日本財団 図書館




1999年(平成11年)

平成10年広審第116号
    件名
漁船伯鷹2プレジャーボート太公丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年6月18日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

織戸孝治、杉崎忠志、中谷啓二
    理事官
田邉行夫

    受審人
A 職名:伯鷹2船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:太公丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
伯鷹…船首部に軽微な凹損
太公丸…右舷外板、舵板等を損傷、船長が左前腕打撲及び頚椎捻挫等、同乗者1人が左足関節捻挫及び腰部捻挫、同1人が右足打撲及び頚椎捻挫、同1人が左肘打撲及び腰部打撲

    原因
伯鷹…見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
太公丸…動静監視不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、伯鷹2が、見張り不十分で、漂泊中の太公丸を避けなかったことによって発生したが、太公丸が、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年7月7日13時20分
広島湾東部海域
2 船舶の要目
船種船名 漁船伯鷹2 プレジャーボート太公丸
総トン数 11.00トン 3.57トン
登録長 14.30メートル 8.70メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 12キロワット
漁船法馬力数 160
3 事実の経過
伯鷹2(以下「伯鷹」という。)は、漁獲物の運搬に従事する鋼製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、漁獲物の沖取りの目的で、空倉のまま、船首0.48メートル船尾1.40メートルの喫水をもって、平成10年7月7日13時ごろ広島県佐伯郡鹿川港を発し、同県倉橋島東方の情島付近の漁場で操業中の漁船に向かった。
ところで伯鷹は、船尾に操舵室が設置され、船首後方から操舵室前面までが魚倉になっており、甲板上にマスト等の構造物はなく、また、航走時の船首浮上も少なく、航走中操舵室からの見張りが妨げられることはなかった。
A受審人は、発航時から操舵室の舵輪後方に設置された椅子に腰を掛けて手動で操舵に当たり、早瀬及び音戸の両瀬戸を経由して目的地に向かうつもりで航行中、13時17分半伝太郎鼻灯台から337度(真方位、以下同じ。)5,200メートルの地点に達し、針路を広島県長島と同県東能美島の親休鼻の間に向く186度に定め、機関をほぼ全速力前進にかけ24.0ノットの対地速力で進行した。
定針したときA受審人は、正船首1海里ばかりのところに太公丸を視認し得る状況にあったが、発航後暫くしてから操舵室内後部壁に取り付けられた無線機のスピーカーに左耳を傾け、他船の交信を傍受しながら斜め左方を向いて椅子に腰を掛けており、また、このころ左舷船首方をたまたま航行中の第三船の動静に気を奪われ、前路の見張りが不十分となり、太公丸に気付かず続航した。
13時19分A受審人は、伝太郎鼻灯台から329度4,200メートルの地点に至り、正船首740メートルばかりのところに漂泊中の太公丸に接近する状況となったが、依然、前路の見張りが不十分で、太公丸と衝突のおそれのある態勢で接近することに気付かず、同船を避けないまま進行中、13時20分直前ふと船首方を見たとき太公丸のマストを認め、機関中立、左舵一杯とするも及ばず、伯鷹は、13時20分伝太郎鼻灯台から322度3,650メートルの地点において、その船首が太公丸の右舷船首部にほぼ原針路、原速力のまま、前方から41度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の末期であった。
また、太公丸は、操舵室を有せず機関室囲壁前部に当たるほぼ船体中央にマストを設備し、舵柄により操舵を行い、汽笛を装備しない平甲板型木製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、魚釣りの目的で、知人のCを含む5人を乗船させ、船首尾共に1.00メートルの等喫水をもって、同日05時ごろ大柿町大附を発し、鹿川港南方の長島周辺の釣場に向かい同島付近の浅瀬に投錨して釣りを行ったのち、釣場移動のため抜錨し、12時30分ごろから衝突地点付近で、機関を中立として漂泊し、釣りを再開した。
B受審人は、ほぼ大黒神島中央部を向く325度を向首した太公丸の船尾右舷側で腰を掛けて釣竿を用いて釣りをしていたところ、13時17分半右舷船首41度1海里ばかりのところに、自船に向首来航する伯鷹を初認したが、自船は漂泊しているので、伯鷹が自船に気付いて避航するものと思い、その後伯鷹の動静監視を行わなかった。
13時19分B受審人は、伯鷹が同方向740メートルばかりのところに衝突のおそれのある態勢で接近し、その後も太公丸を避けることなく進行していたが、依然、動静監視を行わなかったので、このことに気付かず、クラッチを前進に入れるなどして衝突を避けるための措置をとらないで、釣りをしたまま漂泊中、13時20分少し前同乗者の叫び声で間近に迫った伯鷹を認めたが、どうすることもできず、太公丸は、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、伯鷹は船首部に軽微な凹損を生じたのみであったが、太公丸は右舷外板、舵板等を損傷し、B受審人が左前腕打撲及び頚椎捻挫等、同乗者のDが左足関節捻挫及び腰部捻挫、同Eが右足打撲及び頚椎捻挫、同Fが左肘打撲及び腰部打撲を負った。

(原因)
本件衝突は、広島湾東部海域において、航行中の伯鷹が、前路の見張り不十分で、漂泊中の太公丸を避けなかったことによって発生したが、太公丸が、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
A受審人は、広島湾東部海域を航行する場合、前路で漂泊中の太公丸を見落とさないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務が、あった。しかるに、同人は、無線交信の傍受及び左方の第三船の動静に気を奪われ、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、太公丸に気付力ず、同船を避けないまま進行して衝突を招き、伯鷹の船首部に凹損及び太公丸の右舷外板、舵板等に損傷並びにB受審人ほか同乗者3人を負傷させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
B受審人は、広島湾東部海域において漂泊中、自船に向首来航する伯鷹を認めた場合、衝突の有無を判断できるよう、動静監視を行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、自船が漂泊中であるから伯鷹が避航するものと思い、動静監視を行わなかった職務上の過失により、伯鷹が衝突のおそれのある態勢で接近することに気付かず、クラッチを前進に入れるなどして衝突を避けるための措置をとることなく、漂泊して釣りを続けたまま同船との衝突を招き、両船に前示の損傷及び太公丸乗船者に前示の負傷をそれぞれ生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION