまま、船首6.1メートル船尾6.6メートルの喫水をもって、次航起こしの時間調整の目的で、平成9年6月15日17時40分新潟港を発し、18時15分新潟港西区西突堤灯台(以下「西突堤灯台」という。)から260度(真方位、以下同じ。)1.8海里の地点に至り、錨泊中の他船から南西方0.5海里離して左舷錨を投じ錨鎖8節を延出して錨泊した。
A受審人は、翌16日の23時50分発下り便としての出航に備えて同日夕方着岸する予定で甲板手1人による単独3時間4直制の錨泊当直を採り、当時海上が平穏状態であったものの、錨泊地か汐海に面した陸岸に近いところであったことから走錨に留意して、錨泊当直者に対して毎秒18メートル以上の風速を観測した際の報告のほか船橋に掲示した錨泊当直の心得を遵守するよう指示した。その後、19時00分少し前天気予報等の情報を得るために昇橋し、その際、錨泊中掲示する灯火のほか甲板周り及び通路などに多数の照明灯が点灯されたことを確かめ、その後船尾乗組員食堂に退いてテレビを見ていた。
こうして、23時40分ごろB指定海難関係人は、当直交替20分前の連絡を受け、同時55分昇橋して前直者から強風、走錨及び他船の移動模様などの当直中の注意事項の引継ぎを受けて当直に就いた。
B指定海難関係人は、主に他船の走錨などによる異常接近の早期発見のため15分ごとにレーダーによる見張りを励行し、付近の錨船と相対位置関係を監視しながら当直を続けた。
ところが、翌16日01時19分B指定海難関係人は、左舷側船橋ウイングに出たとき、エンジン音を聞いて見回したところ、同舷船尾方300メートルに眞能丸の灯火を視認し、更に同船が自船に向首したまま接近する状況であることを認め、とっさに同船が居眠りに陥って自船に向首していることに気付かないまま接近しているものと直感し、衝突の危険を感じて急いで船橋内に戻り汽笛による長音2回を吹鳴したが効なく、1時20分前錨泊地点において、ニューはまなすが000度に向首していたとき、同船の左舷側中央部に眞能丸の船首が、後方から70度の角度で衝突した。
当時、天候は曇で風力2の北北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で視界が良好であった。
また、眞能丸は、いか一本釣り漁業に従事する鋼製漁船で、C受審人ほか4人が乗り組み、先月来新潟県沖合で毎週火曜日及び土曜日の協定休日を除き日帰り操業を繰り返していたところ、操業の目的で、船首1.8メートル船尾3.4メートルの喫水をもって、同月15日13時新潟港西区を発し、佐渡島南端から西方12海里沖合の漁場に向かった。
19時ごろC受審人は、漁場に至って操業を開始したが、その後、甲板員が魚倉内で作業中に誤って転倒した際に頭部を強打し、無線電話による医療指導を受けたものの、受傷箇所が頭部であったことから大事をとり操業をやめて直ちに引き返すことにした。
こうして、20時00分C受審人は、漁場を発して帰途に就き、21時40分小木港防波堤灯台から149度4.2海里の地点で、針路を新潟港に向首する070度に定め、機関を全速力前進にかけ9.7ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
C受審人は、時折操業中の小型漁船を避けながらほぼ同じ針路で続航中、翌16日00時56分新潟港の防波堤から6海里のところに達したとき、ほぼ正船首3.8海里にニューはまなすのレーダー映像を認め、更に錨泊中の同船の多数の明るい灯火を初めて視認し、同船を1海里に接近してから避けるつもりで続航した。
その後、C受審人は、他船と出会うこともほとんどなかったので、いすに腰掛けたままの姿勢で当直にあたり、受傷した甲板員を病院に搬送することについてなど考えながらも操業時のような緊張した気分にはなれないまま、適宜立直したり外気に触れたりして気を引き締めて当直にあたることなく、いすに腰掛けたままの姿勢で当直を続けているうちに居眠りに陥り、その後ニューはまなすに向いたまま衝突のおそれがある態勢で接近していたが、これに気付かなかったばかりか、同船が吹鳴した汽笛信号にも気付かず、同船を避けないまま進行し、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、ニューはまなすは左舷側外板中央部に亀裂を伴う凹損を生じ、眞能丸は船首部を圧壊したが、のちいずれも修理された。

(原因)
本件衝突は、眞能丸が居眠り運航の防止措置が不十分で、船橋当直者がいすに腰掛けた姿勢で緊張を欠いた状態のまま当直を続けているうちに居眠りに陥り、錨泊中のニューはまなすを避けなかったことによって発生したものである。

(受審人等の所為)
C受審人は、佐渡島南西方沖合で操業開始直後頭部を強打した乗組員を大事をとって病院に搬送のために帰航する際、往航に引き続き単独で当直にあたる場合、いすに腰掛けたままの姿勢で連続して単調な当直を続けていると居眠り運航に陥りやすいから、適宜立直したり外気に触れたりして気を引き締めて当直にあたるなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかし、同人は、予定の操業を断念しての帰航中で、受傷した甲板員を病院に搬送することについてなど考えながらも操業時のような緊張した気分になれず、適宜立直したり外気に触れたりして気を引き締めて当直にあたるなどの居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により、前路に錨泊中のニューはまなすを視認しながらも緊張を欠いた状態のまま当直を続けているうちに居眠りに陥り、同船を避けないまま進行して衝突を招き、ニューはまなすの左舷側外板中央部に亀裂を伴う凹損を生じさせ、また眞能丸の船首部を圧壊させるに至った。
以上のC受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。
B指定海難関係人の所為は、本件発生の原因とならない。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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