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1999年(平成11年)

平成10年長審第52号
    件名
プレジャーボートアサカゼ桟橋衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成11年1月14日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

坂爪靖、安部雅生、保田稔
    理事官
酒井直樹

    受審人
A 職名:アサカゼ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船首部に亀裂、同乗者2人が全治約1箇月ないし2箇月の頭部打撲傷等

    原因
見張り不十分

    主文
本件桟橋衝突は、見張りが十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年12月13日07時25分
長崎県茂木港
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートアサカゼ
登録長 5.36メートル
幅 2.04メートル
深さ 0.80メートル
機関の種類 電気点火機関
出力44キロワット
3 事実の経過
アサカゼは、航行区域を限定沿海区域とするFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、同人と姻戚関係があるBとその友人のCを同乗させ、たい釣りの目的で、船首0.10メートル船尾0.24メートルの喫水をもって、平成9年12月13日07時20分ごろ茂木港東防波堤灯台(以下「東防波堤灯台」という。)から326度(真方位、以下同じ。)550メートルばかりのところの、茂木港北部の埋立地岸壁を発し、同港南西方沖合の釣り場に向かう航行の途中、餌(えさ)の生きえびを購入する目的で、同港南部の茂木漁業協同組合前面の船だまりへ向かった。
ところで、茂木港は、潮見埼の北北東方の岸壁から北東方へ142メートル延びる東防波堤を備え、その突端に東防波堤灯台が位置し、同灯台から133度380メートルのところを基点としてこれから赤埼まで北東方へ300メートル延びる防波堤同灯台から147度720メートルのところを基点としてこれから西南西方へ300メートル延びる沖防波堤及び同灯台から313度350メートルのところの公共岸壁から北東方へ141メートル延びる防波堤を備え、港内が狭く、屈曲部分が多かった。
また、東防波堤の基部付近には、東防波堤灯台から220度170メートルのところを基点としてこれから連絡橋を介して15メートル離れ、298度の方向に向けて設置された、長さ20メートル幅8メートル深さ2.8メートル水面上の高さ約1メートルの鉄筋コンクリート製浮桟橋(A)と、これから南西方へ13メートル隔てたところに同型の浮桟橋(B)とがあり、両浮桟橋とも漁船の給油施設として使用されていた。
発航後、A受審人は、船体中央右舷側に備えた舵輪の後方に立って手動操舵に当たり、狭い港内を周囲の物標などを目測しながら進行し、B同乗者を同人の左方の船体中央部、C同乗者をその左横にそれぞれ船首方を向いた姿勢で腰掛けさせ、07時23分半ごろ東防波堤灯台から335度410メートルばかりの、公共岸壁から北東方へ延びる防波堤を替わったところで、機関の回転数を上げて半速力前進の11.1ノットの速力として同岸壁南東端と東防波堤灯台との中間に向けて続航し、同時24分半ごろ同灯台から310度90メートルの地点に達したとき、針路を213度に定めた。
定針して間もなく、A受審人は、沖合では白波が立っていたことから、同乗者に救命胴衣を着用させることとし、B、C両同乗者に舵輪左横下方の船室入口付近に収納していた同衣を取り出して着用するよう告げたが、同乗者の同衣着用状況に気をとられ、舵輪を両手で握って左斜め下方を向いたまま、前路の見張りを十分に行うことなく、徐々に左転して浮桟橋(A)に向首接近する状況となったことに気付かずに進行した。
こうしてアサカゼは、浮桟橋(A)に向首接近する態勢となって続航中、07時25分わずか前A受審人が、前方へふと眼を移したとき、同桟橋が目前となっていることに気付いたが、どうすることもできず、07時25分東防波堤灯台から230度170メートルの地点において、原速力のまま、その船首が浮桟橋(A)にほぼ直角に衝突した。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮高はほぼ高潮時で、視界は良好であった。
衝突の結果、アサカゼは、船首部に亀裂を生じたが、のち修理された。また、B、C両同乗者か全治約1箇月ないし2箇月の頭部打撲傷等を負った。

(原因)
本件桟橋衝突は、長崎県茂木港において、同港北部の埋立地岸壁から同港南部の船だまりに向けて航行する際、見張りが不十分で、浮桟橋に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、長崎県茂沐港において、単独で操舵操船に当たり、同港北部の埋立地岸壁から同港南部の船だまりに向けて航行する場合、狭い港内を手動操舵で航行するのであるから、針路を保持できるよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同乗者の救命胴衣着用状況に気をとられ、左斜め下方を向いたまま、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、徐々に左転して浮桟橋に向首接近する状況となったことに気付かずに進行して同桟橋との衝突を招き、アサカゼの船首部に亀裂を生じさせ、同乗者2人に頭部打撲傷等を負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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