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1999年(平成11年)

平成10年那審第39号
    件名
引船第八大王丸貨物船モキハナ衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年3月9日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

小金沢重充、東晴二、井上卓
    理事官
道前洋志

    受審人
A 職名:第八大王丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
大王丸…船橋及び救命いかだを損傷
モ号…損傷なし

    原因
大王丸…甲板作業(離岸援助作業)不適切

    主文
本件衝突は、モキハナの離岸援助作業にあたった第八大王丸が、たるんだ曳航索を巻取り中、同索がタイヤフェンダに挟まり巻けなくなった際、適切な措置がとられなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年3月29日16時50分
沖縄累那覇港新港
2 船舶の要目
船種船名 引船第八大王丸 貨物船モキハナ
総トン数 196.79トン 37.811トン
全長 31.72メートル
登録長 247.41メートル
幅 8.60メートル 32.23メートル
深さ 3.51メートル 20.12メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,912キロワット
3 事実の経過
第八大王丸(以下「大王丸」という。)は、主に那覇港に入出港する船舶の操船支援業務に従事する鋼製引船であり、モキハナ(以下「モ号」という。)の離岸援助を行う目的で、A受審人ほか3人が乗り組み、モ号で水先業務に当たる水先人Bを乗せ、船首2.2メートル船尾3.4メートルの喫水をもって、平成10年3月29日16時20分那覇港軍港岸壁を発し、同港新港ふ頭9号岸壁に右舷着けしているモ号に向かった。
A受審人は、B水先人が乗船しているとき、同水先人と離岸援助の方法について打合せを行い、16時30分モ号後方至近の岸壁に接岸して同水先人を降ろしたのち、モ号の船尾甲板左舷側のボラードに径80ミリメートルの合成繊維製曳航索のエンドアイをかけ、船首から同索を70メートル延出して待機した。
16時40分A受審人は、モ号の船尾部左舷正横に位置して、同船を左舷方に引き始め、同時45分少し前、引き方を中止して同船の左舷後方に移動し、同時45分那覇港新港第1防波堤南灯台(以下「南灯台」という。)から060度(真方位、以下同じ。)1,670メートルの地点に達したとき、モ号の後進とともに曳航索を張らせないようにしながら2.8ノットの対地速力で後進を開始した。
16時48分半A受審人は、後進行きあしを止め、モ号側で曳航索を離す際作業しやすいよう、いつものようにできるだけ短くすることとし、モ号の後進に伴ってたるんだ曳航索の巻取りをウインチにより毎分50メートルの速度で開始し、同時49分半同船の後進惰力が大きく更にたるむ状況となっていた曳航索が自船の船首に取り付けたタイヤフェンダに挟まり、巻取りができなくなったことを知った。
ところが、A受審人は、モ号の後進に伴い曳航索が右舷後方に張るようになったときには、同索によりモ号に引き寄せられるおそれがあったが、曳航索をタイヤフェンダから外すことにのみ気をとられ、モ号に連絡するなり、同船とともに後進するなど適切な措置をとることなく、ウインチの操作を続けていたところ、大王丸は、船首を右転させられながらモ号に引き寄せられ、16時50分南灯台から066度1,600メートルの地点において、180度に向いた大王丸の船橋左舷側が、モ号の左舷船尾湾曲部に入り込むように衝突した。
当時、天候は晴で風力2の北東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
また、モ号は、コンテナ船であり、船長以下23人が乗り組み、コンテナ貨物3,114トンを載せ、船首8.0メートル船尾9.9メートルの喫水をもって、同日16時40分那覇港新港ふ頭9号岸壁を発し、大韓民国釜山港へ向かった。
モ号の水先業務に当たったB水先人は、左舷船尾に配置した大王丸とバウスラスタにより左方へ移動し、16時45分岸壁から35メートルばかり離れたところで、舵及び機関を種々に使用し、180度方向へ2.8ノットの対地速力で後進を始め、同時48分半300メートル移動したところで、曳航索を放すよう指示したのち、そのまま惰力後進中、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、大王丸は、船橋及び救命いかだを損傷したが、のち修理され、モ号には、損傷がなかった。

(原因)
本件衝突は、沖縄県那覇港新港ふ頭9号岸壁において、モ号の離岸援助作業にあたった大王丸が船首からモ号の左舷船尾に曳航索をとり、同船の左舷後方で停止して、モ号の後進に伴ってたるんだ曳航索の巻取り中、同索が自船のタイヤフェンダに挟まり巻けなくなった際、モ号に連絡するなり、同船とともに後進するなどの適切な措置がとられず、曳航索が右舷後方に張る状況となり、右転させられながらモ号に引き寄せられたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、モ号の左舷後方に位置し、同船の後進に伴ってたるんだ曳航索を巻取り中、同索が自船のタイヤフェンダに挟まり巻けなくなった場合、曳航索が張らないよう、モ号に連絡するなり、同船とともに後進するなどの適切な措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、曳航索を外すことにのみ気をとられ、適切な措置をとらなかった職務上の過失により、右舷後方に張った曳航索によりモ号に引き寄せられて衝突を招き、自船の船橋及び救命いかだに損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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