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1999年(平成11年)

平成10年広審第42号
    件名
油送船第三永進丸貨物船あいらんど衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年6月23日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

横須賀勇一、杉崎忠志、黒岩貢
    理事官
川本豊

    受審人
A 職名:第二永進丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
B 職名:あいらんど船長 海技免状:五級海技士(航海)(履歴限定)
C 職名:あいらんど機関長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
永進丸…左舷船首部外板に亀裂を伴う凹損
あいらんど…右舷船首部外板に凹損

    原因
あいらんど…見張り不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守
永進丸…警告信号不履行、横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、あいらんどが見張り不十分で、前路を左方に横切る第三永進丸の進路を避けなかったことによって発生したが、第三永進丸が警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Cを戒告する。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年10月10日07時05分
香川県坂出港港外
2 船舶の要目
船種船名 油送船第三永進丸 貨物船あいらんど
総トン数 2,829トン 186トン
全長 50.75メートル
登録長 94.77メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 2,427キロワット 441キロワット
3 事実の経過
第三永進丸(以下「永進丸」という。)は、国内輸送に従事する船尾船橋型油送船で、A受審人ほか10人が乗り組み、空倉のまま、船首2.40メートル船尾4.65メートルの喫水をもって、平成9年10月10日06時55分坂出港第2区錨地を発し、積み荷役のため同港域外にある番の州コスモ石油坂出製油所桟橋に向かった。
A受審人は、機関長及び操舵手を船橋に配し自ら運航の指揮にあたり、07時01分坂出港西防波堤灯台(以下「以下にし防波堤灯台」という。)から040度(真方位、以下同じ。)1.8海里の地点において、同港の出口に向け針路を332度に定め、機関を半速力前進にかけ、5.0ノットの対地速力で進行し、そのとき左舷船首78度750メートルのところに、前路を右方に横切る態勢のあいらんどを初めて視認し、その動静を監視していたところ同船と衝突のおそれのある態勢で互いに接近する状況であることを知ったが、この付近から出港する小型船は左転して水島方面に向けることが多かったので、まもなく同船は左転して自船を避けるものと思い格別同船に気を配らずに続航した。
07時03分A受審人は、西防波堤灯台から。35度1.8海里に達したとき、あいらんどが、方位変化のないまま400メートルに接近したのを認めたが、警告信号を行わず、更に接近しても、速やかに行きあしを止めるなど衝突を避けるための協力動作をとることなく進行し、同時04分少し過ぎ左舷船首至近に迫ったあいらんどを認め、あわてて汽笛を吹鳴し、右舵一杯をとり、機関を全速力後進としたが効なく、07時05分永進丸は、西防波堤灯台から031度1.9海里の地点において、340度に向首しほとんど行きあしのなくなったとき、その左舷船首に、あいらんどの右舷船首が後方から41度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力1の南東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、視界は良好であった。
また、あいらんどは、瀬戸内海各港間をセメント凝固材等のばら積み輸送に従事する船尾船橋型貨物船で、B受審人及びC受審人の2人が乗り組み、空倉のまま、船首0.85メート川船尾2.60メートルの喫水をもって、同日06時47分坂出港中央ふ頭を発し、神戸港に向かった。
ところで、B受審人は、出入港に際し、綱取りを雇うと経費がかかることから、自らが体力を要する綱取りを伴う甲板作業にあたることとし、高齢で足腰も弱くなり、自分と同種、同級の海技免状を有し船長としての経験もある父親のC受審人に出入港操船を任せていた。
こうして、C受審人は、単独で出港操船に引き続いて船橋当直にあたり、06時57分西防波堤灯台から031度1.0海里の地点において、港の出口に向け針路を031度に定め、機関を半速力前進にかけ7.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行し、前路を一瞥して航行中の他船がいなかったことから、操舵輪右前方の機関操作台の上で、書類の整理を始めた。
07時01分C受審人は、西防波堤灯台から031度1,5海里の地点に達したとき、右舷船首43度750メートルのところに、永進丸を視認し得る状況となり、その後同船が、前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していたが、書類の整理を行って、見張りを十分に行うことなく、永進丸に気付かず、その進路を避けないまま続航中、同時04分少し過ぎ右舷船首至近に迫った永進丸を初めて認め、機関を全速力後進にかけるとともに左舵一杯としたが効なく、あいらんどの船首が021度に向いたとき、前示のとおり衝突した。
B受審人は、出港作業を終えた後船尾甲板上で掃除中、機関が後進にかかったので異変を感じ昇橋したものの、永進丸が目前に迫っておりどうすることもできず事後の措置にあたった。
衝突の結果、永進丸は左舷船首部外板に亀裂を伴う凹損を生じ、あいらんどは右舷船首部外板に凹損を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
本件衝突は、坂出港外において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれのある態勢で接近中、あいらんどが、見張り不十分で、前路を左方に横切る永進丸の進路を避けなかったことによって発生したが、永進丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
C受審人は、坂出港中央ふ頭を発し、同港界付近を北東進する場合、右舷側から接近する永進丸を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、書類の整理を行って、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路を左方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近する永進丸に気付かず、同船の進路を避けないで進行して衝突を招き、永進丸の左舷船首部外板に亀裂を伴う凹損及び、あいらんどの右舷船首部外板に凹損をそれぞれ生じさせるに至った。
以上のC受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人は、坂出港内第2区錨地を発し、港域外の製油所桟橋に向け北進中、前路を右方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近するあいらんどを視認し、同船に避航の気配が認められなかった場合、速やかに行きあしを止めるなどの衝突を避けるための協力動作をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、この付近から出港する小型船はまもなく左転して自船を避けるものと思い、行きあしを止めるなどの衝突を避けるための協力動作をとらなかった職務上の過失により、あいらんどとの衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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