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1999年(平成11年)

平成10年広審第59号
    件名
漁船芳栄丸プレジャーボート宮崎丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年6月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

織戸孝治、杉崎忠志、横須賀勇一
    理事官
向山裕則

    受審人
A 職名:芳栄丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:宮崎丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
芳栄丸…船首部に小破口及び推進器翼に損傷
宮崎丸…左舷中央部を破損、同乗者が腰部等に打撲傷

    原因
芳栄丸…見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
宮崎丸…動静監視不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、芳栄丸が、見張り不十分で、錨泊中の宮崎丸を避けなかったことによって発生したが、宮崎丸が、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年9月9日11時15分
愛媛県南宇和由良岬沖
2 船舶の要目
船種船名 漁船芳栄丸 プレジャーボート宮崎丸
総トン数 1.5トン
全長 7.90メートル
登録長 7.30メートル 7.14メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 13キロワット
漁船法馬力数 35
3 事実の経過
芳栄丸は、真珠養殖業及び一本釣り漁業に従事し、船体中央よりやや後方に操舵輪を設備するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、ヤズの一本釣りの目的で、船首0.2メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成9年9月9日06時愛媛県南宇和郡内海村家串の係留場所を発し、同県由良岬周辺の漁場に向かい、同時15分から操業に取り掛り、11時過ぎ操業を終了して、同時13分半塩子島黒碆灯台(以下「黒碆灯台」という。)から275度(真方位、以下同じ。)5,100メートルの地点を発進し、針路を075度に定め、機関を全速力前進より少し減じた20.0ノットの対地速力で、帰途に就いた。
A受審人は、発進時から舵輪後方に立っ手動操舵により進行中、11時14分少し過ぎ黒碆灯台から277度4,650メートルの地点に達し、正船首方400メートルばかりのところに操業中の漁船2隻を認めたので、これを避航するため針路を104度に転じたとき、正船首500メートルばかりのところに、行きあしのない宮崎丸を視認でき、その後同船が錨泊していることが分かる状況であったが、船首左舷に替わった前示漁船に気を奪われ、前路の見張りを十分に行わなかったので、宮崎丸に向首して衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、同船を避けないまま続航中、芳栄丸は、11時15分黒碆灯台から276度4,200メートルの地点において、その船首が、宮崎丸の左舷中央部に原針路、原速力のまま、ほぼ直角に衝突した。
当時、天候は曇で風力3の北北西風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
また、宮崎丸は、船体中央よりやや後方に操舵室を有し、びょう泊中の船舶が表示する球形形象物及び汽笛を装備しないFRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、友人のCほか3人を乗船させ、遊漁の目的で、船首0.2メートル船尾0.8メートルの喫水をもって、同日09時同県北宇和郡津島町嵐の係留場所を発し、由良岬周辺の釣場に向かった。
発航後B受審人は、釣果を求めて釣場を移動しながら南下し、前示の衝突地点(水深約70メートル)に、10時50分船首から直径14ミリメートルのロープを約150メートル延出して投錨し、折からの北寄りの風に船首を立てて友人と共に釣りを開始した。
B受審人は、左舷後部から釣竿を出して釣りをしていたところ、11時14分少し過ぎ左舷方500メートルばかりのところに、自船に向首進行する芳栄丸を初認したが一瞥(いちべつ)して同船は自船の付近で漁をしようと接近する船でまさか衝突することはあるまいと思い、動静監視が不十分で、その後芳栄丸が衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、機関をかけて前進するなどして衝突を避けるための措置をとることなく同船から目を離して釣りを続け、同時15分少し前芳栄丸の機関音を聞いて同船が左舷正横間近に接近していることに気付き、大声を出して両手を振るも効なく、宮崎丸は、ほぼ014度を向首して錨泊したまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、芳栄丸は船首部に小破口及び推進器翼に損傷をそれぞれ生じ、宮崎丸は左舷部を破損し、C同乗者が腰部等に打撲傷を負い、のち両船とも修理された。

(原因)
本件衝突は、愛媛県由良岬東方において、航行中の芳栄丸が、見張り不十分で、前路で錨泊中の宮崎丸を避けなかったことによって発生したが、宮崎丸が、動静監視不十分で、芳栄丸との衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
A受審人は、由良岬東方を帰航のため東行する場合、前路で錨泊中の宮崎丸を見落とさないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、左舷方の他船に気を奪われ、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、宮崎丸に気付かず、同船を避けないまま進行して衝突を招き、芳栄丸の船首部及び推進器翼並びに宮崎丸の左舷中央部に損傷を生じさせるとともに、宮崎丸の杉原同乗者を負傷させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、由良岬東方において釣りのため錨泊中、自船に向首進行する芳栄丸を初認した場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、その動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、芳栄丸は自船の付近で漁をしようと接近する船でまさか衝突することはあるまいと思い、その動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、機関をかけて前進するなどして衝突を避けるための措置をとることなく同船から目を離して釣りを続け、芳栄丸との衝突を招き、両船に前示の損傷及び宮崎丸同乗者に前示の負傷をそれぞれ生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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