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1999年(平成11年)

平成10年広審第111号
    件名
プレジャーボートエリカ桟橋衝突事件〔簡易〕

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年3月24日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

釜谷獎一
    理事官
副理事官 尾崎安則

    受審人
A 職名:エリカ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
桟橋は軽微な損傷、エリカは船首部を破損、のち廃船、船長が顔面に裂傷

    原因
針路保持不適切

    主文
本件桟橋衝突は、保針が不適切であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年4月22日17時05分
瀬戸内海安芸灘
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートエリカ
全長 7.34メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 84キロワット
3 事実の経過
エリカは、広島県竹原港を基地として、その南側約4海里に隣接する同県大崎上島、及び愛媛県大三島付近での海域で魚釣り等に従事するFRP製のプレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、友人4人を乗せ、大崎上島北東端にある鮴崎に寄せ、ここで上陸して昼食をとる目的で、船首0.6メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、平成10年4月22日09時15分竹原港竹原外港防波堤灯台(以下「外港防波堤灯台」という。)から358度(真方位、以下同じ。)1,150メートルの、同港本川河口右岸係船地を発し、鮴崎に向かった。
A受審人は、途中、適宜付近海域で漁釣りを行い、11時ごろ折からの降雨で釣りを中止した後は、鮴崎に上陸して昼食、歓談を終え16時30分ごろ帰途についた。
ところで、竹原港は、南北方向に約1,100メートル東西方向に約180メートルの幅をもつ、ほぼ長方形状をした港で、その南端には東南東方に向け名神ノ波止の防波堤が延び、その東端こは外港防波堤灯台が設置されており、同港への入出航船は外港防波堤灯台とその東側陸岸との可航幅が約140メートルの水路を航行していた。
また、同港の港奥付近は、西側の新浜岸壁の北端から東北東方に向け岸線がほぼ直線状に約130メートル延び、ここから北方に向け屈曲し、東側の対岸との間に挟まれた水域脚幅約25メートルの本川となって河口から北方に向け延びており、エリカの係船地は本川の右岸河口にあって、西側の前示線状の岸線屈曲点から西南西方約35メートルのところには、南方に向けて約75メートルの地点まで、周囲がコンクリート鉄骨製の竹原港兼営内港桟橋(以下「桟橋」という。)が設置されていた。
こうして、A受審人は、16時58分外港防波堤灯台を航過し、明神ノ波止で友人3人を下船させた後、再度対岸の、外港防波堤灯台から019度600メートルの北埼フェリー桟橋に向かい、ここで友人1人を下船させ、17時02分同桟橋を離れて係船地に向かった。
17時04分少し前A受審人は、外港防波堤灯台から358度650メートルの地点に達したとき、錨を自船の係船地に向首する356度に定めて手動操舵とし機関を10.0ノットの半速力前進にかけて同港離東岸にほぼ平行した状態で進行した。
定針後A受審人は、本川左岸方を眺めながら、自らが工場長を務める工場の閉鎖に伴う従業員の配置転換のことなどを考えて続航中、間もなく、本川右岸付近の桟橋の南端こ差し掛かり、本川左岸河口との狭い水路を航行することになったが、自船は直進して係船地に向かっているものと思い、針路の保針を適切に行うことなく進行し、17時05分少し前外港防波堤灯台から358度960メートルの地点に達したとき、保針が不十分となって、同桟橋南端に向け航行する状況になったものの、このことに気ずかず続航中、ふと前方を見たとき至近に迫った桟橋を認め、あわてて機関を後進にかけたが及ばず、17時05分エリカは、外港防波堤灯台から356度1,020メートルの、桟橋南東端に329度を向首したときほぼ原速力のまま衝突した。
当時、天候曇で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の末期で、日没は18時46分であった。
衝突の結果、桟橋に軽微な損傷を、エリカ船首部を破損し、のち廃船となり、A受審人は顔面に裂傷を負った。

(原因)
本件桟橋衝突は、竹原港港奥の本川右岸にある係船地に向け北上中、本川左岸河口と本川右岸付近にある桟橋とに挟まれた狭い水路を航行することになった際、針路の保針が不適切となり、同桟橋に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、竹原港港奥の本川右岸にある係船地に向け北上中、本川左岸河口と本川右岸付近にある桟橋とに挟まれた狭い水路を航行する場合、桟橋に向け偏位することのないよう、針路の保針を適切に行うべき注意義務があった。しかるに同人は、本川左岸方を眺めながら思案し、自船は直進して係船地に向かっているものと思い、針路の保針を適切に行わなかった職務上の過失により、桟橋に向首進行させ、桟橋に軽微な損傷を、エリカの船首部に破損を生じさせ、自らも顔面に裂傷を負うに至った。






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