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1999年(平成11年)

平成11年仙審第3号
    件名
漁船第二十七福寿丸防波堤衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年5月26日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

上野延之、長谷川峯清、内山欽郎
    理事官
黒田均

    受審人
A 職名:第二十七福寿丸船長 海技免状:六級海技士(航海)(旧就業範囲)
    指定海難関係人

    損害
船首部を圧壊

    原因
船位確認不十分

    主文
本件防波堤衝突は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年5月15日03時30分
新潟港
2 船舶の要目
船種船名 漁船第二十七福寿丸
総トン数 26トン
全長 21.96メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 257キロワット
3 事実の経過
第二十七福寿丸(以下「福寿丸」という。)は、沖合底びき網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか5人が乗り組み、操業の目的で、平成9年5月12日06時00分新潟港を出航し、佐渡島弾埼北北西方15海里の瓢箪礁に至って操業を行い、魚類約3トンを漁獲して操業を終え、船首1.2メートル船尾1.4メートルの喫水をもって、14日22時00分同礁付近を発し、新潟港への帰途に就いた。
A受審人は、発航から船橋当直(以下「当直」という。)に就き、他の乗組員を漁獲物の選別作業に当たらせ、23時00分同作業を終えたB甲板員と当直を交替して降橋し、自室で休息した。
翌15日01時00分B甲板員がC甲板員と当直を交替し、03時00分A受審人は、新潟港西区第2西防波堤(以下「西防波堤」という。)灯台から319度(真方位、以下同じ。)4.4海里の地点で、昇橋してC甲板員から当直を引き継ぎ、単独で当直に就き、針路を137度に定め、機関を全速力前進にかけ、8.7ノットの対地速力で見張りに当たりながら手動操舵により進行した。
ところで、A受審人は、昭和54年から福寿丸に船長として乗船し、新潟港の入出航については十分に経験しており、平素、夜間、新潟港に入航する際には、沖合から西防波堤灯合の灯火を船首目標とし、同防波堤北端の黄色灯火を視認したのち、同灯火を右方に見ながら同端をつけ回して入航していた。しかし同港西港区万代島地区入口付近の水産物揚場に水揚げする多数のいか釣り漁船と同じ時間帯に入航する際に、同漁船群より遅く入航すると同漁船群の順番待ちの漂泊で同入口付近がふさがれ、長時間沖待ちを余儀なくされて港奥の漁業協同組合前の岸壁に着岸していた。
03時23分A受審人は、西防波堤灯台から325度1.1海里の地点に達したとき、西防波堤灯台の灯火及び同防波堤付近を入航する多数のいか釣り漁船を視認したので、それらより早く入航しようと西防波堤北端にできるだけ接近してから同端をつけ回して入航することとした。
03時28分半A受審人は、西防波堤灯台から343度600メートルの地点に達したとき、正船首400メートルに西防波堤北端の黄色灯火を初めて視認し、そのままの針路で進行すれは同端に向首接近する状況であったが、同端までまだ余裕があると思い、船位の確認を十分に行うことなく、レーダー画面に映る入航する多数のいか釣り漁船の映像監視に気を取られ、この状況に気付かず、西防波堤北端に向首したまま進行中、03時30分西防波堤灯台から019度300メートルの地点において、原針路、原速力のまま、船首が西防波堤に衝突した。
当時、天候は曇で風力2の南東風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
防波堤衝突の結果、福寿丸は船首部を圧壊し、のち修理された。

(原因)
本件防波堤衝突は、夜間、新潟港に入航する際、船位の確認が不十分で、西防波堤北端に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、新潟港に入航する際、西防波堤北端の黄色灯火を近距離で視認した場合、同端を無難に航過できるよう、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、西防波堤端までまだ余裕があると思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、レーダー画面に映る入航する多数のいか釣り漁船の映像監視に気を取られ、西防波堤北端に向首したまま進行して防波堤との衝突を招き、自船の船首部を圧壊させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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