日本財団 図書館




1999年(平成11年)

平成10年門審第81号
    件名
油送船第三輝鶴丸漁船第二あけぼの丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年9月7日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

清水正男、宮田義憲、阿部能正
    理事官
喜多保

    受審人
A 職名:第三輝鶴丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
B 職名:第二あけぼの丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(履歴限定)
    指定海難関係人

    損害
輝鶴丸…球状船首に破口、船首に凹損
あけぼの丸…左舷側中央部外板に破口、その後沈没、のち修理、甲板長、操機長、機関員1人及び司厨長がそれぞれ休業加療を要する腰椎捻挫等の重軽傷

    原因
あけぼの丸…港則法の航法(避航動作)不遵守(主因)
輝鶴丸…警告信号不履行(一因)

    主文
本件衝突は、航路外から航路に入る第二あけぼの丸が、航路を航行する第三輝鶴丸の進路を避けなかったことによって発生したが、第三輝鶴丸が、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。
受審人Bの五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年3月17日02時10分
関門港関門航路
2 船舶の要目
船種船名 油送船第三輝鶴丸 漁船第二あけぼの丸
総トン数 999トン 75トン
全長 83.00メートル
登録長 27.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 1,765キロワット
漁船法馬力数 460
3 事実の経過
第三輝鶴丸(以下「輝鶴丸」という。)は、可変ピッチプロペラを装備した船尾船橋型油送船で、A受審人ほか8人が乗り組み、ガソリン920キロリットル、灯油660キロリットル及び軽油1,160キロリットルを載せ、船首4.2メートル船尾4.9メートルの喫水をもって、平成10年3月16日20時05分大分県大分港を発し、福岡県博多港に向かった。
A受審人は、翌17日01時00分下関南東水道第2号灯浮標付近で昇橋し、単独で船橋当直に当たっていた甲板員から当直を引き継ぎ、同甲板員を操舵に就けて自ら操船の指揮を執り、法定灯火を点灯していることを確かめ、関門海峡東口から関門港関門航路に入航して西行した。
02時08分少し前A受審人は、六連島灯台から179度(真方位、以下同じ。)1.5海里の地点において、針路を六連島東方沖灯浮標に向かう025度に定め、機関を回転数毎分260にかけて推進の翼角をほぼ全速力前進の15.8度とし、13.0ノット(対地速力、以下同じ。)の速力で、手動操舵により関門航路をこれに沿って進行した。
定針したときA受審人は、右舷船首21度1,330メートルのところに第二あけぼの丸(以下「あけぼの丸」という。)の白、紅2灯を初認し、同船が航路外から関門航路に入る態勢で自船の前路に接近する状況であったが、自船は航路を航行しているのであけぼの丸が自船の進路を避けるものと思い、同船に対して警告信号を行うことなく、その動静を監視しながら続航した。
02時09分A受審人は、あけぼの丸がその方位が変わらないまま480メートルまで接近したのを認め、衝突の危険を感じ、探照灯によって同船に向けてせん光を連続して照射したものの、なお同船が、自船の進路を避ける気配がないまま接近するのを認め、同時09分半推進器の翼角を0度とし、右舵一杯を令したが及ばず、02時10分六連島灯台から167度1.1海里の関門航路内において、輝鶴丸は、船首が040度を向き、速力が11.0ノットとなったとき、その船首があけぼの丸の左舷側中央部に前方から60度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風はなく、潮候は下げ朝の中央期で、視界は良好であった。
また、あけぼの丸は、2そうびき沖合底びき網漁業に従事する船首船橋型鋼製漁船で、B受審人ほか8人が乗り組み、操業の目的で、船首2.0メートル船尾4.0メートルの喫水をもって、同月17日01時45分僚船と共に山口県下関漁港を発し、長崎県対馬南方沖合の漁場に向かった。
B受審人は、法定灯火を点灯し、下関市の彦島大橋の下を通過したのち六連島東方の海域を西行し、02時04分六連島灯台から133度1.6海里の地点において、針路を284度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの速力で手動操舵により進行した。
02時07分少し前B受審人は、六連島灯台から144度1.2海里の地点に達したとき、左舷船首61度1.0海里のところに、輝鶴丸の白、白、緑3灯を初認し、同船が関門航路をこれに沿って北上していることを知ったものの、同時07分六連島灯台から146度1.2海里の地点に達して針路を252度に転じ、同航路を横断したのち関門第2航路を経由して響灘に出るつもりで続航した。
B受審人は、02時08分少し前六連島灯台から152度1.1海里の地点に達したとき、輝鶴丸が転針して左舷船首26度1,330メートルとなり、その後同船が航路をこれに沿って北上し、自船の前路に接近する態勢となったことを認めたが、まだ距離があることから同船の前路至近をどうにか通過できるものと思い、その進路を避けることなく同一針路、速力のまま進行した。
02時09分B受審人は、輝鶴丸の方位が変わらないいまま480メートルまで接近したのを認めてようやく衝突の危険を感じ、右舵10度をとり、機関を全速力後進にかけたものの、同時09分少し過ぎ関門航路に進入し、あけぼの丸は、船首が280度を向き、行きあしがほとんどなくなったとき、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、輝鶴丸は球状船首に破口、船首に凹損を生じたが、のち修理され、あけぼの丸は左舷側中央部外板に破口を生じ、その後台場鼻灯台から003度1,080メートルの地点において沈没したが、のち引き揚げられて修理された。また、あけぼの丸の乗組員は全員沈没前に輝鶴丸に乗り移ったが、衝突の衝撃であけぼの丸甲板長C、同操機長D、同機関員E及び同司厨長Fがそれぞれ休業加療を要する腰椎捻挫等の重軽傷を負った。

(原因)
本件衝突は、夜間、関門港において、航路外から関門航路に入るあけぼの丸が、同航路を航行する輝鶴丸の進路を避けなかったことによって発生したが、輝鶴丸が、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
B受審人は、夜間、関門港において、航路外から関門航路に向けて西行中、輝鶴丸の白、白、緑3灯を視認して同船が同航路をこれに沿って北上し、自船の前路に接近するのを認めた場合、同船の進路を避けるべき注意義務があった。しかるに、同人は、輝鶴丸の前路至近をどうにか通過できるものと思い、同船の進路を避けなかった職務上の過失により、航路外から関門航路に進入して輝鶴丸との衝突を招き、輝鶴丸の球状船首に破口及び船首に凹損を生じさせ、あけぼの丸の左舷側中央部外板に破口を生じさせて沈没させ、あけぼの丸の乗組員4人にそれぞれ腰椎捻挫等を負わせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
A受審人は、夜間、関門港において、関門航路をこれに沿って北上中、あけぼの丸の白、紅2灯を視認して同船が航路外から同航路に向けて自船の前路に接近するのを認めた場合、警告信号を行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、自船は航路を航行しているのであけぼの丸が自船の進路を避けるものと思い、警告信号を行わなかった職務上の過失により、あけぼの丸との衝突を招き、前示の損傷及び負傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION