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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成10年7月2日14時10分 三浦半島西側海域 2 船舶の要目 船種船名 プレジャーボートマーミー
漁船繁丸 総トン数 0.85トン 登録長 8.08メートル 5.04メートル 全長
9.01メートル 機関の種類 ディーゼル機関
電気点火機関 出力 154キロワット 22キロワット 3 事実の経過 マーミー(以下「マ号」という。)は、2基2軸を有するFRP製のプレジャーボートで、A受審人が単独で乗り組み、息子1人を同乗させ、トローリングの目的で、船首0.6メートル船尾0.7メートルの喫水をもって、平成10年7月2日10時10分神奈川県横須賀市佐島のマリーナを発し、三浦半島の南側から西側の海域においてトローリングを行った。 ところで、A受審人は、同年4月に同県平塚市のマリーナから佐島のマリーナにマ号の定係地を移してのち、今回が2回目の出航であり、三浦半島西側の海域に不慣れであった。 こうしてフライングブリッジで操船中のA受審人は、14時00分諸磯埼の西方1.0海里付近を発して帰途につき、南寄りの風がやや強いので陸岸に寄って北上することとしたが、間もなく右舷船首方の荒埼付近の対景が佐島付近の対景と違うのに気付き、船位確認のため回転数毎分500に一旦(いったん)減じたものの、同時05分亀城礁灯標から172度(真方位、以下同じ。)1.6海里の地点において、同灯標が西方位標識であることを知らないまま、針路を同灯標と荒埼との中間に向く007度に定め、再び機関を回転数毎分3,000にかけ、20.0ノットの対地速力とし、手動操舵で進行した。 A受審人は、不慣れな海域なので、その後もたびたびGPSプロッターを監視したり、右舷側の対景を見たりして船位を確認しながら続航したものの、風が強くなることを案じで帰航を急ぐことに気をとられ、減速するなどして前路の見張りを十分に行うことなく、高速のまま進行し、14時08分亀城礁灯標から145度1,150メートルの地点に達したとき、繁丸を正船首1,200メートルに視認することができ、その後、潜水作業中であることを示す国際信号旗A旗を掲げて横根付近に錨泊中の同船に向け接近したが、それらのことに気付かなかった。 A受審人は、依然繁丸を見落としたまま、錨泊中の同船を避けずに続航中、14時10分わずか前船首至近に同船を、その東側至近の水面に同船船長Bをそれぞれ初認し、左舵一杯、機関を中立にした力及ばず、14時10分亀城礁灯標から071度830メートルの地点において、原速力のまま、340度に向首したマ号の右舷船首が、繁丸の左舷船首に、前方から45度の角度で衝突した。 当時、天候は晴で風力4の南南西風が吹き、潮候は下げ潮の末期で、視界は良好であった。 また、繁丸は、船外機を有するFRP製の漁船で、B船長が1人で乗り組み、素潜りによる採介藻漁業の目的で、船首0.1メートル船尾0.2メートルの喫水をもって、同日09時00分横須賀市長井漁港を発し、亀城礁に至って操業を行った。 B船長は、亀城礁東方の横側付近に移動して操業を続けることとし、12時05分水深約1.2メートルの前示衝突地点において、重さ6キログラムの錨を船首から投じ、合成繊維製の錨索を延出して機関を止め、左舷船首に立てた高さ約2メートルの竿の先端に、国際信号旗A旗を掲げ、縦50センチメートル横40センチメートル高さ25センチメートルの発泡スチロール製赤色浮きを潜水地点に浮かべ同時30分繁丸の周囲で操業を再開した。 B船長は、14時10分わずか前205度に向首した繁丸の東側至近の水面に浮上したとき、同船の左舷船首至近にマ号を初認したがどうすることもできず、前示のとおり衝突した。 衝突の結果、マ号は、右舷側船底に擦過傷を生じたが、のち修理され、繁丸は左舷船首を圧壊し、修繕費の関係で全損とされた。
(原因) 本件衝突は、三浦半島西側海域において、マ号が、トローリングを終え定係地に向出北上する際、見張り不十分で、前路に錨泊している繁丸を避けなかったことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、三浦半島西側海域において、トローリングを終え定係地に向け北上する場合、同海域に不慣れで、GPSプロッター等でたびたび船位を確認しながら進行していたのであるから、減速するなどして前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、風が強くなることを案じて帰航を急ぐことに気をとられ、高速のまま続航し、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、錨泊中の繁丸に気付かず、同船を避けることなく進行して衝突を招き、自船の右舷側船底に擦過傷を生じ、繁丸の左舷船首を圧壊するに至った。
参考図
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