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1999年(平成11年)

平成11那審第1号
    件名
旅客船深浦丸漁船マリリン2衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年6月15日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

清重隆彦、金城隆支、花原敏朗
    理事官
平良玄栄

    受審人
A 職名:深浦丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:マリリン2船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
深浦丸…右舷船首に擦過傷
マリリン2…左舷船首部を破損、船長が腰椎棘突起骨折等

    原因
深浦丸、マリリン2…見張り不十分、船員の常務(衝突回避装置)不遵守

    主文
本件衝突は、深浦丸び、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことと、マリリン2が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年8月23日00時10分
鹿児島県古仁屋港
2 船舶の要目
船種船名 旅客船深浦丸 漁船マリリン2
総トン数 1.3トン
登録長 11.70メートル 7.53メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 356キロワット 33キロワット
3 事実の経過
深浦丸は、FRP製の遊漁兼旅客船で、A受審人が1人で乗り組み、旅客3人を送り届けたあと、船首0.1メートルの船尾0.8メートルの喫水で、平成10年8月23日00時00分鹿児島県古仁屋港加計呂麻島諸数地区を発し、同港奄美大島の通称大湊地区に向かった。
A受審人は、白色全周灯及び両色灯を表示し、00時03分待網埼灯台から252度(真方位、以下同じ。)1.3海里の地点で、針路を343度に定め、機関を全速力前進にかけ、17.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
00時08分少し前A受審人は、古仁屋港防波堤灯台(以下「防灘堤灯台」という。)から193度1,080メートルの地点に達したとき、右舷船首28度1,060メートルのところに、古仁室海上保安署前の岸壁を発して出航するマリリン2の白、紅2灯を視認することができる状況であったが、前方で錨泊していた台船の灯火に気をとられ、右方の見張りを十分に行っていなかったので、マリリン2の存在に気付かなかった。
A受審人は、00時08分半少し過ぎ右舷船首33度590メートルのところで、マリリン2が針路を右に転じ、衝突のおそれがある状況となって急速に接近したが、速やかに行きあしを停止するなどして衝突を避けるための措置をとらないまま、同時09分半入航のため速力を15.0ノットに減じて続航中、同時10分少し前右舷船首方至近に同船の紅灯を初めて認め、機関を中立とした。
しかし、深浦丸はその効なく、00時10分防波堤灯台から265度560メートルの地点において、原針路のまま、その右舷船首が、マリリン2の左舷船首部に後方から61度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風はなく、潮候は下げ潮の末期にあたり、視界は良好であった。
また、マリリン2は、FRP製漁船で、B受審んが1人で乗り組み、敷網漁を行う目的で、船首0.10メートル船尾0.35メートルの喫水で、同日00時06分古仁屋港古仁屋海上保安署前の岸壁を発し、同港北西方の阿鉄湾の漁場に向かった。
00時08分少し前B受審人は、防波提灯台から252度30メートルの地点で、針路を234度に定め、9.0ノットの対地速力で、白色全周灯及び両色灯を表示して手動操舵により進行していたとき、左舷船首43度1,060メートルのところに、北上中の深浦丸の白、緑2灯を視認できる状況であったが、右舷前方で錨泊していた台船の灯火に気をとられ、左方の見張りを十分に行っていなかったので、深浦丸の存在に気付かなかった。
B受審人は、00時08分半少し過ぎ防波堤灯台から237度230メートルの地点に達し、針路を目的地に向かう282度に転じたところ、深浦丸と衝突のおそれがある状況となって急速に接近したが、速やかに行きあしを停止するなどして衝突を避けるための措置をとらないまま続航中、同時10分少し前左舷至近に深浦丸の船体を初めて認めたものの、どうすることもできず、マリリン2は、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、深浦丸は右舷船首に擦過傷を生じ、マリリン2は左舷船首部を破損してのち修理され、B受審人が腰椎棘突起骨折等を負った。

(原因)
本件衝突は、夜間、鹿児島県古仁屋港において、深浦丸が、大湊地区に入航中、マリリン2と衝突のおそれがある状況となって接近する際、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことと、マリリン2が、古仁屋海上保安署前の岸壁から出航して漁場に向け進行中、深浦丸と衝突のおそれがある状況となって接近する際、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、古仁屋港において、大湊地区に入航する場合、古仁屋海上保安署前の岸壁から出航して西行するマリリン2を見落とすことのないよう、右方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、前方で錨泊していた台船の灯火に気をとられ、右方の見張りを十分に行なわなかった職務上の過失により、衝突のおそれがある状況となって急速に接近するマリリン2の存在に気付かず、行きあしを停止するなど衝突を避けるための措置をとることなく進行して同船との衝突を招き、深浦丸の右舷船首に擦過傷を生じさせ、マリリン2の左舷船首部を破損させ、また、B受審人に腰椎棘突起骨折等を負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、夜間、古仁屋港において、古仁屋海上保安署前の岸壁から出航して漁場に向け進行する場合、大湊地区に入航する深浦丸を見落とすことのないよう、左方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、右舷前方で錨泊していた台船の灯火に気をとられ、左方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、衝突のおそれがある状況となって急速に接近する深浦丸の存在に気付かず、行きあしを停止するなと衝突を避けるための措置をとることなく進行して同船との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせ、自身が腰椎棘突起骨折等を負うに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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