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1999年(平成11年)

平成11年函審第12号
    件名
漁船豊成丸プレジャーボート第八光恵丸衝突事件〔簡易〕

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年4月26日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

大石義朗
    理事官
副理事官 堀川康基

    受審人
A 職名:豊成丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:第八光恵丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
豊成丸…船首部船底外板に凹損
光恵丸…右舷船尾外板に亀裂、船底中央部外板に破口

    原因
豊成丸…見張り不十分、追い越しの航法(避航動作)不遵守(主因)
光恵丸…動静監視不十分、警告信号不履行(一因)

    主文
本件衝突は、第八光恵丸を追い越す豊成丸が、見張り不十分で、その進路を避けなかったことによって発生したが、第八光恵丸が、動静監視不十分で、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年8月1日12時10分
北海道網走港
2 船舶の要目
船種船名 漁船豊成丸 プレジャーボート第八光恵丸
総トン数 14トン
全長 18.50メートル
登録長 9.09メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 95キロワット
漁船法馬力数 160
3 事実の経過
豊成丸は、FRP製漁船で、A受審人ほか4人が乗り組み、ほたてけた網漁で獲たほたて貝12トンの水揚げを終えて定係地に係留する目的で、船首0.6メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、平成10年8月1日11時55分網走港南港第5ふ頭西側の船だまりを発し、同港網走川右岸の川筋物揚場岸壁に向かった。
A受審人は、船だまり入口から網走港南防波堤東灯台(以下、網走港各灯台については「網走港」を省略する。)の少し南方を向け、操舵室左舷側のいすに腰をかけて手動操舵により東行し、南防波堤東灯台を左舷側に約100メートル離し左転し、12時03分同灯台から050度(真方位、以下同じ。)100メートルの地点に達したとき、針路を東防波堤灯台の少し北方に向く303度に定め、機関を港内全速力前進にかけて10.0ノットの対地速力で進行した。
ところで、豊成丸は、港内全速力に増速すると船首が浮上し、左右各舷に25度の死角が生じて操舵位置からは前方を見通すことができない状況であった。
12時07分A受審人は、北防波堤灯台から165度360メートルの地点に達したとき右舷船首20度300メートルに網走川河口に向かって進行中の第八光恵丸(以下「光恵丸」という。)を視認できる状況であったが、前路に他船はいないものと思い、船首方の他船を見落とさないよう、船首を左右に振るなどして船首死角を補う見張りを行わなかったので、光恵丸に気付かなかった。
A受審人は、12時08分わずか過ぎ光恵丸を正船首150メートルに視認できるようになり、その後同船が左方に替わり、同時09分少し前北防波堤灯台から262度340メートルの地点において針路を網走川河口に向く276度に転じたところ、光恵丸を正船首わずか左100メートルに視認できるようになり、同船を追い越す態勢となったが、このことに気付かず、同船の進路を避けないまま、続航中、12時00分河口突堤灯台から059度140メートルの地点において、豊成丸の船首が光恵丸の右舷船尾に、後方から2度の角度で衝突し、転覆した同船の船底を乗り切った。
当時、天候は晴で風力1の北東風が吹き、潮候は、低潮時で視界は良好であった。
また、光恵丸は、FRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、友人3人を同乗させ、一本釣りの目的で、船首0.4メートル船尾0.6メートルの喫水をもって、同日05時00分網走港網走川右岸の川筋物揚場岸壁を発し、同時30分北防波堤灯台の北方約350メートルの釣り場に至り、漂泊して魚釣りを行ったのち、12時05分北防波堤灯台から010度380メートルの地点を発し、帰途に就いた。
B受審人は、釣り場発信後北防波堤灯台を大回りしたのち、12時06分半北防波堤灯台から165度140メートルの地点で針路を網走川河口に向く278度に定め、機関を微速力前進にかけ、7.5ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
定針したときB受審人は、左舷船尾50度400メートルに南防波堤に沿って西行中の豊成丸を初認したが、自船の船尾方を無難に替わってゆくものと思い、その後同船に対する動静監視を十分に行わなかった。
12時09分少し前B受審人は、北防波堤灯台から264度440メートルの地点に達したとき正船尾わずか右100メートルに接近した豊成丸が左転し、自船を追い越す態勢となり、その後豊成丸が自船の進路を避ける動作をとらないまま接近したが、このことに気付かず、警告信号を行うことなく続航中、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、豊成丸は船首部船底外板に凹損を生じ、光恵丸は右舷船尾外板に亀裂を、船底中央部外板に破口を生じた。

(原因)
本件衝突は、北海道網走港において、光恵丸を追い越す豊成丸が、見張り不十分で、その進路を避けなかったことによって発生したが、光恵丸が、動静監視不十分で、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
A受審人は、北海道網走港南港から同港網走川右岸の川筋物陽場岸壁に向け航行する場合、船首に死角を生ずる状況であったから、前路の光恵丸を見落とさないよう、船首を左右に振るなどして船首死角を補う見張りを行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、前路に他船はいないものと思い、船首を左右に振るなどして船首死角を補う見張りを行わなかった職務上の過失により、追い越す態勢で接近する光恵丸に気付かないまま進行して衝突を招き、自船の船首部船底外板に凹損を生じさせ、光恵丸の船底中央部外板に破口を生じさせるに至った。
B受審人は、北海道網走港北防波堤南方から、同港網走川の川筋物揚場岸壁に向け航行中、後方から接近する豊成丸を認めた場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、その動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、自船の船尾方を無難に替わってゆくものと思い、その動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、その後豊成丸が転針して自船を追い越す態勢で接近していることに気付かず、警告信号を行うことなく進行して衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。

参考図






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