1999年（平成１１年）

号	平成11年那審第3号
件名	貨物船海龍11灯浮標衝突事件
事件区分	衝突事件
言渡年月日	平成11年8月5日
審判庁区分	地方海難審判庁
	門司地方海難審判庁那覇支部
	（清重隆彦、金城隆支、花原敏朗）
理事官	道前洋志
受審人	A　職名：海龍11船長　海技免状：三級海技士(航海)
指定海難関係人
損害	海龍…左舷中央部に擦過傷 中央灯浮標…レーダーレフレクタ脱落及び支柱曲損
原因	潮流に対する配慮不十分

主文	本件灯浮標衝突は、潮流に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。 受審人Aを戒告する。
理由
	(事実) 1　事件発生の年月日時刻及び場所 平成10年9月23日08時23分 沖縄県那覇港 2　船舶の要目 船種船名 貨物船海龍11 総トン数 4,572トン 全長 124.71メートル 機関の種類 ディーゼル機関 出力 7,060キロワット 3　事実の経過 海龍11(以下｢海龍｣という。)は、船首船橋型のロールオン･ロールオフ船で、A受審人ほか12人が乗り組み、コンテナなど2,553トンを載せ、船首5.65メートル船尾6.40メートルの喫水をもって、平成10年9月20日18時15分関門港を発して那覇港に向かい、途中、台風7号の影響を避けるため熊本県八代湾で避泊し、23日03時50分那覇港外慶伊瀬島南方に投錨仮泊した。 A受審人は、08時30分から荷役を開始する旨の電話連絡を受けていたので、07時30分錨地を発して那覇港新港ふ頭4番バースに向かい、同時56分那覇港新港第1防波堤南灯台(以下｢南灯台｣という。)から318度(真方位、以下同じ。)2,480メートルの地点で、針路を160度に定め、機関を港内全速力前進に掛け、10.0ノットの対地速力で、三等航海士を舵輪に就けて手動操舵で進行した。 そして、A受審人は、07時58分南灯台から311度1,900メートルの地点に達したところで、定期フェリークイーンコーラルが防波堤の内側から出航してくるのを認め、防波堤外で待つこととして右転中、前路を右方に横切る冷凍運搬船を認め、行きあしを止めて同船を替わしたのち、08時15分同灯台から280度1,940メートルの地点で、機関を微速力前進に掛け、右舵一杯として右転を再開した。 08時20分A受審人は、南灯台から298度2,240メートルの地点に達したとき、前方190メートルのところにある那覇港中央灯浮標(以下、灯浮標の名称については｢那覇港｣を省略する。)に著しく接近する状況となり、当時、北方に向かう潮流があることを知っていたが、北北西方からの風浪があったので、北方に圧流されることはあるまいと思い、中央灯浮標の北側を航過するなど、潮流に対する配慮を十分に行うことなく、同灯浮標の南側を航過するつもりで行きあしを止め、その後バウスラスターを使用して船首を右に振り、針路を第1号灯浮標に向首する110度とし、機関を微速力前進に掛けて続航した。 海龍は、折からの北流に圧流され、08時23分少し前左舷船首至近に中央灯浮標を認め、左舵一杯をとって船尾を右方に振ろうと試みたが効なく、08時23分南灯台から302度2,010メートルの地点で、077度に向首したとき、6.0ノットの速力で左舷中央部が中央灯浮標に衝突した。 当時、天候は晴で風力5の北北西風が吹き、付近には約1.4ノットの北流があり、潮候はほぼ高潮時で月齢は2.3であった。 衝突の結果、海龍は左舷中央部に擦過傷を生じ、中央灯浮標はレーダーレフレクタ脱落及び支柱曲損などを生じたがのち修理された。 (原因) 本件灯浮標衝突は、那覇港新港ふ頭4番バースに向けて入航中、防波堤の内側に出航船を認め、これを防波堤の外側で右転して替わしたのち入航する際、潮流に対する配慮が不十分で、中央灯浮標に向けて圧流されたことによって発生したものである。 (受審人の所為) A受審人は、那覇港新港ふ頭4番バースに向けて入航中、防波堤の内側に出航船を認め、これを防波堤の外側で右転して替わしたのち入航する場合、当時、北方に向かう潮流があることを知っていたのであるから、中央灯浮標に向かって圧流されることのないよう、同灯浮標の北側を航過するなど、潮流に対する配慮を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、北北西方からの風浪があったので北方に圧流されることはあるまいと思い、潮流に対する配慮を十分に行わなかった職務上の過失により、中央灯浮標の南側を航過しようとして進行し、折からの北流に圧流されて同灯浮標との衝突を招き、左舷中央部に擦過傷を生じさせ、中央灯浮標のレーダーレフレクタ脱落及び支柱曲損などの損傷を生じさせるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。 よって主文のとおり裁決する。