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1999年(平成11年)

平成10年門審第6号
    件名
貨物船第七有徳丸防波堤衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年7月13日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

西山烝一、阿部能正、供田仁男
    理事官
平良玄栄、千手末年

    受審人
A 職名:第七有徳丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
B 職名:第七有徳丸一等航海士 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
球状船首部に亀裂を伴う凹損

    原因
針路選定不適切

    主文
本件防波堤衝突は、針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成7年12月28日00時45分
鹿児島県志布志港
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第七有徳丸
総トン数 199トン
全長 58.46メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 625キロワット
3 事実の経過
第七有徳丸(以下「有徳丸」という。)は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A及びB両受審人ほか1人が乗り組み、飼料375トンを載せ、船首2.0メートル船尾3.4メートルの喫水をもって、平成7年12月26日15時50分大阪港を発し、鹿児島県志布志港に向かった。
志布志港は、志布志湾の湾奥部に位置し、港奥の船だまりから南西方へ順に東防波堤(A)、東防波堤(B)(以下「B防波堤」という。)及び沖防波堤が築造され、沖防波堤南端と同港陸岸との間の中央部付近には、東西に長さ約350メートルの防波堤(南)(以下「南防波堤」という。)が設けられていた。そして、B防波堤南端と沖防波堤北端との間の防波堤入口(以下「東側入口」という。)は可航幅が約130メートルであったのに対し、南防波堤東端と沖防波堤南端との間の防波堤入口(以下「南側入口」という。)は可航幅が約550メートルあり、B防波堤南端部には簡易標識灯が南防波堤東端部には灯台がそれぞれ設置されていた。
ところで、A受審人は、船長の職務としては公的な書類関係の作成を行うだけで、航海計画の立案、入出港時の操船、通信連絡等の実務については、経験豊富なB受審人が行うことを承認しており、自らは、入出港時の船首配置など一等航海士の職務を執っていた。
A受審人は、同月27日20時ごろ戸崎鼻の北東方4海里で船橋当直に就き、翌28日00時10分鬢垂(びんだれ)島灯台から239度(真方位、以下同じ。)2.9海里の地点に至ったとき、志布志港港域まで4.4海里となり、間もなく同港に入航することとなったが、これまでB受審人に入出航の操船を任せていたことから、同人に任せておけば大丈夫と思い、そのまま在橋して自ら操船の指揮を執ることなく、昇橋したB受審人と交替し、降橋して一服したのち船首部に赴き入港準備作業を始めた。
B受審人は、00時14分鬢垂島灯台から249度3.4海里の地点に達したとき、錨泊するために防波堤内に入航することにしたが、初めての港であり、かつ、東側入口が狭かったものの、これまでも、他の港で夜間に灯標識のない狭い防波堤入口からでも入航の経験があったので、東側入口から入航しても大丈夫と思い、可航幅の広い南側入口に向かう針路とすることなく、針路を沖防波堤北端部を少し左に見る327度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、10.5ノットの対地速力で進行した。00時27分B受審人は、志布志港防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から153度2.4海里の地点に至り、入航に備えて、機関を半速力前進の6.0ノットに減速し、手動操舵に切り替えて続航した。
B受審人は、00時43分防波堤灯台から166度1,540メートルの地点に達したとき、針路を東側入口に向く259度に転じたところ、B防波堤南端に向首する状況となったが、このことに気付かず進行中、同時44分半船首間近に迫った同防波堤を視認し、機関を全速力後進にかけ、左舵一杯にとったが効なく、00時45分防波堤灯台から181度1,560メートルのB防波堤南端の消波ブロックに、ほぼ原針路のままの船首が約3ノットの速力で衝突した。
当時、天候は晴で、風力2の北西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
衝突の結果、球状船首部に亀裂を伴う凹損を生じたが、のち修理された。

(原因)
本件防波堤衝突は、夜間、鹿児島県志布志港に入航する際、針路の選定が不適切で、灯台が設置されている可航幅の広い南側入口に向かう針路とせず、可航幅の狭い東側入口に向かって進行したことによって発生したものである。
運航が適切でなかったのは、入航に際し、船長が、船橋で自ら操船の指揮を執らなかったことと、入航操船を行っている一等航海士が、適切な入航針路をとらなかったこととによるものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、鹿児島県志布志港に入航する場合、船橋で自ら操船の指揮を執るべき注意義務があった。しかるに、同人は、一等航海士にいつも入出航の操船を任せていたことから、同航海士に任せておけば大丈夫と思い、船橋で自ら操船の指揮を執らなかった職務上の過失により、同航海士に入航の操船を行わせたまま、B防波堤との衝突を招き、有徳丸の球状船首部に亀裂を伴う凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、夜間、鹿児島県志布志港に錨泊のため防波堤内に入航する場合、初めての港であり、かつ、防波堤入口の可航幅が狭かったのであるから、灯台が設置されている可航幅の広い南側入口に向かう針路をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、他の港で夜間に灯標識のない狭い防波堤入口からでも入航の経験があったので、東側入口から入航しても大丈夫と思い、南側入口に向かう針路をとらなかった職務上の過失により、東側入口に向かう針路で進行してB防波堤との衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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