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1999年(平成11年)

平成10年長審第57号
    件名
油送船秀栄丸ドルフィン衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年4月6日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

原清澄、安部雅生、保田稔
    理事官
小須田敏

    受審人
A 職名:秀栄丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
右舷船首部外板などに凹損

    原因
圧流対策不十分(風下に圧流)

    主文
本件ドルフィン衝突は、風圧流対策が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年7月7日07時25分
長崎港第3区
2 船舶の要目
船種船名 油送船秀栄丸
総トン数 699.48トン
登録長 53.23メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,176キロワット
3 事実の経過
秀栄丸は、船尾船橋型LPG船で、A受審人ほか6人が乗り組み、プロパンなど480トンを積載し、船首3.20メートル船尾4.20メートルの喫水をもって、平成9年7月5日12時50分大分県大分港を発し、周防灘を経て同日19時15分山口県長府沖合に至って錨泊し、翌6日16時55分同錨地を発航して長崎港内の伊藤忠燃料株式会社長崎ガス石油基地に設けられた桟橋(以下「伊藤忠桟橋」という。)に向かった。
ところで、伊藤忠桟橋は、長崎港第3区の東側にあって小ケ倉柳埠頭の北側550メートルばかりのところに位置し、真北に対して約17度(真方位、以下同じ。)の角度を有する護岸から9.9メートル張り出して護岸と平行に設けられた長さが10.8メートルの桟橋で、その中央から北側10.0メートルのところと、南側12.0メートルのところとに、歩道橋を介して長さ幅とも3.5メートルのドルフィンがそれぞれ設置されていた。
翌々7日07時02分A受審人は、長崎港三菱重工蔭ノ尾岸壁灯台(以下「蔭ノ尾岸壁灯台」という。)から281度2,120メートルの長崎港の航路入口に達したとき、機関回転数を毎分270に減じ、航路に沿って9.0ノットの速力で航行し、その後、漸次減速しながら、手動操舵で進行した。
07時14分少し前A受審人は、蔭ノ尾岸壁灯台から097度780メートルの地点で、機関回転数を毎分170に下げて4.0ノットの速力とし、その後、伊藤忠桟橋に右舷付けで着桟するため、徐々に左回頭して同時16分同灯台から103度1,050メートルの地点に達したとき、針路を同桟橋に対してほぼ45度となるよう062度に定めて続航した。
07時21分A受審人は、折からの強い南西風を受けて進行し、蔭ノ尾岸壁灯台から088.5度1,550メートルの地点に達して南側ドルフィンまで250メートルばかりに接近したとき、機関を停止し、前進惰力で原針路を保って進み、同時22分半同ドルフィンまで150メートルばかりに接近したとき、前進惰力が2ノットばかりに減少したので、平素のとおり、左舷錨と船尾錨をそれぞれ投下したが、船尾方からの風だから、無難に着桟できるものと思い、錨鎖をいったん緊張させてから徐々に繰り出すなどの風圧流対策をとることなく、錨鎖を出るがままに放置して続航した。
A受審人は、伊藤忠桟橋が間近になったので、機関を半速力後進にかけて前進惰力をいったん止め、その後、船首尾線を同桟橋に平行にさせるため機関を微速力前進にかけ、左舵一杯として左転を始めたところ、強い南西風により船体が右方へ圧流されて船尾部が護岸に著しく接近する状況となったのに気付き、急いで右舵一杯として態勢を立て直そうとしたが、錨鎖が緊張していなかったので、右方への圧流を止められず、07時25分船首が60度ばかり回頭して002度を向いたとき、秀栄丸の右舷船首部が蔭ノ尾岸壁灯台から085度1,770メートルの南側ドルフィンに、約15度の角度をもって衝突した。
当時、天候は雨で風力6の南西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
衝突の結果、右舷船首部外板などに凹損を生じ、のち修理されたが、ドルフィンには損傷を生じなかった。

(原因)
本件ドルフィン衝突は、強風が連吹する状況下、長崎港第3区の護岸に平行に設置された伊藤忠桟橋に着桟する際、圧流対策が不十分で、風下に圧流されて同護岸に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、長崎港第3区の伊藤忠桟橋に強風を受けながら、平素のとおり同桟橋に前もって投錨したあと接近する場合、風圧による圧流を減殺できるよう、いったん錨鎖を緊張させたあと徐々にこれを繰り出すなどの圧流対策をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、当初、同桟橋に針路を向けた際、船尾方からの風であったところから、無難に着桟できるものと思い、圧流対策をとらなかった職務上の過失により、風下へ圧流されてドルフィンとの衝突を招き、右舷船首部外板などに凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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