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1999年(平成11年)

平成11年函審第22号
    件名
漁船第二十八宮島丸漁船第三十六興松丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年8月4日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

大石義朗、大山繁樹、古川隆一
    理事官
熊谷孝徳

    受審人
A 職名:第二十八宮島丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
B 職名:第三十六興松丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(履歴限定)
    指定海難関係人

    損害
宮島丸…船首部両舷外板に凹損
興松丸…船首部左舷側外板凹損、同部ハンドレール曲損、シーアンカー揚収用ローラー破損

    原因
宮島丸…動静監視不十分、行き会いの航法(右側通行)不遵守
興松丸…行き会いの航法(右側通行)不遵守

    主文
本件衝突は、第二十八宮島丸が、動静監視不十分で、ほとんど真向かいに行き会う第三十六興松丸に対し、針路を右に転じなかったことと、第三十六興松丸が、針路を右に転じなかったこととによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成7年7月27日09時00分
北海道襟裳岬西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船第二十八宮島丸 漁船第三十六興松丸
総トン数 138トン 138トン
登録長 29.70メートル 28.81メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 514キロワット 426キロワット
3 事実の経過
第二十八宮島丸(以下「宮島丸」という。)は、いか一本つり漁業に従事する鋼製漁船で、A受審人ほか6人が乗り組み、船首1.6メートル船尾3.5メートルの喫水をもって、平成7年6月29日朝青森県八戸港を発し、同日夕刻襟裳岬の西方沖合の漁場に至り操業を開始し、その後同漁場において操業を続けた。
A受審人は、こえて7月27日05時00北海道浦河港南方沖合13海里ばかりの漁場に移動して操業を再開したが、漁模様が良くなかったので南方の漁場に移動することとし、08時00分浦河灯台から179度(真方位、以下同じ。)8.7海里の地点で、針路を180度に定め、機関を微速力前進にかけ、20ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
A受審人は、定針したときから1人で船橋当直に当たり、操舵室の左舷側に立ち、魚群探知器を監視しながら南下し、08時53分浦河灯台から179度10.4海里の地点に達したとき、4海里レンジとしたレーダーにより正船首0.6海里に第三十六興松丸(以下「興松丸」という。)の映像を認め、顔を上げてその船体を初認し、その後同船が、ほとんど真向かいに行き会い、衝突のおそれがある態勢で接近する状況となったが、一見しただけで衝突のおそれはないものと思い、衝突のおそれの有無を判断できるよう、その動静を十分に監視することなく、同船から目を離し、魚群探知器の監視に気をとられていたので衝突のおそれのあることに気付かず、興松丸の左舷側を通過することができるよう、針路を右に転じないまま進行中、09時00分少し前、船首至近に迫った同船を再び認め、あわてて機関を全速力後進にかけたものの、間に合わず、09時00分浦河灯台から179度10.7海里の地点において、宮島丸の船首が、原針路、原速力のまま、興松丸の左舷側船首に前方から10度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力1の北西風が吹き、潮候はほぼ低潮時であった。
また、興松丸は、いか一本つり漁業に従事する鋼製漁船で、B受審人ほか4人が乗り組み、船首1.7メートル船尾3.6メートルの喫水をもって、平成7年7月22日04時00分青森県八戸港を発し、同日夕刻浦河港の南方沖合の漁場に至り操業を開始し、その後同漁場において操業を続けた。
B受審人は、同月27日05時00分浦河港南方13海里ばかりの漁場に移動して操業を再開したが、漁模様が良くなかったのでさらに北方の漁場に移動することにし、08時30分浦河灯台から179度12.2海里の地点に達したとき、針路を360度に定め、機関を微速力前進にかけ、3.0ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
B受審人は、定針したときから1人で船橋当直に当たり、操舵室の左舷側に立って魚群探知器を監視しながら北上し、08時56分半浦河灯台から179度10.9海里の地点に達したとき、正船首0.3海里にレーダーで宮島丸の映像を認め、顔を上げてその船体を初認し、同船とほとんど真向かいに行き会い、衝突のおそれがある態勢で接近する状況であることを知った。しかし、同人は、もう少し接近してから右転しても間に合うものと思い、その後時折同船を見ながら魚群探知器の監視を続け、宮島丸の左舷側を通過できるよう、速やかに針路を右に転ずることなく続航し、08時59分少し過ぎ正船首110メートルに接近した同船を見て危険を感じ、あわてて汽笛により短音を数回吹鳴し、同時59分半、機関を全速力後進にかけたものの、間に合わず、船首が10度右転し、行きあしがほとんど停止したとき、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、宮島丸は、船首部両舷外板に凹損を生じ、興松丸は、船首部左舷側外板凹損、同部ハンドレール曲損、シーアンカー揚収用ローラー破損などの損傷を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
本件衝突は、北海道襟裳岬西方沖合において、両船が漁場移動のため航行中、ほとんど真向かいに行き会い、衝突のおそれがある際、南下する宮島丸が、動静監視不十分で、興松丸の左舷側を通過することができるよう、針路を右に転じなかったことと、北上する興松丸が、宮島丸の左舷側を通過することができるよう、針路を右に転じなかったこととによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、北海道襟裳岬西方沖合において、漁場移動のため南下中、ほぼ正船首にほとんど真向か行き会う態勢で接近する興松丸を認めた場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、その動静を十分に監視すべき注意義務があった。ところ同人は、同船を一見して衝突のおそれはないものと思い、魚群探知器の監視に気をとられ、その動静を十分に監視しなかった職務上の過失により、針路を右に転じずに進行して同船との衝突を招き、宮島丸の船首部両舷外板に凹損を生じ、興松丸の船首部左舷傾外板凹損、同部ハンドレール曲損、シーアンカー揚収用ローラー破損などの損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、北海道襟裳岬西方沖合において、漁場移動のため北上中、ほぼ正船首にほとんど真向かいに行き会う態勢で接近する宮島丸を認めた場合、衝突のおそれがあったから、同船の左舷側を通過することができるよう、速やかに針路を右に転ずべき注意義務があった。ところが同人は、もう少し接近してから右転しても間に合うものと思い、魚群探知器の監視を続け、同船の左舷側を通過することができるよう、速やかに針路を右に転じなかった職務上の過失により、同船との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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