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1999年(平成11年)

平成10年門審第5号
    件名
漁船とから南風丸漁船英丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年5月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

清水正男、宮田義憲、供田仁男
    理事官
伊東由人

    受審人
A 職名:とから南風丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:英丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
南風丸…船首及び船首部船底に擦過傷
英丸…右舷側中央部外板に破口を生じて沈没、のち廃船、船長が約2箇月間の入院及び通院加療を要する背部打撲等

    原因
南風丸…居眠り運航防止措置不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
英丸…見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、とから南風丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、漂泊中の英丸を避けなかったことによって発生したが、英丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年8月20日05時00分
鹿児島湾
2 船舶の要目
船種船名 漁船とから南風丸 漁船英丸
総トン数 4.8トン 2.65トン
全長 15.0メートル
登録長 8.20メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 172キロワット
漁船法馬力数 20
3 事実の経過

A受審人は、法定灯火を点灯し、操舵室右舷側に設置されたいすに腰を掛けて操船に当たり、04時15分ごろ知林ケ島の北方6海里の地点に達したとき、出航前に十分睡眠をとっていなかったことなどから眠気を催し、眠気覚ましに飴を口にしたり、いすから立ち上がって操舵室の天井に設置された天窓を開けて顔を出したりするなどして航行し、同時54分知林島灯台から133度(真方位、以下同じ。)1.0海里の地点において、針路を203度に定め、機関を半速力前進にかけ、11.0ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
定針したころA受審人は、再び眠気を催し、錨泊した経験のある鹿児島県山川港の沖で錨泊して休息することとしたが、同港沖まで30分ぐらいの間にまさか居眠りすることはないと思い、居眠り運航の防止措置として、いすから立ち上がって眠気を払拭することなく、いすに腰を掛けたまま操船に当たり、いつしか居眠りに陥った。
A受審人は、04時57分知林島灯台から156度1.3海里の地点に達したとき、正船首1,000メートルのところに、漂泊している英丸の白、緑2灯と作業灯を視認できる状況であり、その後同船に向首したまま衝突のおそれがある態勢で接近したが、居眠りをしていてこのことに気付かず、同船を避けないで続航中、05時00分知林島灯台から170度3,240メートルの地点において、南風丸は、原針路、原速力のまま、その船首が英丸の右舷中央部に直角に衝突し、同部に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力3の東風が吹き、視界は良好で、日出時刻は05時45分であった。
A受審人は、衝突の衝撃で目を覚まし、衝突したことを知り、機関を後進にかけて英丸から降りて離れ、同船に接舷して負傷したB受審人を収容するなど事後の措置に当たった。
また、英丸は、はえなわ漁業に従事する昭和50年に建造された木製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、同日02時00分鹿児島県大根占港を発し、同県指宿港東方2海里の漁場に向かった。
B受審人は、02時40分ごろ知林島灯台から171度1.7海里の漁場に至り、船橋上部のマストに全周灯個及び両色灯を点灯し、船尾甲板に20ワットの白色作業灯1個を点灯して投縄を開始し、1鉢に120本の釣針を取り付けた直径2ミリメートル、長さ500メートルの幹縄を南東方向に投じたのち、北方に100メートル移動して第2鉢を北西方向に投じ、これを繰り返して合計4鉢の投縄を終え、03時10分ごろ、第1鉢の投入開始地点に戻って揚縄を開始した。
04時57分B受審人は、前示衝突地点において、機関を停止回転として船首を293度に向けて漂泊し、船橋と右舷舷側の間に渡した板の上に船尾方を向いて腰を掛け、最後の鉢の縄を手で引き揚げているとき、右舷正横1,000メートルのところに、南風丸の白、紅、緑3灯を視認できる状況であり、その後自船に向首したまま衝突のおそれがある態勢で接近したが、縄を引き揚げる作業に気を取られ、周囲の見張りを十分に行わなかったので、このことに気付かず、機関を使用するなどして衝突を避けるための措置をとらないまま漂泊中、05時00分わずか前、右舷至近に迫った南風丸を初めて視認したもののどうすることもできず、英丸は、船首を293度に向けたまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、南風丸は、船首及び船首船底に擦過傷を生じ、英丸は、右舷側中央部外板に破口を生じて沈没し、のち引き揚げられたが船齢との関連から廃船処理され、B受審人は、約2箇月間の入院及び通院加療を要する背部打撲等を負った。

(原因)
本件衝突は、日出前の薄明時、鹿児島湾において、南風丸が、漁場に向けて南下中、居眠り運航の防止措置が不十分で、漂泊中の英丸を避けなかったことによって発生したが、英丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
A受審人は、日出前の薄明時、単独で操船に当たり、漁場に向けて鹿児島湾を南下中、眠気を催し、錨泊した経験のある鹿児島県山川港の沖で錨泊して休息することとした場合、居眠り運航防止措置として、いすから立ち上がって眠気を払拭すべき注意義務があった。しかるに、同人は、同港沖まで30分ぐらいの間にまさか居眠りすることはないと思い、いすから立ち上がって眠気を払拭しなかった職務上の過失により、居眠り運航となり、漂泊中の英丸を避けることなく進行して同船との衝突を招き、南風丸の船首及び船首部船底に擦過傷を生じさせ、英丸の右舷側中央部外板に破口を生じさせで沈没させ、B受審人に約2箇月間の入院及び通院加療を要する背部打撲等を負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、日出前の薄明時、鹿児島湾において、単独で漂泊して揚縄する場合、接近する他船を見落とすことのないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、縄を引き揚げる作業に気を取られ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、接近する南風丸に気付かず、機関を使用するなどして衝突を避けるための措置をとることなく漂泊を続けて同船との衝突を招き、前示の損傷を生じさせ、自ら負傷するに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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