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1999年(平成11年)

平成11年函審第20号
    件名
漁船第十七福長丸定置網衝突事件〔簡易〕

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年6月16日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

大石義朗
    理事官
副理事官 堀川康基

    受審人
A 職名:第十七福長丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
本船…主機クラッチに損傷
定置網…掛綱が切損、固定用の土俵が損傷

    原因
船位確認不十分

    主文
本件定置網衝突は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年10月26日02時00分
北海道厚岸湾東方沿岸
2 船舶の要目
船種船名 漁船第十七福長丸
総トン数 19トン
全長 21.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 190
3 事実の経過
第十七福長丸(以下「福長丸」という。)は、FRP製漁船で、A受審人ほか7人が乗り組み、さんま棒受網資材補給の目的をもって、空船のまま、船首1.5メートル船尾3.0メートルの喫水で、平成9年10月25日10時30分北海道網走港を発し、厚岸港に向かった。
ところで、落石岬と厚岸湾入口東方の散布(ちりっぷ)埼沖合には数個の定置網が設置されており、A受審人は、この海域を数回航海した経験があったので、これらの定置網の南端が陸岸から2海里ばかり沖合に出ていることを知っていた。
発航後、A受審人は、1人で当直に就き、根室海峡及び珸瑶瑁(ごようまい)を通過したのち花咲港沖合を西行し、同日23時30分落石岬灯台から202度(真方位、以下同じ。)2.4海里の地点に達したとき針路を散布埼の南方約7海里に向く235度に定め、機関を全速力前進にかけ、折からの北西方に流れる潮流及び南東風により12度ばかり右方に圧流されながら、10.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
A受審人は、翌26日01時30分厚岸灯台から073度10.0海里の地点に達したとき、散布埼沖合の定置網の南端に向かって圧流される状況であったが、同埼を十分離す針路に定めているから大丈夫と思い、レーダーを活用するなどして船位の確認を行わなかったので、同定置網の南端に向かって圧流されていることに気付かないまま続航中、02時00分厚岸灯台から078度5.0海里の地点において同定置網の南端に衝突し、その掛綱が推進器に絡まって主機が停止した。
当時、天候は晴で風力4の南東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
衝突の結果、福長丸は主機クラッチに損傷を生じて僚船により厚岸港に曳航されへ定置網は掛綱が切損し、定置網固定用の土俵が損傷したが、のち、いずれも修理された。

(原因)
本件定置網衝突は、夜間、落石岬沖合から厚岸港に向け航行中、船位の確認が不十分で、厚岸湾東方の散布埼沖合に設置されている定置網に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、落石岬沖合から厚岸港に向け航行する場合、厚岸湾東方の散布埼沖合には定置網が設置されていることを知っていたのであるから、定置網と衝突することのないよう、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、散布埼を十分離す針路に定めているから大丈夫と思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、散布埼沖合の定置網南端に圧流されていることに気付かないまま進行して同定置網との衝突を招き、自船の主機クラッチに損傷を生じさせ、同定置網の掛綱を切損させ、定置網固定用の土俵を損傷させるに至った。






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