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1999年(平成11年)

平成10年広審第62号
    件名
プレジャーボート千代丸灯浮標衝突事件〔簡易〕

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年3月9日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

黒岩貢
    理事官
副理事官 尾崎安則

    受審人
A 職名:千代丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
千代丸…船首部が圧壊、船長が左鎖骨及び左第3肋骨々折等の6週間の加療を要する負傷、同乗者1人が右鎖骨及び右第5、6肋骨々折並びに血胸等の約4週間の入院加療を要する負傷、同1人が右肘部及び右肩甲部打撲の約5日間の安静、経過観察を要する負傷
第1号灯浮標…浮体部の凹損及びレンズの損傷等

    原因
見張り不十分

    主文
本件灯浮標衝突は、見張りが十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年8月22日19時25分
徳山下松港
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート千代丸
登録長 9.94メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 198キロワット
3 事実の経過
千代丸は、FRP製のプレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、友人2人を乗せ、魚釣りの目的で、船首0.2メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成9年8月22日12時00分徳山下松港内新南陽市野村地区の船だまりを発し、大分県姫島東方5海里ばかりの地点で魚釣りをしたのち、18時40分ごろ姫島灯台から090度(真方位、以下同じ。)47海里の地点を発進し、航行中の動力船の灯火を表示して帰途に就いた。
発進後A受審人は、操舵室内右舷側の操縦席に座って操舵操船に従事し、友人2人を同室内左舷側及び同後方にそれぞれ座らせて北上し、19時17分岩島灯台を左舷側400メートルに航過して徳山湾内に入り、同時19分同灯台から035度1,400メートルの地点に達し、徳山下松港粭島(すくもしま)北方灯浮標を右舷側100メートルに並航したとき、針路を徳山第1号灯浮標(以下「第1号灯浮標」という。)の灯光に向く020度に定め、機関を全速力より少し減じ、21.5ノットの対地速力で手動操舵として進行した。
定針後A受審人は、船首遠方に広がる株式会社トクヤマの工場の多数の照明灯が目に入ったことから、翌日予定していた同工場での仕事のことが気になり始め、船首目標である第1号灯浮標の灯光から目を逸らし、同工場の明かりを眺めて考え事をしながら続航した。
19時24分少し過ぎA受審人は、徳山沖ノ筏灯台から197度1.6海里の地点に至り、正船首方向の第1号灯浮標まで500メートルに接近したが、依然、翌日の仕事が気になって考え事をしていたため、前路の見張りを十分に行うことなく、このことに気付かず、同灯浮標を避けないまま進行中、19時25分千代丸は、原針路、原速力のまま、徳山沖ノ筏灯台から196度1.3海里の地点において、第1号灯浮標に衝突した。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候はほぼ低潮時であった。
衝突の結果、千代丸は船首部が圧壊し、第1号灯浮標は浮体部の凹損及びレンズの損傷等を生じたが、のちいずれも修理され、A受審人が左鎖骨及び左第3肋骨々折等の6週間の加療を要する負傷を、同乗者Bが右鎖骨及び右第5、6肋骨々折並びに血胸等の約4週間の入院加療を要する負傷を、同Cが右肘部及び右肩甲部打撲の約5日間の安静、経過観察を要する負傷をそれぞれ負った。

(原因)
本件灯浮標衝突は、夜間、徳山下松港内を航行中、見張り不十分で、船首目標灯浮標を避けなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、徳山下松港内を船首目標である第1号灯浮標の灯光に向け航行する場合、同灯浮標と衝突することがないよう、前方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに同人は、翌日の仕事が気になって、前方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、同灯浮標避けることなく進行して衝突を招き、千代丸の船首部圧壊並びに第1号灯浮標浮体部の凹損及びレンズの損傷をそれぞれ生じさせ、同乗者2人に鎖骨及び肋骨の骨折並びに打撲等をそれぞれ負わせ、自らも鎖骨及び肋骨の骨折等を負うに至った。






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