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1999年(平成11年)

平成10年長審第53号
    件名
漁船第二十五大祐丸導流堤衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年2月18日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

保田稔、安部雅生、原清澄
    理事官
山田豊三郎

    受審人
A 職名:第二十五大祐丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
広瀬導流堤…船着き場階段コンクリート壁面に欠損等
大祐丸…バルバスバウを圧壊してフォアピークタンクに浸水

    原因
船位確認不十分

    主文
本件導流堤衝突は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年3月7日20時40分
長崎県平戸瀬戸広瀬の導流堤
2 船舶の要目
船種船名 漁船第二十五大祐丸
総トン数 335トン
全長 63.00メートル
幅 9.00メートル
深さ 4.40メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
第二十五大祐丸(以下「大祐丸」という。)は、R株式会社が運航するまき網漁業船団付属の船尾船橋型鋼製運搬船で、長崎港内の造船所に入渠したのち、A受審人ほか9人が乗り組み、氷約190トンを載せ、船首3.20メートル船尾4.80メートルの喫水をもって、平成9年3月7日17時00分長崎港を発し、平戸瀬戸経由で同船団が操業している対馬東方の漁場に向かった。
ところで、平戸瀬戸の北口付近は、そのほぼ中央部に存在する広瀬の南西端から約230度(真方位、以下同じ。)の方向に100メートルばかり延びる導流堤(以下「広瀬導流堤」という。)により、可航幅が約240メートルの東水道と、同幅が約350メートルの西水道とに隔てられ、両水道とも内航貨物船や漁船などが多数通航するところであった。
発航後A受審人は、船橋当直を自らを合む7人による単独2時間交替制としたものの、入渠時のほかに平戸瀬戸付近の海域を航行したことがなく、自らを含めて乗組員が同海域の通航に不慣れであったので、船橋当直者を介添えするように自らも船橋に立ち、平戸瀬戸に向けて進行した。
20時25分ごろA受審人は、平戸大橋の手前1.8海里ばかりの地点に達したとき、船橋当直就いていた甲板員に自ら操船指揮を執る旨を告げ、同人を手動操舵に当たらせ、その後折からの潮流に乗じて14.0ノットの対地速力として平戸瀬戸を続航した。
20時37分半A受審人は、南風埼灯台から270度180メートルの地点に達し、西水道を通航するつもりで針路を000度に定めたとき、広瀬の北方に小型漁船のものと思われる白、紅2灯を認め、その後同船がゆっくり南下する態勢であることを知ったものの、東水道を航行したことがなかったので、予定どおり西水道に向けて同一の針路、速力で進行した。
20時39分A受審人は、広瀬導流堤灯台から196度430メートルの地点に達したとき、南下する漁船を十分に替わそうと右転することとしたが、同灯台の灯光をいちべつしただけで広瀬導流堤との並航距離が十分にあるものと思い、レーダーの活用や周囲の物標の方位測定などによる船位の確認を十分に行うことなく、針路を020度に転じ、広瀬導流堤に著しく接近する態勢となったことに気付かないまま続航した。
こうして、A受審人は、小型漁船の動向を監視しながら進行中、20時40分少し前広瀬導流堤灯台から182度110メートルの地点に達したとき、定時通信のために昇橋していた通信長を兼務する一等航海士が広瀬導流堤に当たると叫ぶのを聞くとほぼ同時に、同灯台の灯光を左舷船首方に認めて自ら舵輪をとり、左舵一杯として機関を中立としたが、及ばず、大祐丸は、20時40分広瀬導流堤灯台から153度6メートルの同堤南側突端付近の船着き場階段のコンクリート壁面に、ほぼ原速力のまま、船首が000度を向いた状態で衝突した。
当時、天侯は晴で風力2の北風が吹き、潮候は下げ潮の初期であったが転流前で0.8ノットの北流があった。
衝突の結果、広瀬導流堤は、船着き場階段コンクリート壁面に欠損等を生じたがのち修理され、大祐丸は、バルバスバウを圧壊してフォアピークタンクに浸水したが、自力で長崎県松浦港に寄せたのち、長崎港に回航して修理された。

(原因)
本件導流堤衝突は、夜間、平戸瀬戸北口の西水道に向けて北上中、同水道を南下する小型漁船との距離を隔てるために針路を転じるに際し、船位の確認が不十分で、広瀬導流堤に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、平戸瀬戸北口の西水道に向けて北上中、同水道を南下する小型漁船を十分に替わそうと右転する場合、広瀬導流堤に著しく接近しないよう、周囲の物標の方位測定などによる船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、広瀬導流堤灯台の灯光ををいちべつしただけで同堤との並航距離が十分にあるものと思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、同堤に著しく接近したことに気付かないまま進行して衝突を招き、バルバスバウ及び同堤にそれぞれ損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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