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1999年(平成11年)

平成11年那審13号
    件名
貨物船第八海宝丸漁船海勇丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年7月29日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

清重隆彦、金城隆支、花原敏朗
    理事官
道前洋志

    受審人
A 職名:第八海宝丸一等航海士 海技免状:三級海技士(航海)
B 職名:海勇丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
海宝丸…左舷後部に擦過傷
海勇丸…船首部を圧壊

    原因
海勇丸…見張り不十分、横切りの航法健航動作)不遵守(主因)
海宝丸…見張り不十分、警告信号不履行、横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、海勇丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切る第八海宝丸の進路を避けなかったことによって発生したが、第八海宝丸が見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Bを戒告する。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年11月13日05時30分
沖縄県伊計島東方沖合
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第八海宝丸 漁船海勇丸
総トン数 915トン 4.7トン
全長 77.12メートル 13.03メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 1,471キロワット 264キロワット
3 事実の経過
第八海宝丸(以下「海宝丸」という。)は、船尾船橋型の砂利採取運搬船で、A受審人ほか5人が乗り組み、空倉のまま、船首2.3メートル船尾4.6メートルの喫水をもって、平成10年11月13日03時15分沖縄県金武中城港久場埼の東海産業専用岸壁を発し、同県国頭郡東村新川沖の採取場に向かった。
A受審人は、03時25分海宝丸船長Cから船橋当直を引き継ぎ、航行中の動力船の灯火を表示して機関を全速力前進にかけ、手動操舵で中城湾から出航し、04時50分メングイ礁灯標から173度(真方位、以下同じ。)5.3海里の地点で、針路を035度に定め、10.5ノットの対地速力で自動操舵として進行した。
05時23分A受審人は、メングイ礁標から097度3.9海里の地点に達したとき、左舷船首56度1.5海里のところに、前路を右方に横切る態勢の海勇丸の白、緑の2灯を視認することができる状況で、その後その方位にほとんと変化がなく互いに接近し、衝突のおそれがあったが、左方から接近する他船はいないものと思い、右方の見張りに重点をおいていて、左方の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かず、警告信号を行うことも、間近に接近したとき、行きあしを停止するなど衝突を避けるための協力動作をとることもしなかった。
こうして、海宝丸は、同じ針路及び速力で続航中、05時30分メングイ礁灯標から084度4.6海里の地点において、その左舷後部に海勇丸の船首が後方から72度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力2の北風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
また、海勇丸は、一本釣り漁に従事するFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.4メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、同日04時30分沖縄県漢那漁港を発し、同港東方沖合の漁場に向かった。
B受審人は、発航後、航行中の動力船の灯火を表示して手動操舵で進行し、04時58分メングイ礁灯標から335度2.5海里の地点で、針路を107度に定めて自動操舵とし、機関を毎分1,700回転にかけて11.0ノットの対地速力で、レーダーレンジを0.5海里として時々レーダー画面を見ながら東行した。
05時23分B受審人は、メングイ礁灯標から075度3.4海里の地点に達したとき、右舷船首52度1.5海里のところに、前路を左方に横切る態勢の海宝丸の白、白、紅3灯を視認することができる状況であったが、レーダー画面上に他船の映像を認めていなかったことから、接近する他船はいないものと思い、右方の見張りを十分に行わず、操舵室内の床に座り漁具の手入れをしていて、海勇丸の存在に気付かず、その後その方位にほとんと変化がなく互いに接近し、衝突のおそれがあったが速やかに同船の針路を避けなかった。
こうして、海勇丸は、同じ針路及び速力で続航中、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、海宝丸は左舷後部に擦過傷を生じ、海勇丸は船首部を圧壊してのち修理された。

(原因)
本件衝突は、夜間、沖縄県伊計島東方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近する際、海勇丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切る海宝丸の進路を避けなかったことによって発生したが、海宝丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
B受審人は、夜間、沖縄県伊計島東方沖合を東行する場合、前路を左方に横切る態勢で接近する海宝丸を見落とすことのないよう、右方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、レーダー画面上に他船の映像を認めていなかったことから、接近する他船はいないものと思い、操舵室内の床に座り漁具の手入れをしていて、右方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路を左方に横切る態勢で接近する海宝丸に気付かず、その進路を避けずに進行して同船との衝突を招き、海宝丸の左舷後部に擦過傷を、海勇丸の船首部に圧壊を、それぞれ生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人は、夜間、沖縄県伊計島東方沖合を北上する場合、前路を右方に横切る態勢で接近する海勇丸を見落とすことのないよう、左方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、左方から接近する他船はいないものと思い、右方の見張りに重点をおいていて、左方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路を右方に横切る態勢で接近する海勇丸に気付かず、警告信号を行うことも、問近に接近したとき、行きあしを停止するなど衝突を避けるための協力動作をとることもせずに進行して衝突を招き、前示のとおり両船に損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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