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1999年(平成11年)

平成10年広審第53号
    件名
遊漁船雅福丸防波堤衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年2月16日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

釜谷獎一、上野延之、横須賀勇一
    理事官
前久保勝己

    受審人
A 職名:雅福丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船首部を圧壊、同乗者3人が全治1週間から4週間の負傷

    原因
船位確認不十分

    主文
本件防波堤衝突は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年10月7日21時07分
広島県大竹港
2 船舶の要目
船種船名 遊漁船雅福丸
総トン数 1,9トン
登録長 7.78メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 80キロワット
3 事実の経過
雅福丸は、FRP製遊漁船で、A受審人が1人で乗り組み、友人4人を乗せ、広島大竹港に寄せ、ここで上陸する目的で、船首0.1メートル船尾0.2メートルの喫水をもって、平成9年10月7日20時55分広島県阿多田漁港を発し、大竹港の小方船だまりに向かった。
A受審人は、20時57分阿多田港本浦中防波堤灯台から337度(真方位、以下同じ。)500メートルの地点に達したとき、針路を大竹港に向首する295度に定め、機関を全速力前進にかけて27.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
ところで、小方船だまりは、大竹港港奥の、水路長約450メートル水路幅約450メートルの南東方に開けた逆コの字形をした水路の北側に位置する護岸のほぼ中央部付近に、長方形状の切り込みを設けて造られた遊漁船など小型船専用の小さな船だまりで、この南西方約230メートルの水路のほぼ中央付近には、大竹港飛石防波堤灯台(以下「飛石灯台」という。)及びその東方約690メートルの同水路入口には、大竹港小方一文字防波堤南灯台(以下「一文字灯台」という。)が設置されており、同灯台の北方には、長さ約200メートルにわたって小方一文字防波堤が構築されていた。
同船だまりに、南東方から入航する船舶は、夜間、前示両灯台の灯光を目標に、これらのほぼ中央部に向首して297度の針路をもって進行するのが常であったが、これら灯台の背後には陸上の街灯が多数点在し、車道を通過する乗用車等の灯火に灯台の灯光が粉れて識別が難しくなることもあって、入航にあたっては、これらの状況を踏まえて船位の確認を十分に行って航行することが要求される海域であった。
A受審人は、21時05分一文字灯台から121度1,600メートルの地点に達したとき、針路を飛石灯台と一文字灯台の中央に向首する297度に転じ、慣れた航路であったから、その後たばこを吸い左手で舵輪を握りながら友人との会話に熱中するうち一文字灯台の灯光を見失ってしまったものの、陸岸の明かりから判断して小方船だまりまでまだ距離があるので、このまま航行しても大丈夫と思い、船位の確認を行うことなく進行し、その後徐々に進路が右偏し303度となって、小方一文字防波堤に向首進行していることに気付かなかった。
A受審人は、21時06分半小方一文字防波堤が船首方400メートルに接近したが、なおも、このことに気付かず進行中、同時07分少し前前方に同防波堤を認めて機関を全速力後進としたが及ばず、21時07分一文字灯台から009度142メートルの地点において、雅福丸は20.0ノットの速力で、同防波堤にほぼ直角に衝突した。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、視界は良好で、潮候は上げ潮の中央期で衝突付近には微弱な北西流があった。
衝突の結果、雅福丸は船首部を圧壊し、同乗者3人が1週間から4週間の負傷をした。

(原因)
本件防波堤衝突は、夜間、背後に陸上の街灯が多数点在する状況下、大竹港域を小方一文字防波堤内にある小方船だまりに向け入航中、船位の確認が不十分で、同防波堤に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、背後に陸上の街灯が多数点在する状況下、大竹港域の小方一文字防波堤内にある小方船だまりに向け入航する場合、背後にある陸岸の街灯に紛れて灯台の灯光を見失うおそれがあったから、自船が予定針路線上にいるかどうか判断できるよう、船位の確認を行うべき注意義務があった。しかるに同人は、陸岸の明かりから判断して小方船だまりまでまだ距離があるので、このまま航行しても、大丈夫と思い、船位の確認を行わなかった職務上の過失により、同防波堤に向首進行して衝突を招き、船首部を圧壊させ、同乗者3人に全治1週間から4週間の負傷をさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

よって主文のとおり裁決する。






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