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1999年(平成11年)

平成9年横審第64号
    件名
遊漁船第三勇太郎丸プレジャーボートサンズサンII衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年1月21日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

半間俊士、長浜義昭、河本和夫
    理事官
関隆彰

    受審人
A 職名:第三勇太郎丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
勇太郎丸…左舷船首水線の上部に擦過傷
サンズサン…左舷船尾部外板に亀裂を伴う破損、マストやジブファーラー等の艤装品に折損など、同船乗組員2人がそれぞれ打撲傷など

    原因
勇太郎丸…見張り不十分、船員の常務(前路進出)不遵守

    主文
本件衝突は、第三勇太郎丸が見張り不十分で、帆走して無難に航過する態勢のサンズサンIIの前路に進出したことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成7年3月5日11時43分
相模湾南東部
2 船舶の要目
船種船名 遊漁船第三勇太郎丸 プレジャーボートサンズサンII
総トン数 13.00トン
全長 17.95メートル 7.75メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 360キロワット 不詳
3 事実の経過
第三勇太郎丸(以下「勇太郎丸」という。)は、船体後部に操舵室及び船首部から前方に長さ約3メートルの船首張出し部を有する、最大搭載人員43人のFRP製小型遊漁兼用船で、A受審人が1人で乗り組み、釣り客18人を乗せ、遊漁の目的で、船首0.20メートル船尾1.30メートルの喫水をもって、平成7年3月5日07時00分神奈川県真名瀬漁港を発し、同県城ヶ島沖合の釣り場に向かった。
07時30分A受審人は、目的の釣り場に至って遊漁を行ったが釣果が悪く、釣り場を移動することとし、10時30分魚群探索を行いながら北上を始め、途中2箇所で釣りを試み、11時33分諸磯埼灯台から300度(真方位、以下同じ。)2,000メートルの地点で5分ばかり試し釣りを行ったのち、周囲を一瞥(いちべつ)して西方約1,200メートルに数隻の帆走中のヨットを見かけたものの、それらヨットの動きを確認しないまま、同時38分更に釣り場を探すために西行し、同時41分少し過き諸磯埼灯台から293度2,600メートルの地点に達したとき、針路を293度に定め、機関を毎分回転数750にかけて7.0ノットの速力で手動操舵により進行した。
定針時A受審人は、ほぼ正船首500メートルのところに帆走中のサンズサンII(以下「サンズサン」という。)を認め得る状況で同船と接近したが、操舵室のいすに腰掛けた姿勢で魚群深知器の監視に専念し、前路の見張りを十分に行うことなく操船にあたっていたので同船を見落とし、その後同船が自船の針路を替わしたことにも気付かず続航中、11時43分少し前サンズサンを左舷船首31度80メートルに視認できる状況になり、互いに左舷を対して40メートル隔てて無難に航過する態勢になったが、依然このことに気付かず、魚群探知器を監視したまま左舵をとったところ、サンズサンの前路に進出することとなり、11時43分諸磯埼灯台から293度2,900メートルの地点において、203度に向首した勇太郎丸の船首が、サンズサンの左舷船尾端に直角に衝突した。
当時、天候は晴で風力3の東北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
また、サンズサンは、Bが代表として所有者となり、仲間で共有しているFRP製プレジャーヨットで、船長Cほか5人が乗り組み、相模湾巡航の目的で、キール下部の深さ1.50メートルをもって、同日11時00分神奈川県三崎港諸磯のヨットハーバーを発し、同港西方沖合に向かった。
11時30分C船長は、諸磯埼灯台から293度4,100メートルの地点で反転し、針路を同灯台に向首する113度に定め、メインセールをワンポイントリーフ、ファーラー付きジブセールを最大面積に展開した左舷開きで、左舷前方からの風を受けた帆走により3.0ノットの速力で進行した。
11時41分少し過ぎC船長は、諸磯埼灯台から293度3,100メートルの地点で、ほぼ正船首500メートルに自船に向けて接近する勇太郎丸を初認し、その後自船が帆走中であるも、安全を期して航行中の動力船である勇太郎丸の進路を替わすため右転し、同船と互いに左舷を対して無難に航過できる距離をとって元の針路に戻して続航中、同時43分少し前左舷船首31度80メートルのところで無難に航過できる態勢であった勇太郎丸が、突然左転して自船に迫り、何をすることもできないまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、勇太郎丸は左舷船首水線の上部に擦過傷を生じ、サンズサンは左舷船尾部外板に亀裂を伴う破損、マストやジブファーラ等の艤装品に折損などを生じ、同船乗組員D及び同Bがそれぞ打撲傷などを負った。

(原因)
本件衝突は、相模湾において、釣り場移動のために西行中の勇太郎丸が、見張り不十分で、帆走して無難に航過する態勢のサンズサンの前路に進出したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、相模湾で単独で操船にあたり釣り場を移動する場合、他船の存在を知ることができるよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、それまでの釣果が悪かったことから魚群探知機の監視に専念し、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、接近するサンズサンを見落とし、互いに左舷を対して無難に航過する態勢の同船の存在に気付かないまま左転し、その前路に進出して衝突を招き、勇太郎丸の左舷船首下部に擦過傷並びにサンズサンの左舷船尾部外板に亀裂を伴う破損及びマスト等の艤装品に折損などを生じさせ、サンズサン乗組員2人に打撲傷などを負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図1

参考図2






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