日本財団 図書館




1999年(平成11年)

平成10年神審第44号
    件名
ケミカルタンカー幸亜丸橋脚衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年3月24日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

清重隆彦、須貝壽榮、山本哲也
    理事官
平野浩三

    受審人
A 職名:幸亜丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船首部に凹損等、橋脚上部の跳開橋操作室が大破

    原因
操船・操機(減速措置)不適切

    主文
本件橋脚衝突は、減速措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年1月27日16時25分
徳島県今切港
2 船舶の要目
船種船名 ケミカルタンカー幸亜丸
総トン数 446トン
全長 57.99メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
幸亜丸は、船尾船橋型の液体化学薬品ばら積兼油輸送船で、A受審人ほか5人が乗り組み、トリクロロエチレン450トンを載せ、船首2.4メートル船尾3.8メートルの喫水をもって、平成9年1月27日15時15分徳島県今切港今切川左岸の、河口から約35海里上流にある東亜合成化学工業株式会社専用岸壁を発し、京浜港に向かった。
ところで、同専用岸壁から約1.1海里下流彎曲(わんきょく)部には、新加賀須野及び加賀須野の両橋が300メートル隔てて架かっており、下流側にある加賀須野橋の中央部やや左岸寄りに、船舶が通航できるよう開閉機能を有する跳開部が設置され、これを開けば、河口に向かって105度(真方位、以下同じ。)方向となる幅員12メートル長さ5メートルの水路が確保できるようになっていた。
A受審人は、同水路を水先類似行為者の嚮導(きょうどう)のもとで1回通航し、その際に修得した操船要領により、以後自らの操船で数回通航した経験から、船幅9.6メートルの幸亜丸が今切川を新加賀須野橋の上流から下航する際、まず、左岸寄りにほぼ067度の針路で同橋をくぐり抜けた後、加賀須野橋の上流180メートル付近で、跳開部の中央に105度で向くよう大角度の右転を余儀なくされ、転針後予定針路線から逸脱することも考えられるので、転針前に十分減速したうえ機関を小刻みに使用し、わずかな行き脚をもって同水路に進入する態勢を整える必要があることを承知していた。
発航後、A受審人は、自ら操舵操船にあたり、500メートル下流で投錨して加賀須野橋跳開部の開橋時刻を待ち、16時00分抜錨のうえ下航を開始した。その後、同橋の上流380メートル付近で先航船が跳開部を通過するのを見届け、同時22分今切港長原導流堤灯台から302度2.5海里ばかりに位置する、地島町老門地区物揚場北東端(以下「物揚場北東端」という。)から058度670メートルの地点で、針路を067度に定め、川の流れがほとんどない状況のもと機関を極微速力前進に掛け、4.0ノットの対地速力で進行した。
A受審人は、船橋内主機遠隔操縦台に機関長を、船首に一等航海士を、船橋の両外側に甲板長及び一等機関士をそれぞれ配し、定針後間もなく新加賀須野橋をくぐり抜け、16時24分少し前物揚場北東端から060度850メートルの地点に至ったが、これまで無難に通航していたので大丈夫と思い、転針前に十分減速する措置をとることなく、原速力のまま針路を跳開部の中央に向け105度とするため右舵20度を取って右転を開始した。
そして、A受審人は、16時24分少し過ぎ105度に向首して跳開部まで150メートルとなったとき、予定針路線の右に逸脱していることに気付き、それを修正するため、左舵10度を取ったが左転せず、更に左舵20度としたところ左回頭を始め跳開部北側の橋脚に向首したので、右舵一杯、全速力後進としたが及ばず、16時25分物揚場北東端から066度1,000メートルの地点で、幸亜丸は、076度を向首し、1.0ノットの速力で、その船首が同橋脚に衝突した。
当時、天候は曇で風力4の西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期にあたり、付近に流速はほとんどなかった。
衝突の結果、船首部に凹損等を生じ、橋脚上部の跳開橋操作室が大破した。

(原因)
本件橋脚衝突は、徳島県今切港において、今切川を下航中、同川彎曲部に架けられた加賀須野橋の狭い跳開部に向けて大角度の転針を行う際、減速措置が不十分で、転針後予定針路線からの逸脱を修正することができないまま橋脚に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、今切港において、今切川を下航中、同川彎曲部に架けられた加賀須野橋の狭い跳開部に向けて大角度の転針を行う場合、転針前に十分減速する措置を取るべき注意義務があった。ところが、同人は、これまで無難に通航していたので大丈夫と思い、転針前に十分減速する措置を取らなかった職務上の過失により、転針後予定針路線からの逸脱を修正することができないまま橋脚に向首進行し招き、船首部に凹損等を生じさせ、橋脚上部の跳開橋操作室を大破させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION